核心体温を測る
赤外線を用いたヒトの高速核心温度計測法の開発
コロナ禍において,ヒトの体温を環境温度(気温)に依存することなく,
非接触かつ高速に測定することが望まれています。
赤外線を用いたサーモグラフィーは非接触かつ高速にヒトの体温を測定できますが,
表面温度のみを測定するので,環境温度に強く依存します。
そこで,この問題を解決するために,本研究室では新たに赤外線点検出機を開発し,
ヒトの深部温度(核心温度)を測定可能な新たな深部温度計測法を開発しました。
左の写真はサーモグラフィーで撮影した豆電球の熱画像です。
豆電球内部のガラス表面を観察できていますが,ガラス内部にあるフィラメントは観察できていません。
右のデータは本研究室で開発したシステムで撮影した熱画像です。
らせん構造をしたフィラメントの熱画像が描写されています。
細胞を診る
活きた細胞を観察する走査型位相差顕微鏡の開発
近年,iPS細胞に関連する研究が日本を中心に精力的に研究されています。
本研究室では,iPS細胞などの組織細胞を無染色で観察可能な走査型位相差顕微鏡の開発に取り組んでいます。
この顕微鏡は,干渉性が良い円環状のレーザー光源と能動型画像処理とを融合することで,
組織細胞の吸収構造と位相差構造とを分離して観察できる特徴があります。
また,この他に,対物レンズの球面収差の影響を低減したり,
生体組織による多重散乱光の影響を低減したりでき,
組織細胞の新しい顕微観察方法として,新たな可能性も期待されます。
下の画像はブタの肝臓試料を本顕微鏡で観察した結果です。
左の画像は細胞の吸収構造の画像であり,右の画像は細胞の屈折率構造の画像です。
血管を診る・治す
医療治療機器を目指した細血管用血管内視鏡の開発
心臓カテーテル手術ではX線撮影を併用することで,心臓周辺の血管を俯瞰的に観察しながら手術します。
一方,近年,開発が進められている血管内視鏡は血管内部を直接観察できる利点があり,大きく期待されています。
しかし,現在開発されている血管内視鏡は観察像を結像するタイプであり,現状,いくつかの問題点が存在します。
例えば,この結像型血管内視鏡では,内視鏡先端部に血管内部の像を結像するためのレンズの装着が必要であり,
さらに,そのレンズを固定するホルダーも必要です。
その結果,結像型血管内視鏡の先端は硬く,さらに内視鏡先端の径も大きくなってしまいます。
そこで,本研究室では,局所波面制御を利用したレンズレス走査型血管内視鏡の開発を進めています。
この手法では,血管内部に集光点を形成し,その集光点を高速に2次元や3次元走査することで血管内部を画像化します。
後見にはレーザー光を使用するので,血管内部の観察だけでなく,レーザーによる血管内部の局所治療も期待できます。
左の図は走査型血管内視鏡の原理図であり,平面波を局所光学遅延装置で波面制御しています。
この波面制御によって,光ファイバーバンドルから射出した光は集光されます。
右の図は集光点を撮影した画像になっています。
脳機能を診る
ヘッドバンド型ワイヤレスNIRSデバイスの開発
NIRS(ニルス:近赤外分光法)装置は頭部の酸素状態を観察することで脳の活動状態を非侵襲に評価でき,
近年,うつ病の簡易診断等にも利用されています。
このNIRS装置は,一般的には高額な据え置きタイプであり,被験者の動きに制限があったり,
光ファイバーホルダの装着が必要であったりします。
本研究室では前額部から簡易的の脳機能を測定するための,ワイヤレス実時間ヘッドバンド型デバイスを開発しました。
3Dプリンターでヘッドバンドを3D印刷し,LED光源と光検出器を搭載した回路基板を組み込んでいます。
光源と光検出器とをマイコンで制御し,光検出信号よりマイコン内でNIRS信号に演算処理しています。
そのNIRS信号をタブレットPCにBluetoothを介してワイヤレスで転送し,NIRS波形を描画します。
なお,本研究は共同研究として開発が進められてきました。
合格力を伸ばす
臨床工学技士国家試験対策アプリによる学修効果の解析
本研究室では,臨床工学技士の国家試験対策に向けた新たなe-Learningシステムとして,
Tablet PC用の教育アプリケーション(アプリ)の開発を進めてきました。
臨床工学技士の過去問題が12年分収録されており,国家試験の過去問モードや選択肢のシャッフル問題など,
学修効果が期待できる機能が搭載されています。
本研究では,このアプリの利用による学修効果の解析を進めており,
効率的な学修方法や学修履歴と成績の相関性などを検討しています。
中央の棒グラフの図は,研究室の学生のアプリ利用時間の時間推移を表しています。
試験直前,もしくは試験期間中のみにアプリを利用していることが分かります。
深部を制御する
空間ソリトンの対向衝突を利用した媒質深部の高空間分解能制御
材料深部を高い空間分解能で光制御するために,空間ソリトンを利用した研究を進めていました。
材料深部において面内方向の空間分解能を高めるために収束ビーム径が一定状態で伝播する空間ソリトンを利用し,
深さ方向の空間分解能を高めるために超短パルスレーザーの対抗衝突を利用します。
本研究室では,これまでに多層光メモリを応用例として,
パルス状空間ソリトンの対向衝突を利用したビットデータの記録や消去,再記録を実験的に実現しました。
材料の特性に制限はあるものの,光波の伝搬方向にも閉じ込め作用がある時空ソリトンの対抗衝突を利用することで,
媒体深部を高い空間分解能で制御できる手法として期待できます。
なお,現在,この空間ソリトンを用いた研究は休止しています。
深部を診る
光と超音波を融合した生体深部の分光観察
生体組織深部を収束超音波の空間分解能で光計測可能な超音波変調光計測を研究していました。
収束超音波を生体軟組織に照射し,その超音波収束点で生じる生体組織の局所疎密と光の相互作用とを利用して,
生体組織深部を通常の生体光計測法より高い空間分解能で計測します。
本研究室では,パルス超音波とチタンサファイアレーザーとを用いて,超音波の伝搬方向の分光情報を計測していました。
なお,現在,この超音波変調光計測の研究は休止しています。