3.考察

 本論文では、浅いドナー(⊿ED1=0.110eV,ND1=1.00*1016cm-3)、深いドナー(⊿ED2=0.150eV,ND2=1.00*1016cm-3)、
浅いアクセプタ(⊿EA1=0.200eV,NA1=1.00*1013cm-3及び深いアクセプタ(⊿EA2=0.300eV,NA2=1.00*1013cm-3)とが混在するn形6H-SiC(バンドギャップEg=3.00eV)のn(T)を計算した結果(図1)を用いて、本論文の有用性を検討する。上記の2種類のドナーはNが立方晶サイトと六方晶サイトに入った場合に対応し1)、浅いアク

セプタはAlに、深いアクセプタはBに対応する1、2)。式(3)のNAは2*1013cm-3 となる。  以下で用いるexp(⊿EF/kT)は

		-(8)

から求める。上記の式のn(T)は図1のn(T)を用い、6H-SiCに対する電子の有効状態密度NC(T)[cm-3]は次式で与えられる3)

		-(9)



3.1 浅いドナーとアクセプタ密度の評価

  Eref=0eVでの関数S(T,Erefを図2の破線で示す。式(2)からわかるように、深いドナーは低温でのn(T)にほとんど影響を及ぼさない。そこで、E(T,Erefに正の値を用い、関数S(T,Eref) のピークを低温側に移動させ、浅いドナーとアクセプタを精度良く評価する。Eref=0.054eVを用い、Tpeak1を95.0KにしたS(T,Eref)を図2の実線で示す。このときのピークの値は、2.54*1019cm-3・eV-1である。
 低温では、浅いドナーとアクセプタだけが に影響を及ぼすから、式(4)は

		-(10)

と表せる。求める値を⊿ED1と比NA/ND1の2つに減らすために、次の関数を考える。

		-(11)
		-(12)

Y(T,Eref)/Y(Tpeak1,Eref)が0.9になる低温側の温度(T0.9)を新たに導入する。ただし、Y(T,Eref)/Y(Tpeak1,Eref)=S(T,Eref)/S(Tpeak1,Eref)である。Tpeak1とT0.9を用いて、上記の式(12)から⊿ED1と比NA/ND1を求める。図2よりT0.9=77.8Kである。Tpeak1でY(T,Eref)が最大になり、T0.9で Y(T,Eref)/Y(Tpeak1,Eref)が0.9になる⊿ED1

と比NA/ND1は、0.110eVと1.88*10-3である。  式(11)から、ND1は次の式で求められる。

		-(13)

図2よりS(95.0,0.054)=2.52*1019cm-3・eV-1である。一方、Y(95.0,0.054)は、先に求めた⊿ED1と比NA/ND1を用いて、式(12)より2.40*103eV-1となる。これらを用いて、ND1は1.05*1016cm-3と求められる。さらに、NA/ND1=1.88*10-3であるから、NAは1.97*1013cm-3となる。実際の値と比較することによって、⊿ED1、ND1とNAを精度良く評価できたことがわかる。


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