近接場領域でのレーザダイオード発光分布観測を温度制御下で行うシステムの開発


-研究目的-

 目的として、近接場顕微鏡でレーザーダイオードの発光分布を測定するとき、温度ゆらぎによる測定結果の変化、LDの発光による温度の上昇でLDが破壊されること等を防ぐために、温度制御できるLDホルダの製作、評価を行う。
 そして製作した温度制御LDホルダを使い、実際に近接場顕微鏡で発光分布を測定する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  これが製作したLDホルダで(図1a)、LD素子を固定した銅板は希工類マグネットで試料ホルダに密着しているので水平面内で移動できる。ホルダの土台部分は近接場顕微鏡に取り付けるねじの役目も果たしている。開缶したLDを二枚の銅板で挟み固定する(図1b)。ペルチエ素子の上下にシリコングリスを塗り、熱伝導率を良くした。LDの温度がリアルタイムで判るように極小のサーミスタを銅板に取り付けた(図1c)。熱伝導率をよくするためサーミスタの周りを銀ペーストで固め、接着剤で固定した。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  温度の変化でどれだけの影響があるかを確かめるため、LD発振温度を25℃〜28℃の範囲で変えながらそれぞれ温度制御をかけ電流を徐々に増やしていきその時の発光強度を測定する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  この結果より温度が上昇するごとにLD発光強度が低下していることが解り、近接場測定をするにあたり温度制御の必要性が証明された。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  近接場顕微鏡の中に製作したLDホルダを入れ、正常に温度制御がかかるか測定する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  このように、30℃、25℃、22℃では制御をかけられたが、18℃に制御すると途中で制御がかからなくなる。原因としては、制御をかけるまえの温度より非常に低い温度に制御をかけることで、移動する熱の量が増え、近接場顕微鏡内に熱が籠もったことが考えられる。以降は1時間以上の温度制御に成功した最低温度の22℃で測定を行う。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 近接場顕微鏡での測定に入る前に発光点の位置を知っておく必要がある。LDを開缶した後、光プローブをLDチップの発光点に接近させるからだ。このためLDを発振させた状態で劈開面を光学顕微鏡で撮影した。
 (図6.a) 図6.a.1.2の矢印部分は、LD発光時 (図6.a.2)にも線上に沿って発光が観測されることから、活性層に相当すると判断できる(屈折率の違いにより反射光強度が異なる)。LDチップ左端からおよそ5μmの位置にあることを確認した。これを踏まえて、LD素子内部のLDチップ劈開面にある活性層部分の発光点が、プローブの直下に来るよう(図6.b)に試料ホルダーと顕微鏡取付ねじリングの相対位置を調整した。長作動距離実体顕微鏡にて@〜Dの手順で調整する。(図6.c)

@ 長作動距離実体顕微鏡で側面を見ながら調整する。
                                (X軸方向を調整)
A 90°回転させ、正面を見ながら調整する。    (Y軸方向を調整)
B 近接場顕微鏡内に入れ、カメラ映像で確認しながら、プローブ近づける。                             (Z軸方向)
C ある程度発光点に近い場合は、10mA程度でLDを発光させ、近接場顕微鏡でマッピングしてみる。大幅にずれている場合は、@、Aの調整を繰り返す。
D スキャン後の発光分布パターンから発光点の中心が見えない場合、@〜Cを繰り返す。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  近接場顕微鏡の中にLDホルダを入れこのように配線する。Wave Function Generator(発振器)でLDの光を方形波に変換し、その光をプローブで読み取り、Avalanche Photodiodeを通すことにより光を電気に変換してLock in AMPにて方形波に対応する波形を取り出す。この方法で測定を行う。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  明らかな違いが見て取れるが、図8.bは測定中にプローブの先端が折れてしまったからである。先端が折れたプローブは光ファイバーと同じで光をそのまま通すためこのようになったと考えられる。図8a.bの1〜4のポイントでスペクトル測定を行いグラフで表した(図8c.d)。図8.cはピーク値が1nmずつ離れているのに対し、図8.dはほぼ同じ位置に重なっている。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図8.dを横に拡大し、遠視野場時の光スペクトラムアナライザによる波形と比較してみたところ、ピーク値の距離が非常に似ているのが判る。このことより図9.bは一つの場所から様々な波長の光が出ていると考えられていたが、実は図9.aの様に微妙に違う位置からそれぞれ違う波長の光が出ているのではないかと考えられる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  図8.bの4点でLD駆動電流を10mA、25mA、28mA、32mAと変化させ(図10.c)、遠視野場TMモードスペクトル測定(図10.b)と比較してみると、グラフの波形が似ているのが判る。図10.cのピーク値をまとめると(図10.a)、閾値を超えたあたりから波長が大幅にずれていることが判る。これより図10.bのように電流を増やすとピーク値が移動するのではないかと考えられる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 ・温度制御LDホルダの制作に成功した。22℃以上であれば測定に必要な1時間の間、温度を一定に保つことができる。
・LD発光分布を測定したところ、近接場プローブが健在な時と欠けたときのプロファイルが明らかに違う分布になった。従ってプローブが健在な時のLDからの近接場発光は、量子井戸方向に細長い楕円状が存在し、TE00に対応すると思われる中央の発光分布はプローブで測定できない性質をもつと結論づけられた。
・近接場プローブ先端とLD発光部の位置調整が現状では手動なので時間がかかる。開缶したLDは劣化するのが速いのでこの作業が速く正確に行えるような機構を製作する必要がある。