JOZEN Tsuneo
建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 空間デザイン専攻 教授
大学院 総合情報学研究科 デジタルゲーム学コース 教授
博士(工学)
大阪大学
データ工学と可視化を中心としたゲーム開発技術とその交通・社会システムへの応用

大のコーヒー党で、いつでも飲めるようにマグボトルで持ち歩いています。そのマグボトルを含め、財布、ポーチ、ハンドタオルなどは全て大好きなスヌーピー。ノベルティグッズほしさにファーストフード店に通い詰めポイントを貯めた経験あり。

ITで社会インフラを整備!
安全で快適な社会を創造する

これまで、都市・建築・空間を支えるハードウェアの技術は数千年の昔から多くの技術開発がなされてきました。情報革命を経てSociety5.0と呼ばれる時代に入り、建築や空間を構築する上でも情報技術が重要になっています。
上善研究室(デジタルアーキテクチャ研究室)は、総合情報学部デジタルゲーム学科で積み上げてきた情報技術を都市空間に活かし、人にやさしい環境の創出をめざしています。

路線バスの安全運行システムを共同開発!
ドライバーの健康状態をリアルタイムで把握

近年、日本では社会全体で超高齢化が進んでおり、バス業界でも若手の運転手不足が慢性化しています。この人材不足による過労勤務が原因と思われる交通事故も増加しており、社会問題になっています。

上善研究室では、バス会社等と協働で安全な公共交通を実現する技術を研究しています。パートナー企業の一つであるみなと観光バス株式会社(松本浩之社長)は90年代から情報化に積極的で、バス事業者のレベルをはるかに超えた電子・情報技術を持っています。同社と本学は研究上の包括連携協定を結んでおり、同社での問題提起をきっかけにバス車両の運行状況とドライバーの健康を把握し、安全な公共交通の実現を目指してきました。

この取組みは上善教授を研究代表に、同社や後述の社会システム総合研究所、京都産業大学、京都大学、上田学園、電通総研との共同研究として、総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の採択事業となりました(2016年)。この「走行車両からのセンサーデータを収集・処理するための階層化クラウドとその応用に関する研究開発」(SCOPE:no.150201013)は、リアルタイムで運転状況を把握する技術です。開発にあたり、安全管理で重要になる運転手の健康状態をリアルタイムで確認するため、上善教授は当時医療福祉研究科の吉田正樹教授(現・名誉教授)からのアドバイスを受け、ドップラーセンサーによる非接触型心拍・呼吸センサ「Legame(レガーメ)」(株式会社システムジャパン)を数十台の路線バスに搭載。振動の多いバスでも、精度の高いデータが取れるよう調整を重ねました。

バス管理システムの概要

上善教授らの開発チームは、危険・不快運転のパターンや運転手に異変があれば抽出する機能を持たせ、安全運転のための注意喚起や、バス運行現場での学習・指導などに大きく貢献するシステムを開発。

この研究プロジェクトが発端となり、みなと観光バスはシステム開発専門の子会社・株式会社PINEBASE(松本陽太社長)を設立。IoTでバスの車両速度や位置情報を把握するデジタルタコグラフ「DOCOR(ドコール)」の製品化・販売につなげました。この製品は現在、デジタル運行記録計などIoTの汎用機器として広く利用されています。

現在、上善教授らが進めた研究は、路線バスだけでなくトラック運送など業界全体の安全管理をはじめ、安心で快適な社会構築に大きく貢献しています。

公的な救急システムのないラオスに
救命救急指令管制センターや支援システムを届ける

また上善研究室では、2021年度よりJICA草の根技術協力事業としてラオス人民民主共和国(以下、ラオス)の「交通事故から住民の命を守る救命救急活動支援プロジェクト」に参画。実施機関は、筑波大学と株式会社システム総合研究所が代表となっていますが、上善教授や名古屋大学・京都産業大学・帝京大学・国士舘大学も研究に参加しています。

実は上善研究室と支援対象国のラオスには、2015年から交流がありました。ラオスには、もともと公共救命救急システムが存在しておらず、民間のボランティアが救急車を運用し救命救急活動を行っていました。119番のような救急専用番号もなく、交通事故が発生すると病院への患者搬送が遅れ死亡するケースも珍しくありませんでした。

支援プロジェクトは、この問題を解決するために、ラオス初のCCC(救命救急指令管制センター)を開設。さらにボランティアが運営する救急車にスマートフォンを配置し、ESS(救命救急活動支援システム)を運用するしくみを作りました。CCCでは、救急車の位置情報や活動状況だけでなく、ESSから送信される事故現場の状況写真や患者情報をリアルタイムで確認できるため、適切な病院への患者搬送を指示することができます。また、病院側のシステムにはESSからの患者情報が表示され、迅速な措置を促すことができます。

この救急救命活動の支援システムは、2024年春ラオスへの引き渡しが完了。ラオスでのプロジェクトを通し、アジアの実状を知った学生たちが、今後さらに英語力や専門技術を磨き、国際交流や国際貢献に積極的に関わってくれることを期待します。

ラオスでの学生の活動の様子
指令管制センター(CCC)におけるシステム運用訓練を実施.
 

社会を構築する情報技術+空間デザインの力で
介護や福祉の課題を解決!

情報技術で人にやさしい都市空間を創造してきた上善教授。いま最も注目しているのは、介護や福祉の世界です。直近には医療・介護・ヘルステック事業を国際的に展開するウェルグループの井村征路社長(ウェルコンサル株式会社)との研究連携に合意。今回の連携では、介護人材育成のためにVRを使った教育システムの開発や、認知症予防に効果的なゲームの開発プロジェクトが進行の予定。
VRを使ったe-Learningシステムや予防的医用ゲームの開発では、空間デザインの力が特に重要になります。情報技術+デザインが、人材育成や予防・治療といった社会課題を幅広く解決してくれる時代が始まりそうです。

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