3軸ピエゾスキャナによる光プローブの位置制御


[目的] 3軸ピエゾスキャナを用いて光プローブと試料間の距離を制御する。


 Lock-in Ampから正弦波電圧を出力して、バイモルフに電圧を加えます。バイモルフの両側にあるピエゾ素子が伸縮し図(右)のように交互に曲がり、光プローブを揺らします。
 また、高電圧電源・20倍増幅回路を用いてピエゾスキャナのX・Y・Zに電圧を加えます。ピエゾスキャナもバイモルフと同様にピエゾ素子で出来ているため電圧が加わることにより伸縮します。そのことにより、光プローブと試料間の距離を変えます。
 光プローブを試料に近づけて行くと光プローブの揺れが分子間力により小さくなり、その揺れの変化を見ることで光プローブ-試料間の距離を知ることができます。
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 3軸ピエゾスキャナの動作を左の図に示します。ピエゾスキャナには、Z、+X、+Y、−X、−Yと図のような形状にピエゾ素子が加工されています。ピエゾ素子は、+X、-Xに電圧を加えるとX方向に曲がり、+Y、−Yに電圧を加えるとY方向に曲がります。そして、Zに電圧を加えると上下に伸縮します。この動作原理を用いて、光プローブ-試料間の距離を制御します。





 次に、ピエゾスキャナの制御に用いる20倍増幅回路の回路図と動作テストを右図に示します。図(右下)のオペアンプは高圧用のオペアンプを使用しています。回路に振幅100mVの正弦波電圧を入力すると、出力は20倍の2Vになり、オペアンプの特性により反転増幅されていることが分かり20倍増幅回路が理想的に動作していることが分かります。
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 次に、I/V変換回路について説明します。I/V変換回路は、バイモルフの振動を電流で読み取り、それをこの回路に入力することにより、1つめのオペアンプで電流を電圧に変換し、2つめのオペアンプにより、その電圧を増幅させて出力します。図(右)の波形は、上の波形がバイモルフにかける電圧波形で、下の波形がバイモルフの振動をI/V変換してきた波形です。





 右のグラフは、バイモルフが共振する周波数を調べるために、周波数を変えて行った時のバイモルフの振幅と位相の関係です。左上のグラフは、周波数を1〜100kHzまで0.1kHzずつ変えて行った時の結果です。このグラフより33kHz付近と81kHz付近にピークが見られバイモルフが最も振動している共振周波数がわかります。ここで、33kHz付近の28〜40kHzまで0.01kHzずつ変えていくと、このような結果が得られました。この結果を、Cole-Cole Plotすると左下のグラフようになりました。右下のグラフは、過去の測定で得られたデータで、綺麗な円を描いており、バイモルフが単振動していることが分かりますが、我々の測定結果(左下グラフ)は、綺麗な円になっておらずバイモルフが単振動していないことが言えます。バイモルフから読み取った振動をI/V変換した波形が乱れており、今回の結果では、理想的な結果を得られることができませんでした。
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 図6はレーザー光測定用回路の全体図です。コントローラからのSYNC出力によりND/YAGレーザーが発射され、光ファイバーに入る前と試料から戻ってきたレーザー光をそれぞれフォトダイオードPD1とPD2で検出します。しかしレーザー光の出力が一瞬であることや光に揺らぎがあるため、検出した電圧値をS/H回路(サンプルアンドホールド)によって一時的に保持しておき、部屋の明かりなどのバックグラウンドを加えた4つの値を後で読み出します。4パルス発生回路によりA/D変換トリガーを発生させ、保持しておいた4つの電圧値を読み出し、A/D変換します。





 SYNC出力を基準として発射されたPD1,PD2をS/Hトリガーの立ち下がるタイミングでS/H回路に保持され、A/D変換トリガーの4つのパルスで読み出され、A/D変換されます。 そしてA/D変換された値をPD出力からバックグラウンドを引き、PD1をPD2で割り、規格化光出力を求めることができます。
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 図8はS/HトリガーとA/D変換トリガーを発生させるための回路図です。S/HトリガーはF/F回路によりT1時間だけ立ち上がっている波形です。A/D変換トリガーは一つめのパルスの立ちあがりまでをT1'時間だけ遅延し、ASMV(エーステーブルマルチバイブレータ)というICで連続したパルスを発生させMSMV(モノステーブルマルチバイブレータ)というICで連続パルスを4つになるように区切り、トリガーパルスを発生させています。





 図9はS/H回路の回路図です。トリガーのタイミングでInの波形が保持されOutに出力されます。
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 トリガーパルスの立ち上がっている間だけ、入力波形を保持し出力されるはずですが、入力波形の周期を1μsにしたところ波形が保持しきれず、図10の左図のようになりました。そこで周期を25μsにしたところ図10の右図のように波形が保持できています。 しかし実際のPD出力波形はこのS/H回路では保持することができないため、S/HのICをより高速に対応できるものに変更するなどの必要があります。