論 文 要 旨 (萬代武史)

(http://www.osakac/labs/mandai/resumes.html ------ Last modified on May 21, 1999.)
[1] On energy inequalities and regularity of solutions to weakly hyperbolic Cauchy problems,
Publ. RIMS, Kyoto Univ., 18(1982), 187-240.
この論文は,コーシー問題が C infinity 適切 (well-posed) になる場合に, その解の滑らかさが与えられたコーシーデータと比べて どれぐらい悪くなるか (regularity-loss) を エネルギー不等式の観点から調べたものである. 第1章では,主部が定数係数か又は特性根の重複度が一定であるような 作用素に対して, 解の regularity-loss が特性根の重複度だけで決まることを証明している. 続いて第2章では,一般の弱双曲型作用素に対して,解の regularity-loss と 特性根の重複度との関係を調べている. 最後に第3章において,ある種の弱双曲型作用素に対しては, 解の regularity-loss が作用素の低階項に依存していくらでも大きくなるという 現象が起こることを証明している.

[2] Necessary conditions for well-posedness of the flat Cauchy problem and the regularity-loss of solutions,
Publ. RIMS, Kyoto Univ., 19(1983), 145-168.
この論文は,論文 [1] で扱ったクラスより もっと広いクラスの作用素に対して, コーシー問題が C infinity 適切になるための 低階に対する必要条件と, その際に regularity-loss がどの程度起こるかについて調べたものである. この必要条件は主部の退化の仕方,言換えれば特性根の重複の仕方, に応じて決まるはずのものであるが, 従来の結果は特性根の全体としての退化の仕方しか考慮しておらず, 退化の仕方が特性根によって異なるときには十分条件から程遠い条件に なってしまうものであった. この論文では,時間変数 (t) に関する有限次の退化に限って 考えることで, 特性根ごとの退化の様子をニュートン図形で記述し, それを使って低階への必要条件や regularity-loss の下からの評価を 与えている. t に関してある程度 singular な作用素も含めて扱うために フラットコーシー問題という設定で考えている.

[3] A necessary and sufficient condition for the well-posedness of some weakly hyperbolic Cauchy problems,
Comm. in Partial Differ. Equations, 8(1983), 735-771.
この論文は,主部が t に関して有限次の「きれいな」退化をしている 弱双曲型作用素に対して,コーシー問題が C infinity 適切と なるための 必要十分条件を与えたものである. 十分条件として既に知られていた条件(作用素の分解の形で与えられている)が 必要条件でもあることを,論文 [2] の結果を使って示し, さらにこの条件について別の表現を与えている. この結果によって,論文 [2] で与えた必要条件が, t に関する有限次の退化に関する限り ほぼ完全なものであることが分かる.

[4] On exceptional cases of Cauchy problems for Fuchsian partial differential operators,
Publ. RIMS, Kyoto Univ., 20(1984), 1007-1019.
この論文は,フックス型双曲型偏微分作用素と呼ばれる微分作用素のコーシー 問題において C infinity 関数の範囲では 解の一意可解性が成立しない場合 (exceptional case) を扱っている. この場合に,解の範囲を広げることによって,ある条件の下で, 一意ではないが解を求め得ることと解にどの程度の自由度があるかを調べている.

[5] On the C infinity-well-posedness of Goursat problems,
Publ. RIMS, Kyoto Univ., 21(1985), 843-852.
この論文は,グルサ問題がどのような条件の下で C infinity 適切になるかを 調べたものである. 従来,定数係数の作用素に対しては, グルサ問題が C infinity 適切になるための 必要条件や十分条件について多くの研究があり, 必要十分条件も知られているが,変数係数の場合には あまり調べられていなかった. この論文においては,変数係数の場合に必要条件ならびに十分条件を与えている. さらに,低階項に無関係にグルサ問題が適切になるような主部の例を与えている. このような例は今まで知られていなかったものである.

