Waveletの多重解像度解析を用いたスケールの異なるテクスチャ画像領域分割
Region Segmentation of a Texture Image with Different Scales by using Multi Resolution Analysis of a Wavelet
山本 龍(修士課程1年),越後 富夫(教授)

目的
テクスチャは自然画像において基本的な特徴で,テクスチャ特徴量を基にした画像の領域分割は, 画像理解における重要な技術です.テクスチャは近傍の画素成分が類似した小領域(テクセル)が折り重なって構成されますが,テクセルの大きさは,テクスチャ固有でなく視点からの距離にも依存します.図1のテクスチャは近くから遠くまで,連続的にテクセルの大きさが変化していますが,本来は同じ面上の模様として扱われるべきです.
図1.テクセルの大きさが連続的に変化する画像

分割併合法
そこで本研究では,ハールウェーブレットの多重特徴解析による画像領域分割を行います.領域分割の手法には,分割併合法を用います.分割併合法は,図2に示すように,画像を4分木構造に細分化する分割過程の後,隣接した類似領域を併合して非矩形領域を成長していきます.最終的には,併合前後の距離が閾値以上になるところで止めます.
図2.分割併合法

ウェーブレット変換と多重解像度解析
画像にウェーブレット変換を行うと低周波成分(A),水平・垂直・対角の高周波成分(H, V, D)が得られる.
そこで画像の領域サイズをSとしたとき,隣接するiとjの距離Dijを式(1)で定義します.
画像に1度のウェーブレット変換したものをレベル1,その結果として得られた低周波画像をウェーブレット変換したものをレベル2,
さらにその低周波画像をウェーブレット変換したものをレベル3とすると,隣接画像S1,
S2の間には,図3に示す7通りの異なる解像度の距離判定を行う必要があります.
図3.多重解像度の距離判定
実験と結果
図4は実験に用いたテクスチャ画像です.Photoshopの遠近法機能を使って,3つのテクスチャを持つ面を
人工的に生成した画像(512x512画素)です.図5は分割結果,図6は併合結果を示します.3つの面の境界は矩形形状が現われますが,
図6では,面の境界を直線近似しています.図7は併合するための距離の変化を示しています.最終の3つの領域を併合するには
非常に大きな距離が必要で,自動的に併合を打ち切っています.
![]() 図4.処理画像 |
![]() 図5.分割処理結果 |
![]() 図6.併合処理結果 |
図7.併合前後の距離
この研究は軽井沢で開催された『画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2008)』で発表されました.
山本龍,越後富夫: Waveletの多重解像度解析を用いたスケールの異なるテクスチャ画像領域分割, 第11回画像の認識・理解シンポジウム論文集,IS1-28, pp.502-507, 軽井沢, 7月. 2008.