色素ドープポリマー薄膜の ア二ーリング処理


−背景−
●近年有機色素ドープポリマー薄膜がレーザー発振するという報告がある。
●有機色素ドープポリマーがレーザー発振するためにはアニーリング処理が有効であるとされる。本研究ではアニーリング処理の効果を探求する。


画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  ローダミン6Gを電子天秤でそれぞれ10・20・30mgずつ量り取り、予めポリマーペレット(PMMA)を溶かしておいたクロロホルム溶液2mlに溶かして色素ドープポリマー溶液を3種類作製した。初めは,スライドガラスに色素ドープポリマー溶液をピペットで滴下していたが,どうしても薄膜にムラができてしまった。そこでオゾン処理により表面を親水化したカバーガラスを色素ドープポリマー溶液に浸け、静かに引き抜くことによりムラを無くし薄膜の表面を滑らかにした。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 アルミケースを作製し、図の様にケースで周囲を囲って加熱することにより、温度が一定で水分やホコリのない状態にし、内部の温度が計測できるようにサーミスタを穴からさしこみ、ヒーターでそれぞれの薄膜試料を加熱した。設定温度はそれぞれ、110,130,150℃で10分間加熱し、光学顕微鏡で色素ドープポリマー薄膜の状態を観察した。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  色素ドープポリマーをオゾン処理したスライドガラスに塗布した状態の表面の様子。表面が「金色」に光り,金属光沢のように見えます。この金属光沢は加熱時間が長いほど薄くなった。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  [色素ドープポリマーの反射光]/[ミラーの反射光]として絶対反射率を計算したものである。加熱前より反射率が低下していることがわかる。しかし波長570nm付近から広い低エネルギー領域でほぼ一定に近い反射率を示している。このことは色素ドープポリマーの薄膜中に均一に近いきれいな結晶構造ができている可能性がありアニーリング処理の効果であると考えられる。しかし、加熱後の色素ドープポリマーの反射が弱いのは加熱時間が長すぎる可能性があるので、5分と7分の場合の測定を行った。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  ローダミン6Gの光学的性質によく似た色素のローダミンBとピリジン4を選び、さらにローダミンBはローダミン6Gとよく似た分子構造をしているためローダミン6Gと同じような実験、測定結果になる可能性がある。これに対してピリジン4はローダミン6Gと比べて分子構造に大きな違いがあるのでローダミン6Gのときよりも良い実験・測定結果を期待できると考えられる。この2種類の色素を使用してローダミン6Gの時と同じ行程で実験・測定を行いアニーリング処理による効果を検討していくことにした。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  波長可変レーザーから任意の波長のパルスレーザーを対物レンズで集光し、光ファイバーに照射する。光ファイバー内から励起レーザーが色素ドープポリマー(ピリジン4)に当たるようにしておく。色素ドープポリマーからの発光を冷却CCDユニットで分光しスペクトルを測定する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 冷却CCDを用いて測定したピリジン4の発光スペクトル右上が色素を塗布したファイバーに加熱処理を行う前、右下が加熱処理後、加熱前でははっきりしないが加熱後には610nm付近に強く発光するピークが確認できる
有機色素からの蛍光は励起波長を変えてもピークは、ほとんど変化しないはずである。 ラマン散乱ならば、励起波長とともにそのピークがシフトするはずである。 励起波長を変更して測定したところ発光のピークは励起波長を短波長側にずらすと発振波長は長波長側にずれる事が分かった



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  加熱処理後のピリジン4薄膜ではASEの発生が観測できた。レーザー発振には至っていない。 色素会合体特有の反射は見られず、ASEの発生が結晶構造由来だとは言えない。 ローダミンの場合アニーリング処理によって分子の結晶構造が変化する。色素粒子の状態については注目していなかったのでその効果を調べる。