[6] Generalized Levi conditions for weakly hyperbolic equations --- an attempt to treat the degeneracy with respect to the space variables ---,
Publ. RIMS, Kyoto Univ., 22(1986), 1-23.
この論文は,弱双曲型のコーシー問題が適切になるために低階項に 課さねばならない 条件 (この論文では一般レビ条件と呼んでいる) について調べたものであり, 論文 [2] の前半ならびに論文 [3] を 拡張させたものといえる. 論文 [2],[3] においては, 時間方向の退化のみが扱われていたが, この論文においては,空間方向の退化をも含めて扱っている. 論文 [2] でのニュートン図形の決め方を少し修正して, 主部の退化の仕方を時間方向も空間方向も込めてニュートン図形で記述し, これと低階項との関係という形で一般レビ条件を与え, その必要性を証明している. また証明の改良により,論文 [2] で仮定されていた 依存領域に関する条件は 取り除かれている. さらに後半では,主部の退化がある程度良いとき (t-involutive で normal-crossing な場合にあたる) には, この一般レビ条件をすべての特性根について組み合せた条件が, 従来知られている十分条件 (作用素の分解の形で与えられている) と 同値になることを証明している.

[7] Smoothness of roots of hyperbolic polynomials with respect to one-dimensional parameter,
Bull. Fac. Gen. Educ., Gifu Univ.(岐阜大学教養部研究報告), 21(1985), 115--118.
この論文は,係数に実1次元パラメーターの入った多項式で, パラメーターの値に依らず常に実根を持つような多項式 (双曲型多項式と呼ぶ) の 根の,パラメーターに関する微分可能性について調べたものである. 弱双曲型偏微分作用素の研究においては, 特性根の滑らかさが問題になることがある. これに関して Bronshtein が基本的な結果を出したが, これは不完全な形であった. (Bronshtein が使いたい目的には十分なものであったが....) これをより完全なものにすることが,この論文の目標である.

[8] C infinity null-solutions for some non-Fuchsian operators with C infinity coefficients,
Bull. Fac. Gen. Educ., Gifu Univ.(岐阜大学教養部研究報告), 22(1986), 95-100.
この論文は,原点を通る特性的な初期面に関する零解 (null-solution) の存在に ついて調べたものである. C infinity 零解とは, 与えられた斉次線型偏微分方程式を満たし, 初期面の片側にのみ台 (support) をもつが,原点は台に属するような C infinity 函数のことである. 主部が非フックス型の作用素に対しては, このような C infinity 零解の存在が期待される. 作用素の係数や初期面が実解析的なときは相当一般的な結果が知られているが, 係数が単に C infinity の場合には 限られた場合しか扱われていない. しかも『 0 階項を適当に摂動させると C infinity 零解が存在する』という形の 命題しか証明されていない.しかし,いくつかの例が示唆するように, この摂動は本来は不要なのではないかと思われる. この論文では,C infinity 係数の 作用素に対して, 低階項が何であっても C infinity 零解が存在する ための主部に対するある十分条件を与えている. さらに,この条件を満たさず,C infinity 零解が 存在しない例を与えている.

[9] Existence of C infinity null-solutions and behavior of bicharacteristic curves for differential operators with C infinity coefficients,
Japan. J. Math., 15(1989), 53-63.
この論文は,論文 [8] を拡張したもので, 論文 [8] で扱ったクラスより 広いクラス の C infinity 係数の偏微分作用素に対して, C infinity 零解が存在するための ある十分条件を与えている.この条件も主部のみに対するもので, 特性曲線の様子が重要な役割を果す. さらに,この条件が満たされないある種の作用素に対して, C infinity 零解の 非存在も示されている.

