ショットキ−接合


富岡 昌浩


ショットキ−接合とは、金属と半導体がある仕事関数の関係を持ち、接合している 場合にpn接合と同様の整流特性を示すものです。実を言うと, この現象の方がpn 接合より先に発見されています。ショットキ−接合になる仕事関数の関係は、金属と n型半導体の接合と、 金属とp型半導体の接合とでは異なります。 金属の仕事関数をφm、半導体の仕事関数をφsとすると、金属とn型半導体の 接合ではφm>φsの場合、金属とp型半導体の接合ではφm<φsの場合、 ショットキ−接合になります。また、仕事関数の関係が逆になった場合は整流特性は示さず、 オ−ミック接合となります。
それでは、金属とn型半導体がφm>φsの関係で接合した場合、なぜ整流特性を 示すのか見ていきましょう。
まず、図(a)は金属とn型半導体の
エネルギ−バンド図です。 図の黄色に塗った部分は電子がそこに満たしている ことを示しています。金属とn型半導体を接合させると、半導体の 伝導帯の電子は金属の伝導電子より高いエネルギ−を 持っているので、半導体内の接合面近くの電子が、エネルギ−の低い金属に移動する。 この時、半導体内の接合面近くにはドナ−イオンが残り、 空間電荷領域が形成される。この領域内には、電子の移動を妨げる向きの電界が生じ、 両者のフェルミ準位が一致すると、半導体から金属へ 移動する電子の数と、金属から半導体へ移動する電子の数が同じになり、電子の移動が 止まったようになり、平衡状態に達する。その結果、図(b)のように、接合面に半導体側の 障壁(拡散電位:半導体から金属への電子の流れに対する障壁)qVd=φm-φsと、金属側の 障壁(金属から半導体への電子の流れに対する障壁)φm-χs(χs:半導体の電子親和力)を生じる。
次に、図3のように、ショットキ−接合に順方向(金属側に正、半導体側に負)に電圧Vを 加えると、この電圧は接合面近くにかかり、拡散電位を打ち消す向きであるので、半導体側の 障壁がqVだけ低くなり、図5のようになる。よって、半導体から金属への電子流が増える。 しかし、金属側の障壁は変わらないので、金属から半導体への電子流も変わらない。だから、 順方向(金属から半導体)に電圧を加えると、電流が順方向に増える。
また逆に、図5のように、ショットキ−接合に逆方向(金属側に負、半導体側に正)に電圧Vを 加えると、この電圧も接合面近くにかかり、半導体側の障壁がqVだけ高くなり、図6のようになる。 よって、半導体から金属への電子流は減り、電子流は一定値になる。しかし、金属側の障壁は 変わらないので、金属から半導体への電子流も変わらず一定値をとる。だから、逆方向に電圧を かけると、逆方向(半導体から金属)に一定値の電流が流れる。

 だから、金属とn型半導体がφm>φsの関係で接合したとき、その接合はpn接合と 同様の整流特性を示すのである。

また、同様に金属とp型半導体がφm<φsの関係で接合したとき、その接合は同様の 整流特性を示す。


ショットキ−接合の容量−電圧特性  ショットキ−接合の電流−電圧特性


半導体工学へback


ご意見、ご要望はここまで。