松浦研究室
(ホームページ:http//www.osakac.ac.jp/labs/matsuura/

雑誌等による松浦研究室の紹介

1.リクルート
2.河合塾
3.ボーランド社
4.日本工業新聞


研究テーマ

エネルギー問題・環境問題を解決するためには、低価格のクリーンなエネルギー源の開発だけでなく、無駄なく電気を使うための工夫も必要です。

そのため、太陽電池だけでなく、超低損失電力素子の研究も行っています。


1.           宇宙用太陽電池の耐放射線に関する研究

人工衛星や宇宙ステーションの主な電源は、太陽電池です。しかし、宇宙空間では高エネルギーの放射線(電子や陽子)が飛び交っています。これらが太陽電池に当たると、太陽電池が太陽光を電気に変える能力(光電変換効率)が悪くなります。したがって、放射線に強い太陽電池を作る必要があります。

現在、(独立行政法人)宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究し、放射線が太陽電池に当たったときに起こる現象および太陽電池の変換効率が悪くなる原因を、当大学では基礎的な面から研究しています。さらに、これらの基礎的な研究結果を用いて、変換効率が悪くならない太陽電池の研究も行っています。


2.           超低損失電力素子用半導体に関する研究

最近、細かく温度調節のできるインバータエアコンや目に優しいインバータ式蛍光灯等で使われているインバータとは、一秒間に電圧が正負に変わる回数をコントロールする装置です。これからは、電気自動車の回転数を制御するためや太陽電池で発生した直流電源を交流電源に変える(DA変換する)ための大電力用のインバータが必要となります。

ところが、これらのインバータやDA変換器を動かすと熱を発生します。現在使われている半導体(シリコン)では、パソコンのCPUにファンが付いているように、冷却するために大きなファンが必要となります。冷却するために、無駄なエネルギーを使ってしまいます。

そこで、温度が高くなっても正常に動くインバータを作るために、新しい半導体(シリコンカーバイト)の研究が行われています。シリコンカーバイトを用いると200℃以上でも正常に動くインバータが作れますが、この半導体に関しては分からないことが多くあります。そのため、国がシリコンカーバイトを実用化するためにプロジェクトを立ち上げ、産学官共同で研究・開発を行っています。当研究室では、大学として参加し、シリコンカーバイトの電気特性の評価を行っています。これらの基礎データを用いて、企業では実用化に最適な電子デバイスを設計・製作しています。


3.           色素増感太陽電池の研究

現在使われている太陽電池は、半導体を用いています。半導体を製作するためには、高温・真空等にする必要があり、装置に多額の費用がかかります。そこで、簡単で安価な装置で作製できる色素増感太陽電池の研究を行っています。

この色素増感太陽電池は、花びらや果実の色の基になっている色素が太陽光を吸収し、電気に変える太陽電池です。設備に多額な費用がかからないため大学でも研究しやすく、いろいろな工夫をしながら、変換効率の向上を目指しています。


4.          
X線半導体検出器の開発

物質にX線を照射すると、物質に含まれている元素特有のX線が出てきます。このX線を検出することにより、物質に含まれている微量な元素を調べることができます。
  たとえば、米にX線を照射し、カドミウム特有のX線が出てくるかを調べることにより、現在問題になっている米のカドミウム汚染の有無を調べることができます。そのほか、交通事故等で車から付いた微少の塗料にX線を照射し、そこから出てくるX線の種類を調べることにより、事故を起こした車の車種を調べることもできます。
  このように簡単にX線を検出できることは重要です。そのため、室温で使える可搬型で安価なX線半導体検出器の開発が必要となっています。
  現在、シリコンを用いたX線検出器の開発を(独立行政法人)科学技術振興機構の支援を受けて、開発を行っています。


5.           次世代半導体の電気特性の研究

コンピュータを動かしているCPUやメモリーはシリコンから作られています。しかし、IntelのCPUの動作周波数が4 GHzになかなかならないように、より高い周波数では動作しません。さらに、シリコンは発光することができませんし、高温でも動作しません。
  このようにシリコンを用いた半導体デバイスの限界が見えてきましたので、シリコン以外の半導体の作製が行われています。しかし、このような次世代の半導体を半導体デバイスに用いるためには、これらの基礎的な研究が必要です。
  当研究室では、ダイヤモンド半導体をはじめ、次世代半導体の電気特性を調べています。


今後の展開

大学、企業、独立行政法人で行える研究は、それぞれ異なります。企業の役割は、如何に利益を上げられる製品を作り出すかであり、独立行政法人の役割は日本にこれから必要な技術を提案・指導していくことです。

大学の役割は、実験結果を説明できるモデルを提案し、新しい技術の可能性を探求することです。そして、製品化できうる種を探し出すことです。

 新しい材料(半導体・強誘電体)の電気特性の評価から、基礎的な物理モデルの提案および新しい電子デバイスに結びつく原理の提案を行いつつ、電子デバイスの設計に必要なパラメータの決定等を行っていく予定です。


高校生へのメッセージ

大学では基礎を学習した後、それを応用する力(考える力)を身につけることが重要です。

新しい材料の電気特性を調べると、教科書に書かれていない現象によく遭遇します。そのとき、なぜ起こるかについて自分なりのモデルを考え、そのモデルが正しいならばどのような実験をすれば実証できるかを考えながら、研究を進めていきます。つまり、実験とモデルの提案を繰り返しながら、あたかも推理小説を解くように、楽しく研究をしています。

クリーンエネルギーである太陽電池、超低電力損失である電子デバイスの開発に密接に関係した研究を大学で行いませんか!