アニマルサバイバル
木村 剛志、岡本 宗司朗 2019
ミュリック
東雲 貴之 2019
認知症患者・介護者と認知症状の関係に関する音のコンテンツ制作
中村 奈津美 2019
IoT 照明によりユーザーの没入感を高めたデジタルゲームの制作
牧 和輝、木下 直矢、佐伯 勇輔 2019
地元の民話をテーマとした奥行きのある切り絵作品の制作
水野 楓 2019
空間認識能力の向上を目的としたパズルゲーム
小谷 将豊 2019
アンセルアダムスの技法を用いた風景写真の制作
三橋 直人 2019
個人的な日常生活の中で感じている思いを表現した立体造形
井長原 剛志 2019
堺の創作生き物図鑑
葛原 怜 2019
空想都市冒険記
宮里 夏希 2019
グランプリ
アニマルサバイバル
木村 剛志、岡本 宗司朗 2019
共に遊ぶ人とのコミュニケーションが活性化できるカジュアルゲームの制作
このゲーム「アニマルサバイバル」は、Joy-Conを用いた2つのボタンとスティックだけの簡単な操作で、動物達が「縄張り争い」を行うカジュアルなアクションゲームです。内容は相手をフィールドから落とすか、エリア内に居るボスを倒すことで1ゲームが終了し、プレイヤー達は戦う・協力する・裏切るといった心理的要素を考えながら進めていきます。ゲーム中では一定時間を経過するといろいろなミッションが発令されます。協力を促すミッションや裏切り行為を誘発するミッションなどがあり、戦況を大きく混乱させます。これによりプレイヤー同士の考える内容に差ができ、協力するのか?戦うのか?を相談するなど、ゲーム中に他者とコミュニケーションしながら進行する仕組みにしました。また、各ミッションは成功でキャラクターのパラメーターが上昇し、連続で失敗すると動けなくなる駆け引きの要素を持たせており、運による勝利と敗北を設定しました。これによりアクションゲームが苦手な人でも楽しみながら勝てるチャンスを作り、子供から大人まで、より多くの人に勝利の喜びを感じてもらえるような仕組みになっています。
準グランプリ
ミュリック
東雲 貴之 2019
民族楽器をモチーフにした子供向け宝探しゲーム『ミュリック』の制作
この作品は、小学校低学年をゲームのメインターゲットとした、聴覚を頼りに3D空間上に配置された民族楽器を制限時間内に見つけていく、宝探し形式のゲームコンテンツである。私には、旅費や時間などを気にせず、自宅にいたままでも気軽に音で海外を味わうことができるものが欲しい、という願望があった。それを今の自分が持つ技術で制作してみたいと思い、個人制作という形でサウンド、グラフィック、アニメーション、プログラミングといった、大学での授業をきっかけに学び始めたあらゆることを詰め込み、取り組んだ。この作品の内容を大別すると、宝探しパートと楽器図鑑パートの2パートで構成されている。宝探しパートでは、プレイヤーは制限時間の中で、なるべく多くの民族楽器を探し出し、それらの写真を画面内に表示されるカメラボタンを押すことで撮影、収集していくことになる。一方、楽器図鑑パートでは、ステージで登場した楽器について、どこの国で生まれたものなのか、どうやって音を鳴らしているのかなど、その楽器についての情報を知ることができるものになっている。
準グランプリ
認知症患者・介護者と認知症状の関係に関する音のコンテンツ制作
中村 奈津美 2019
