リッジ導波路型量子井戸レーザの発振モード解析


-研究目的-

 昨年度の研究において、半導体レーザの量子井戸端面での発光分布は単純なガウス分布からずれていることがわかった。これを複数のモードが共存していると仮定し、その分布を探求する。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  半導体レーザの量子井戸端面での発光分布を測定します。
 短焦点非球面レンズでレーザ光をコメリートしたあと、長焦点ズームレンズでプロファイラのCCD素子上に結像させることで図2にしめす量子井戸端面の発光分布を測定できます。この時、像はf2/f1、約65倍に拡大されます。量子井戸端面での発光分布は量子井戸に沿う方向に長く延びたひし形をしており、X軸Y軸(*この位置とこの位置というふうに指す)の交差点に発光強度のピークがあり、そこから外に向けて発光強度が徐々に低くなっています。Y軸方向が量子井戸に垂直な方向で、X軸方向が平行方向になっています。複数のモードが共存しているのかどうかを判定するため、まず1成分のガウス分布で説明できない残余成分があるかどうかを確かめます。図2の発光強度のピークを通るX軸方向(*図2のプロファイラのみ指す)の発光強度をプロファイルしました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。   結果を図5の太線になります。1成分のガウス分布式1で、フィッティングした回帰グラフを図5に細線で示します。この時、実測値とくらべると両すそ部分で小さく評価されていることがわかります。図6のフィッティング値のピークbを大きくし半値幅dをせばめたグラフ、bを大きくdをひろげたグラフでもずれは小さくならなかったことより、1成分のガウス分布で表すのは難しいと思われます。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  これを2成分目のガウスが存在すると仮定して、先ほどの式にもう1つのガウス式を加えた式Aで、X軸上のプロファイルをフィッティングしたものが図7の赤線となり、実測値と比べるとすそのずれがなくなっている事が分かります。 グラフのピーク値付近で実測値がつぶれたようになっているのは、NDフィルタで光のピーク値を低くした場合もピーク形状は変わらなかったのでピーク値付近でCCD出力が飽和している訳ではありません。発振しきい値よりも低いILD=11mAで駆動しているため、光増幅が働かず一様な電流密度に比例した一様な発光をしているためと考えられます。このことから2成分のガウス分布が存在している可能性が高いことがわかります。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  ズームレンズでの正確な倍率を調べるために、まず図11に示す量子井戸端面での発光強度を測定した図1に平行光源の非球面レンズをずらすことで集光した光をコメーリート用非球面レンズで平行にしLDチップにあてその反射した光をレーザビームプロファイラで読み込みこむことでLDチップの形状と拡大された距離をもとめた図12を写します。この時、量子井戸端面での発光強度を測った時のf1、f2の距離を変えず、非球面レンズで調整をおこないます。 それと図13の金属顕微鏡で撮ったLDの写真との横幅の距離をを比べることで拡大された倍率を求めます。左右が逆になっているのはミラーで反射させたためです。反射させたLDの大きさ19.495mmから金属顕微鏡で撮った写真での大きさ303マイクロmで割った倍率、64.34倍になります。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  先ほどの倍率で各駆動電流での半値幅を計算した値を図14に示します。LDの駆動電流を変えると第1成分の半値幅が徐々に小さくなっていき、Ithしきい値をこえると急に一段と減少しまして、他方第2成分半値幅は駆動電流の増加とともにしきい値をこえたところで異常な値を示しました。従って第1成分はしきい値以上でレーザ発振するモードを表しており、他方第2成分はIth以上で消失すると結論できる。事実、図14、図15のI=26mA(>Ith)では1成分のフィッティングがX軸Y軸ともによく発光分布が再現され、レーザ発振している単一モードが支配的になることと首尾一貫している。このことから第1成分がレーザ光、第2成分が増強自然放出光になります。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  全視野での2次元的なフィッティングを行った。この時のガウス分布はa+b*exp(-((x-c)^2/d^2)-((y-c‘)^2/d’))+e*exp(-((x-f)^2)/g^2)-((y-f‘)^2/g’))になります。 この演算結果と1次元フィッティングの結果を比べたのが図17、18になります。レーザ光の半値幅は1次元フィティングの時とほぼ同じ値であるが、自然放出光の半値幅は小さい値となっている。これは、第2成分が2次元ガウス分布にあてはまらないためと考えられます。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  もし、第2成分が2次元ガウス型であるならX軸方向のプロファイルはY軸のどの位置を横切るようにとっても、半値幅が同じになるはずである。式の黒字を固定した場合、Xの値をいくら変えても半値幅gは変わらないはずである。図18−1は、図18−2の3本の白線の位置にあたる、ピーク値、ピーク値から1/3、1/6のY軸の位置で横切る場合のX軸方向の発光強度プロファイルをピーク値があうようにスケールを引き延ばしたものです。すそ部分は徐々に減少が早くなり、もとの2次元分布で言うと原点から遠ざかる程X方向の半値幅は小さくなっています。これは2次元フィッティングの方がX軸上での1次元フィッティングの半値幅より小さい値が得られたことと対応しており、直観的に発光分布が楕円ではなくひし形に見えることと対応している。つまり、第二成分はピーク値を通るX軸上に多く出て、Y軸方向に向かうにつれて少なくなっている。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。