脱酸素下での有機超薄膜からの増強自然放出観測をめざして


-研究目的-

 昨年度の実験では、励起光により有機色素(PPV)が酸素と化学反応し劣化した。その為、増強自然放出光が直ぐに観測できなくなった。今年は脱酸素下で増強自然放出光の観測を目指して実験を行いました。
 実際に、我々は脱酸素下で蛍光色素・MEH−PPV(メトキシエチルヘキソキシーポリフェニレンビニレン) の超薄膜に励起光をあて、有機色素からの増強自然放出光(ASE)を観測する。
 その為には、自作真空試料チェンバーを作成し、その中で、試料を可変波長レーザーで励起し、増強自然放出光の観測をめざします。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 ジュラルミン製の本番用のケースを設計し、金属と励起光入出力ガラス間、金属と金属間は接着剤で接着し、試料基板を固定するホルダと一体になっているフタはゴムを挟んでよりネジでとめ、本番用試料チェンバーを作成します。この時に出射ポートからより明確な自然放出光を観測するため、試料基盤が出射ポートのギリギリにくるように設計します。全長は約50mmです。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 作成した真空試料チェンバーを真空ポンプに繋ぎ、中の空気を抜いて真空になっているか測定します。そして、外の空気の気圧とチェンバーの中を窒素で気圧を同じに保ち窒素置換することで、さらに、酸素が入らないようにします。この時、窒素ボンベから直接窒素を入れてしまうと出射ポートのガラス板が圧力にたえられず割れてしまったので、圧力を下げる為にバルーンを使用し、バルーンを内を窒素のみにし、真空にしたチェンバーに切り替えて窒素を入れるようにしました。A



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  真空実験の結果、約1日ぐらい、チャンバー内が真空を保つ事が分かった。実際測定は一日以内でできるので、真空試料チェンバーは完成した。



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画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 試料は発光強度が強いMEH−PPV(メトキシエチルヘキソキシーポリフェニレンビニレン)を使用します。PPVの構造式と光吸収率は図のようになっています。横軸が波長、縦軸が光吸収率です。またPPVはクロロホルムに溶かして使用しました。濃度は5mg/mlです。(nm)



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  カバーガラスに均一なPPVの薄膜を形成する為にスピンコート法を用います。
 シリンジにフィルターを取り付けて、クロロホルムに溶かしたMEH-PPV溶液にゆっくりと一定の速度で浸し、同じように一定の速度でゆっくりと溶液を吸い取り、フィルターをはずしスピンコーターに取り付けます。フィルターをつける理由はクロロホルムに溶けきっていないPPVを取り除くためです。
 オゾン処理をしたカバーガラスをスピンコーターに取り付け、真空ポンプで固定しスピンコーター内を窒素で満たし、シリンジから試料をゆっくりと数滴たらし回転の遠心力で均一な超薄膜を形成します。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 疎水処理をした結果、うまくPPVの薄膜が作成でき、回転速度を変えて撮影しました。濃度10mg/mlのPPVを5000回転で回し顕微鏡(蛍光)で撮影したところ、粒が見え完全に均一には広がりませんでした。同様に、8000回転で回したところ、粒が若干、少ないのが見れたので回転数の多いほうが膜は均一になることがわかりました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  PPVの透過率を測定したグラフです。赤いグラフが濃度5mg/mlのグラフで青いグラフが濃度10mg/mlです。このグラフから、5mg/mlのグラフの方が透過率が低い事を表しています。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  照射する可変波長レーザーで出た光をNDフィルターで光強度を変化させ、ステアリングミラーでレーザ光の位置と向きを調節し、凸レンズで試料に集光した後、励起光を試料全体に照射するために、レーザ光を完全に集光せず、平凸レンズで適当な太さの長方形のビーム形状にコリメートした後、正面から励起光を当てます。そして試料から出た自然放出光を凸レンズで集光し、散乱した励起光はダイクロイックミラーでカットされ、スペクトロメータに導いて蛍光スペクトルで測定します。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  蛍光スペクトルを図に示します。2のグラフではブロードな蛍光スペクトルから鋭いピークが660nmの位置に観測された。また蛍光ピークの線幅は非常に鋭い。入射パワーに比例してピークが成長してくるのがわかります。従ってこれは増強自然放出光であるとわかります。また3のグラフでは色素の膜厚をうすくしたものですが、膜厚が薄いほうが蛍光スペクトルのピークが高いはずですが、このグラフでは低くなっています。これは実際には2のグラフより高く線幅が鋭いピークがでたのですが鋭くなりすぎていた



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