私が中学生の時から祖母が認知症を患っており、最近徘徊の症状が強く出ていた。その症状が与える祖父への負担を少しでも減らし、祖父母が共に穏やかな生活を送れるようなシステムを考えた。祖父の負担軽減を目的とし、祖母を外に出さないようにすることを目標として、実際に家に設置することを想定して制作した。音と認知症の関係を調査し、どのようなアプローチが可能か介護従事者の方に聞き取り調査を行った。そこから体重で祖父母を判別し、祖母が玄関に来た時のみ音楽が再生され、距離に応じて再生速度や音量が変化することで、耳だけで祖母の状態を祖父が把握できるようなシステムを制作した。また、音楽療法的観点や祖父母の気持ちへの影響の視点から、再生する音楽は童謡を用いた。シミュレーションとしてミニチュアサイズで再現し、自分の思いや考えがより伝わるように展示した。汎用性が難しいと言われている認知症状問題において、汎用性の可能性が期待できる1つのモデルとして提示することができたのではないかと感じている。課題点はまだ多々あるが、これをベースとしてここから実用化を目指したい。
観客賞
IoT 照明によりユーザーの没入感を高めたデジタルゲームの制作
牧 和輝、木下 直矢、佐伯 勇輔 2019
本制作は、プレイヤーと観客両方をユーザーとして定義し、アプローチするために、近年、普及が進むIoT照明を用いて、VR ゲームの空間演出を行った作品です。ゲームはシューティングゲームです。襲って来る赤・青・緑3色のキリシタン亡霊を銃で倒します。亡霊と同じ色の銃弾で倒すことで魂を十字架に埋葬でき、朝が来るまで亡霊の大群を凌ぎきることができればゲームクリアです。ターゲットをなわてん来場者に定め、興味を持ってもらえるように、ゲームには四條畷の実在した隠れキリシタンを題材としました。空間演出として「Philips Hue」というIoT照明を制御しました。ゲーム前とゲーム後に照明の色を変化させ、ゲーム内の魂が十字架に埋葬された際は、展示している十字架の照明を点灯させています。また、土砂や草を一面に撒き、フォグ(煙)を焚くことで、森林の雰囲気や土の匂いを、展示空間にて体験できるようにしました。結果として、プレイヤーは、ゲーム後も空間の変化を楽しむことができ、観客は、VRゲームの状況を外部から楽しむことができました。
友電会賞
地元の民話をテーマとした奥行きのある切り絵作品の制作
水野 楓 2019
近年の切り絵作品は白と黒のコントラストを見せるだけでなく、切り抜かれた部分の見せ方をひと工夫した作品が多く見られると感じていた。そこで自分も切り抜いた空間を生かした作品を作りたいと考えた。また、大学生活を大阪で過ごし、地元に戻った際に民話を思い出すきっかけがあった。その時、今の子供たちはこの民話を知っているのかと思い、地元の民話が忘れ去られないための1つのツールとなるような作品を作りたいと考えた。上記の2点から、今回の制作へとつながった。滋賀の民話である「三上山のむかで退治伝説」を題材とし、3mm厚のシナベニヤをレイヤーのように11枚重ねることで奥行きのある切り絵作品を制作した。作品は絵巻物の特徴を参考に右から左へと進む時間軸でストーリーが進行するように表現した。他にも絵のみでストーリーが進む絵巻物の連続形式や、日本の建築様式のひとつである欄間を参考にした。また何枚も同じ形の木の板を重ねて立体感を出すためにレーザーカッターを利用した。
後援会賞
空間認識能力の向上を目的としたパズルゲーム
小谷 将豊 2019
本制作では『空間認識能力』の向上を目指し、能力向上のための媒体として、パズルゲームの制作を行なうこととした。まず、文献資料やインターネットの情報などを用いて先行研究を行った。空間内での視点の移動、ゲームとしての面白さや新規性などを考慮して、ルール、形態などを検討し、立体的なパズルゲームの形になった。最終形に至るまでに、幾度もテストプレイを行い完成させた。また、素材面では、カラーボード、木材、アルミ、プラスチックなどで、試作を重ね、素材とゲームの相性についても調査した。テーマに取り上げている『能力の向上』に関する実験から得られたデータの分析を行った。分析結果から、参考資料などを元に作成した空間認識能力を測定するテストでの点数の高い者が、ゲームプレイ時の理解度が高く、勝率も高い事から、この作品が空間認識能力との深い関わりを明らかにする事は出来たと考える。一方で「能力が向上した」と断定出来るデータは不足している。今後の課題として、実験時のデータの取得方法を再検討する必要があると考えられる。
