近接場顕微鏡によるリッジ導波路型 量子井戸レーザのモード解析


-研究目的-

 近接場顕微鏡による発光分布測定とは、プローブ開口を試料にナノメートル単位まで近づけて観測するものです。そして近接場顕微鏡に用いる光プローブの開口が300nmという高分解能性を利用して、LDを開缶した実働状態でのLD素子の光学特性を評価します。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  昨年度までの研究により、プローブ開口が健在な時はTE00モードに対応すると思われる発光の中心が抜けるようなLD発光分布を観測しました。また、プローブ開口が拡がっている場合、発光の中心が抜けず発光強度の均等なLD発光分布になりました。これはプローブ開口が拡がったことにより、分解能が低下し暗い光を捉えることができなくなったと考えられます。
 プローブ開口が健在な時の各点におけるスペクトル測定をおこなったところ、b)から、1の場所だけが発光強度が大きくなり、他のスペクトルが小さくなりました。また、欠けた時のLD発光分布を測定したところ、d)から、光プローブが健在な時と欠けたときのプロファイルが明らかに違う分布になった。従って光プローブが健在な時のLDからの近接場発光は、量子井戸方向に細長い楕円状が存在し、TE00に対応すると思われる中央の発光分布は光プローブで測定できない性質をもつと結論づけられた。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 この図は先ほどのプローブ開口が拡がった状態でLD発光分布測定を行ったときのスペクトルの様子を拡大したものです。プローブを移動させた場所により約0.2nmほど波長が変化することを確認しました。遠視野場におけるスペクトル測定でも波長の幅が約0.2nmという結果が得られたことにより、近接場顕微鏡でのプローブ開口が拡がった状態は遠視野場における高分解能測定に相当するとわかりました。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  これらから、仮説として、近接場領域でのLD発光分布測定の際プローブ開口をLD発光点に接近させると、プローブ開口に横方向の電界を打ち消す性質があるため、LD発光の電界を打ち消してLD発振条件を乱す可能性があると考えられる。
 近接場顕微鏡でプローブ開口・ LD発光点間の位置・距離を変えたときのモニタPD出力を観測し、空間的な光変調の有無が求められるかどうか検討します。
 そのために、LDに内蔵のモニタPDへの配線を行い、活性層の上から出る光出力とIL特性を比較したグラフで、ほぼ比例していることを確認しました。実際の測定では、ここに両方のPDの図(オシロ)で、LD素子に内蔵のモニタPDを利用することにより、LDのしきい値電流を確認し、近接場での測定で用いる。
 モニタPDからの外部出力の変換効率 2.5V/mA IMODの変換効率  40mA /Vである。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  実働状態でのレーザダイオード(LD)素子の光学特性を評価する必要があり、本研究ではパッケージされているLDを開缶して近接場プローブをLD素子端面に接近させられるよう、近接場顕微鏡の試料ホルダーを改造し、実働状態でのLD素子発光の近接場領域光学モード解析を行う。同時にプローブ開口の存在がLD光共振器特性に及ぼす影響についても考察する。
 開缶したLDを試料ホルダーに装着した後、近接場顕微鏡に取り付けます。次に長作動距離実体顕微鏡でプローブ先端とLD発光点との位置調整を行い、発光が検出できればLD発光分布の測定を行います。そして得られた発光分布より、発光の中心と周りの点にプローブを移動させてから徐々にプローブを近づけていき、そのときのLDの全発光強度を内蔵PDより測定します。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 モニタ用PDでLDのしきい値を確認してからLDを開缶し、近接場顕微鏡の試料ホルダーに装着する。近接場顕微鏡に試料ホルダーを取り付けて、光プローブに対するLD素子の位置粗調整を行う。 上図ねじ込み式カップリングは、光プローブを交換後、再度LDホルダーを装着時に調整地点に戻るため、効率が上がり作業時間の短縮ができる。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。 光プローブ位置調整について
 a)は実際に近接場顕微鏡のヘッドを取り出し自作した台に乗せホルダーを取り付けた状態に、超作動距離実体顕微鏡を近づけた図です。 LDコントローラーより電流を1mA流しLD発光点との三次元的位置を調整します。 もし、発光点の真上にプローブが来た場合は近接場顕微鏡チェンバー内に入れ近接場顕微鏡内部のビデオカメラからLDチップと近接場プローブの位置関係を把握します。
 b)はビデオカメラから見たプローブが発光点まで近づいた状態の画像です。 このように発光点の真上にプローブが来た場合、c)の様に広範囲にかけて測定を行い発光点を確認します。 縦24um横24umの範囲にプローブをもってくる トポグラフ測定できる幅+-12um(視野フォースが検出できないため)もしLD発光を検出できない場合は発光が検出できるまで同じ調整を繰り返し行います。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  変調測定装置について近接場顕微鏡チェンバー内に近接場顕微鏡ヘッドを取り付け、Lock In Ampより1kHzでLD駆動電流を変化させつつ方形波に変調されたLD発光をAPDで電流に変え、ロックイン検出することで発光分布を観測することが出来ます。 この得られた発光分布を収束させることで、最もLD発光の強い点を中心としLDとプローブ間を近づけ、モニタPD用でLD全発光強度を測定することが出来ます。 同時に全発光強度の時間変化を観測するため、プローブ位置・距離を固定したままオシロスコープでPD出力波形を比較しながら測定します。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  変調測定の結果、収束することで図7のような量子井戸方向に長い楕円状の発光分布が得られました。図8は各A〜E点にプローブを移動させた状態でプローブ・LD間距離を近づけたときのLD出力の変化です。 プローブ開口を発光の中心Cに移動させた時、遠視野場領域(d≧0.3μm)では干渉がなくほぼ一定であるが、最大値をC1、最小値をC2で表した近接場領域(d<0.3μm)ではLDの全発光強度が大きくふらついています。 発光の周辺部(A,B,D,E)に位置させたときはこのような振動はなく、プローブ・LD間距離を近づけるにつれ徐々にPD出力が減少した。



画像をクリックすると、拡大画像が新しいウインドウに表示されます。  LD発光分布とLD出力変化、この発光分布で同じ変調測定を行うとこのようなLD全発光強度出力が得られました。
 しかし、今回の測定では揺らぎは見られるのですが、前回のような目標電圧0.3Vから近接領域での全発光強度の大きな揺らぎは見られませんでした。
 原因としては、測定中に近接場プローブ先端が削れて落ち、不安定になったと考えられます。
 もう一つの要因は、グラフからも見られるようにC点の出力変化からC点が発光部中心点ではないことが読み取れます。これは発光分布測定後、ピエゾ素子によるプローブの移動を行う際、微少距離移動中に誤差が出るものと思われるためです。推測でB点が最大のLD発光強度を持つため、画像より左上に約0.5nmずれていることがわかりました。 この誤差修正にはLock In Ampを用いて修正しきれません



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