[10] Existence and non-existence of null-solutions for some non-Fuchsian partial differential operators with t-dependent coefficients,
Nagoya Math. J., 122(1991), 115-137.
この論文は,係数が t のみに依存するような 非フックス型作用素について, 零解の存在・非存在を調べたものである. 論文 [8][9] で扱われた作用素は, 主部がフックス型でなく, 低階にかかわらずに C infinity 零解を持つようなものであったが, フックス型という条件は低階も込めた条件なので, ``非フックス型作用素に対してはどんなことが起こるか''を知るためには, 『主部はフックス型であるが低階を込めると非フックス型となる作用素』 についても ある程度は考察しておくべきであろう. この論文では,係数が t のみに依存するという強い条件の下ではあるが, このような作用素についてかなり一般的な結果が得られた. まず,非フックス型作用素を4つのタイプに分け, そのうちの3つのタイプに対しては, C infinity 零解を持つかまたは 任意の N に対して C^N 零解を 持つことが示されている. 次に,残りのタイプの作用素のうちのある種の作用素 (1階又は2階) について, C^N 零解の非存在が示されている.

[11] Characteristic Cauchy problems for some non-Fuchsian partial differential operators,
J. Math. Soc. Japan, 45(1993), 511--545.
M. S. Baouendi -- C. Goulaouic (Comm. Pure Appl. Math., 26(1973), 455--475) は, Fuchs 型偏微分作用素を定義し,実解析的関数のカテゴリーで, Cauchy-Kowalevsky の定理の拡張(特性的初期値問題の一意可解性)及び Holmgren の定理の拡張を示した.この論文では, 関数の範囲を x に関しては 実解析的,t に関しては C infinity なものに広げることにより, Fuchs 型作用素よりも広いクラスの作用素に対して, 特性的初期値問題の一意可解性及び Holmgren の 定理の拡張を示したものである. 特に,ここで考えているクラスの作用素については, 十分滑らかな零解 (null-solution) は存在しないことが得られる.

[12] Existence of C infinity null-solutions for some differential operators with non-analytic coefficients,
Proceedings of the Fourth International Colloquium on Differential Equations, Plovdiv, Bulgaria, 18--23 August 1993, Vol.1, 147-162.
この論文は,係数を実解析的と仮定しない作用素に対する C infinity 零解の存在について 考察したものである. 主部から決まるある不変量を定義し, この量を使って存在のための十分条件を与えていて, [9] を元にしたものである.
(Manuscript of the article.)

[13] Asymptotic solutions for exceptional cases of characteristic Cauchy problems to Fuchsian partial differential equations,
"Recent Developments in Evolution Equations", pp.201--208, ed. by McBride/Roach, Pitman Research Notes in Mathematics Series 324, Longman Scientific & Technical, 1995. (Proceedings of the Conference on Evolution Equations, 07/25(Mon.)--29(Fri.), University of Strathclyde, Glasgow, Scotland, United Kingdom. )
作成中.

[14] A Construction of Asymptotic Solutions and the Existence of Smooth Null-Solutions for a class of Non-Fuchsian Partial Differential Operators,
1997, Nagoya Math. J., 145(1997), 125--142.
この論文では,[11] で考えた 作用素を規定する条件のうちで, もっとも本質的と思われる条件を否定するような条件を付けた時に, C infinity 零解が存在することを証明している. この時に使う漸近解の構成は,もっと広いクラスの作用素に対しても有効である.

[15] Asymptotic Solutions for the Exceptional Cases of the Characteristic Cauchy Problems to Fuchsian Partial Differential Equations,
1998, Osaka J. Math., 35, 381--396.
この論文では,フックス型作用素の特性的 Cauchy 問題で, 正則なデータに対して正則な解があるためには必要なある条件が 満たされない時に,もっと広いクラスの解を考えることで, 解を構成している.この構成のキーは,漸近解の構成であり, これはフックス型作用素より広いクラスの作用素に対しても有効である.

[16] Existence of Distrubution Null-Solutions for Every Fuchsian Partial Differential Operators,
1998, J. Math. Sci. Univ. Tokyo, 5, 1-18.
この論文では,正則な係数を持つ初期面が特性的なフックス型偏微分作用素について, $x$ については正則で $t$ については超関数(Schwartz distribution)となる ような零解(null-solution) が常に存在することを示した.



Back to Home Page.
Go to Mathematical Links.

(C) Takeshi MANDAI 1999