アゴラ賞
アンセルアダムスの技法を用いた風景写真の制作
三橋 直人 2019
20世紀を代表するアメリカの風景写真家、アンセル・アダムスの作品を見て、その技法、風景写真に対する考え方に興味を持ち、アンセル・アダムスの技法、撮影方法、作品の特徴、構図をもとに風景写真を撮影した。本制作ではアンセル・アダムス氏が、白黒で印画紙に表現できる明暗の階調を0の完全な黒から10の完全な白の各ゾーンに分割し、そのゾーンごとに関連付けながら適正な明るさを測定するために開発した技法、ゾーンシステムを参考に制作を行った。白黒写真では白から黒までの幅広い階調が表現されていることが写真の美しさの条件の一つである。アンセル・アダムスは逆光などによる画面内の極端な明暗差で白とび、黒潰れが起きないように露出を計算して撮影し、フィルムから印画紙にプリントする際には覆い焼きや焼き込みという暗室作業のテクニックを使い、露光量を部分的に細かく変えることで通常の撮影現像では表現できない写真を制作している。これらを再現するために、撮影時にはHDR撮影機能によって露出の違う写真を同時に撮影合成し全体の露光量を調整し、現像時にはAdobeLightroomのマスク機能を用いて細かな部分の露光量を編集し制作した。
アゴラ特別賞
個人的な日常生活の中で感じている思いを表現した立体造形
井長原 剛志 2019
2筆者が幼少期から障害者の家族と幼少期から共に過ごし、支えてきた中で日常的に感じている思いを立体造形という形で表現した。本作品は自分自身の心に抱いている言葉にならない複雑な気持ちをそのまま形にした作品である。障害者の視点から考える作品ではなく障害者を支える人の立場として観てもらいたい。筆者が支える障害者は要生活介助のレベルの重い病気を持った家族でなおかつ障害を持っている家族は兄と弟の2人なので負担が2倍の日常を母と共に2人だけで支えながら過ごしている。自分自身と辛い部分を表現する造形作品を制作するにあたって、スカルピー粘土とパテを素材として使用し、作品に登場する自分自身の姿の制作には顔のパーツのみ3Dスキャナーと3Dプリンターを使用し写実性を加えた。朝、晩の食事介助や歯磨き、手や足の位置の変更、車椅子運転時の運転可能になるようにするための手の置き場所の変更、呼吸器の装着具合、トイレ介助、就寝時の介助、就寝後数時間経過してからの体勢変更や弟が持つ病気に関する不安等に対するイメージを造形要素として作品化した。
芸術賞
堺の創作生き物図鑑
葛原 怜 2019
この作品は「フィクションとノンフの融合」というコンセプトのもと作成した架空の生物図鑑。堺の特色、つまりノンフィクションと、私の想像力から生まれるフィクションを融合させ、堺に新たな生き物を根付かせてみた。“居そうで居ない” を目標に、現実世界では見たことがない、でも現実ではありえないようなファンタジーすぎるデザインにならないように注意しながら生き物をデザインし、設定を加え図鑑にした。今回イラストでは、着色したもの、スケッチ風のもの、骨格と内臓を描いた図に近いものと大きく分けて3種類のものをそれぞれ用意し、ページ構成の統一感を高めた。着色したイラストでは、自分の絵の魅力の一つである色使いにこだわった。影や光の境界などに彩度の高い色を置いたり、ベースの色からは離れた色を差し色に使用したり、見る人を飽きさせないイラストを目指した。骨格と内臓のイラストを描く際は、とにかくリアルに見せるため、ベースにした生き物の複数の情報を照らし合わせながら描いた。この作品は自分が思っていた以上の反響があり、とても驚いた。
空想都市冒険記
宮里 夏希 2019