暗号通信×情報テクノロジー
暗号通信×情報テクノロジー

ネット社会において、情報テクノロジーの
進化とともに、暗号をはじめとする
通信セキュリティはどう変化していく?

メールやネットショッピング、SNSなどインターネットを通じてさまざまなことが簡単便利に行える現代、それらを利用する際には、住所や電話番号、誕生日やパスワードなど、さまざまな個人情報の入力が求められます。大切な情報を外部に漏らさずに安全にやりとりするために、あらゆるデータは暗号化され、通信する者同士のみがわかるように復元されています。情報セキュリティによって、現在のインターネット社会が成り立っていると言っても過言でもありません。あらゆるモノ・コトがますますネットワークでつながっていく中、暗号技術をはじめとする情報セキュリティはさらに重要な役割を占め、情報テクノロジーとともにさらなる発展が見込まれるでしょう。

Case INTERVIEW まなびの紹介Case INTERVIEW まなびの紹介

情報テクノロジーと
情報セキュリティは表裏一体。
情報セキュリティは何のためにある?

情報テクノロジーと情報セキュリティ分野は表裏一体の関係にあります。実は、コンピュータはもともと暗号を解読するために生まれたものです。第二次世界大戦時、ドイツ軍が軍事情報を味方に送る際にエニグマという暗号機が使われていました。その複雑かつ難解な暗号を機械的に解読するために作られた機械がコンピュータのはじまりとされています。軍事利用として発展してきた暗号技術=情報セキュリティは、社会の発展とともに商業利用に転用されるようになり、現在のインターネット社会においては欠かせない役割を担っています。私たちがインターネット上で安心してメールのやり取りやショッピング、SNS交流できるのも、まさに情報セキュリティの支えがあるからこそと言えます。
近年では、内閣府が提唱する「Society 5.0」というAI・ICT・IoTによる超スマート社会の実現が進む上で大容量かつ高速の通信が可能になると、膨大な情報にも対応できる新たな暗号技術が必要とされます。また、AI技術の発展により、暗号をはじめとする情報セキュリティ技術が破られる可能性も考えられ、AIでも突破できないセキュリティ技術が求められます。今後も情報テクノロジーが進化していく中で、誰から何を守るのか、その目的や役割に合わせてその手段や方法を変えながら幅広い分野で活用される情報セキュリティが望まれるでしょう。

量子コンピュータの出現により
ネット社会は崩壊?
情報セキュリティのこれからの課題とは?

今、情報セキュリティ分野は新たな課題に直面しています。それが量子コンピュータと呼ばれる、現在のコンピュータよりはるかに高速かつ複雑な計算を行うマシンの登場です。まだ完全な実用化までには至っていないものの、その開発は世界中で進められており、その実現は今後20年後とも、50年後とも言われています。もし、量子コンピュータが完成すれば、現在採用されている暗号化技術はほとんど解読可能になってしまい、インターネットにおける通信の安全性は失われてします。まさに、ネット社会の崩壊ともいうべき状況です。そのため、量子コンピュータを使っても解読されない耐量子暗号という分野の取り組みも進んでいます。今、情報セキュリティ分野のさらなる進化が求められ、それらを担う次世代の人材がますます期待されていきます。

次世代のネットワーク社会を
支えるために、
必要な学びとは?

情報テクノロジーの進歩とともに発展してきた、暗号技術をはじめとする情報セキュリティ分野。しかし、実は暗号の基本ルールは古代から使われているものから大きく変わっていません。文字の位置を入れ換える転置式暗号、文字が換わる換字式暗号の2つを基本ルールとして、どのように変換したかを受け手と送り手がお互い認識しておくことで情報のやり取りが行われていました。暗号を強化するということは、平たく言えば記号の数を増やしたり、2つの方法を複雑に組み合わせたりしているだけなのです。基礎授業である「情報通信理論」「符号理論」「情報セキュリティ」では、通信の基礎を支える圧縮符号・誤り訂正符号などの符号化技術から、現在のインターネットに採用される暗号化・復号までを、紐解きながらわかりやすく教えていきます。また、高スペックのパソコンが備わった演習室では、簡単な教材を用いて暗号のプログラミングを行う「プログラミング演習」や、ネットワークルーターを用いてファイヤーウォールやVPNなどの情報セキュリティを設定する「通信工学応用実験」など、より実践的な学びを用意。現在のネットワーク社会における基本的な通信の仕組みやデータの成り立ちなど、あらゆる面を網羅的に学びながら次代の情報化社会を支える上で必要な知識やスキルを身につけていきます。

  • 転置式暗号の図解
  • 換字式暗号の図解

現代のコミュニケーションを知ることは、
情報セキュリティを知ること?

今後、ますます進化するネットワーク社会において、情報テクノロジーがどのような情報をやりとりしているかといった基本を知っていることが重要になってくるのではないでしょうか。基本を知っていることで、どのようなルートから情報が漏れるのか推測でき、新たな情報テクノロジーが登場しても応用して適切なセキュリティを組むこともできます。さらには、情報テクノロジーを開発するエンジニアとセキュリティを設計する研究者の間に立って、橋渡し的な役割として活躍することも考えられます。コミュニケーションを支える全ての技術が通信技術に含まれます。そして、人と人とのコミュニケーションが行われるかぎり、情報セキュリティ分野はなくなることはありません。情報テクノロジーの進化とともに、その形態や目的、方式は変わっていくかもしれませんが、その裏側にある情報セキュリティ分野について学ぶことでどのようなテクノロジーが登場しても適応していくことができる可能性が広がっていると言えるでしょう。

情報通信工学部 通信工学科 村上 恭通教授
【今回インタビューに答えてくれた先生】
情報通信工学部 通信工学科
村上 恭通教授
大学院修了後、メーカーに13年間勤務し、モデム・情報圧縮・画像符号化・リモートメンテナンスなど通信応用技術の研究開発に従事。その後、産学共同組織にて公開鍵暗号技術の研究開発の傍ら京都工芸繊維大学社会人博士課程にて博士(工学)を取得。2003年から現職へ就任し暗号と情報セキュリティの研究に従事。

FUTURE POSSIBILITY 将来、どう役立つのかFUTURE POSSIBILITY 将来、どう役立つのか

インターネット社会の核は、
情報セキュリティにあり。
基礎知識や技術を身につけ、
次の社会を支える人材へ。

スマートフォンやパソコンを代表するように、通信ネットワークがないと社会が成り立たなくなりました。意識されることはあまりありませんが、普段何気なく行っている営みを支える通信技術の裏側に情報セキュリティの分野が大きく関わっています。情報テクノロジーと情報セキュリティ。まさに、どちらが欠けても、現在のネットワーク社会は生まれなかったでしょう。今後、さらに情報テクノロジー化が進む上で、通信分野や情報セキュリティ分野における基礎知識や技術を学ぶことは大きなアドバンテージになります。ネットワーク社会の基礎を全て学べる通信工学科を通じて、次代の情報化社会を支えていく人材へと成長していくことができると考えられます。

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