卒業研究と卒業するにあたって期待すること

電子機械工学科

主任 森下克己

 

電子機械工学科が1965年に設置されて以来,45回目の卒業研究発表会を開催することになりました.卒業した数多くの先輩も卒業研究を行い,様々な分野で活躍しています.皆さんは卒業研究で何を学んだのでしょうか?卒業研究では,特定の狭い分野のことを研究し,比較的狭い分野の技術に関することしか勉強しないし,将来そのことを活かした職業に就くとも限りません.卒業研究が何の役に立つのだと思いませんでしたか? 卒業研究では,分からないことを聞いたり,文献を調べたり,工夫して実験をしたりと,自分で研究を進めていく必要があります.未知の分野にどの様に対応していくか,問題を解決するためにどの様にすればよいかなどの方法を学ぶ機会に満ちています.また,研究について,教員,先輩,同輩などと議論したり,研究内容をまとめて発表したり,質問に答えたり,質問をしたりと,今後の社会で必要なことがつまっています.卒業研究では自らの頭で考え問題を解決する方法を学び,プレゼンテーション技術を学ぶことが大きな目標です.社会に出て働き始めると,次々と出現する新しい技術を吸収することが求められ,問題に直面して解決することも求められるでしょう.4年間勉強して学んだ知識だけで,今後数十年を技術者として過ごすことはできないでしょう.卒業研究で学んだことを活かして,問題を解決しながら新しい知識を吸収し,技術者として大成することを願っています.

皆さんは「若さ」という大きな財産をもっています.大学の教員は,皆さんよりも歳を取り経験が豊富です.しかし,経験を積み知識を付けるほど,これまでの経験や既成概念にとらわれて,気がつかなかったり,新しいことを発見できなかったりする傾向があります.一方,皆さんは若く,柔軟な頭をもっています.既成概念にとらわれることなく,新しいことを創造する可能性を秘めています.新しいことを創造するためには,柔軟な頭脳を用いて,自らの頭で考える必要があります.ノーベル賞は最初に発見した人物に贈られます.ノーベル賞を受けることになる研究は,20代後半から30代に行われた研究が多い.それは,柔軟な頭脳から生み出されるのではないかと思われます.そのようなことは人間の世界だけではなく,猿の世界においても見られます.最初に変わったことをするのは若い猿です.宮崎県の幸島の猿は,泥を取るために芋を洗って食べています.最初に芋を洗って食べ始めたのは若い猿で,その後に群れの猿たちも芋を洗うことを始めました.長野県の野猿公園では,一匹の小猿が最初に温泉に入り,これが群れ全体に広まったといいます.猿と人間を同じにするわけではありませんが,同じ霊長類に属しており,若い者には新しいことをする能力はより高いと思われます.

新しいことを開拓するのは,「若さ」の特権です.皆さんが卒業研究を通して,問題解決能力を高め,既成概念にとらわれずに若い頭脳で新しいことを創造し,社会で活躍されることを願っています.

最後になりましたが,卒業研究発表会のお世話を頂いた入部正継,鄭聖熹両先生ならびに関係の方々に感謝致します.

   平成24年1月24日