SHIMABUKU Maiko
メディアコミュニケーションセンター 特任講師
博士(工学)
大阪電気通信大学
情報科学教育教材に関する研究 / プログラミング基礎教育
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スポーツ観戦が大好き。野球はパリーグ推しで、同郷の沖縄出身の選手がいると応援に熱が入ります。モータースポーツにも夢中で、鈴鹿サーキットへF1日本グランプリ観戦に行きました。研究作業中の集中力アップには、テクノやEDMなどの音楽をよく聴きます。

楽しく学び、わかりやすく教えるために 
プログラミング教材を開発して効果を検証!

2020年度から小学校でプログラミング教育が導入されました。その後、2021年度からは中学校で、続けて2022年度からは高校でプログラミング教育の拡充が進みました。けれども、この新しい分野の教育方法については、いまだ確立されていません。
島袋特任講師は、プログラミングを含むコンピュータのしくみを、どうすれば楽しく効果的に学べるのかを研究し、教材を開発。その効果を検証しています。

プログラミング的思考を身につけるための
小学生向けドリル教材を開発

プログラミングは、コンピュータを使ってプログラムを作成し、実行結果を確認しつつ学んでいくことが一般的です。ただ、子どもの場合、画面中のキャラクターの見た目や鳴らす音を選ぶことに夢中になってしまい、「プログラミングとは何か」という大切な部分を見落としてしまいがちです。

そこで、一旦コンピュータから離れて、段階的にプログラミングについて学べる教材を開発するべく、電子機械工学科の兼宗教授と協力し、開発・提案しているのが「ドリル形式」の教材です。この教材では、プログラミングの考え方を使って問題を解いていきます。

ドリル教材は身近な物を題材にした問題からプログラムの流れを表す図であるフローチャート、その次にプログラミング言語による問題といったように段階的に抽象度が上がるように問題がまとめられている

たとえば入門編では、図(左)のように、シールを貼る順番を考えることを通して「反復処理(=命令のまとまりをくり返し実行する)」について学びます。具体物を題材にしているため、シールを使って遊びながら考えることもできます。次のステップに進むと、中級編では、図(中央)のようにプログラムの流れを示す図(フローチャート)を使った反復処理の表し方と合わせて、反復処理の考え方を学びます。フローチャートで示された手順の通りに材料を重ねると「どのようなケーキができるのか」を考える問題が出題されています。上級編になると、図(右)のようにプログラミング言語に似た短い命令文を使って「ビジュアル言語の命令に従うとロボットはどう動くか」が出題されます。このようにドリル形式の教材は、段階的に問題の抽象度を上げることで、プログラミングの考え方を無理なく理解できるよう設計されています。

このドリルによる教育効果は、公立小学校の2年生35名の協力のもと検証。順次処理の概念を学習できることが確認され、現在多くの小学校で活用されています。

ICT教育センター主催のプログラミング教室で子どもたちが問題に取り組む様子

「コンピュータサイエンスアンプラグド」と
ARを組み合わせた最新の学習法を開発!

また、ものを使ってコンピュータのしくみについて学ぶ方法のひとつに「コンピュータサイエンスアンプラグド」があります。その中に、見た目は同じで重さの異なるオモリを、天秤を使って重さ順に並べ替えるという学習活動があります。これは、実際に自分の手でオモリを触りながら、データを並び替えるアルゴリズム「ソートアルゴリズム」について楽しく学べる効果的な学習法です。

ただ、このオモリを使った学習には、手で持った瞬間に重い方がわかってしまうという課題や、クラスの人数に合わせて必要な数のオモリと天秤をセットで準備しなくてはならず、準備の手間がかかるといった課題があります。

そこで島袋特任講師は、重さの変わらない紙のカードをオモリとし、カードにスマホカメラをかざすと仮想の天秤が表示されるAR教材を開発。この教材を使って、高校生および大学生を対象に教育効果を測る実験を行いました。検証の結果、AR教材は、実物の天秤を使って「選択ソート」を学習するのと同じか、それよりも理解度が高くなるという結果が得られました。

ARやVRを活用し、楽しみながらコンピュータサイエンスの基礎を学ぶ。情報科学教育の教材開発は、未来を生きる子どもたちがスムーズに学びを進めるための重要なファクターといえます。

CSアンプラグドで、ソーティング(並び替え)のアルゴリズムを学ぶ。実際に手を動かしながら、楽しく効果的に学べるのが特徴
開発したAR教材。専用の紙のカードをカメラで撮影すると、端末の画面上に仮想的な天秤とおもりが現れ、2つのおもりの重さ(データ)が比較できる

大人でも難しい内容が小学生でも理解可能に!?
仮想と現実、その両方で学ぶのが、未来の授業

直接目で見たり、手で触れて動かしたりすることができないことが多く、体験的に理解することが難しいコンピュータサイエンスの世界。その見えない部分を理解するために必要なのが、わかりやすく楽しみながら学べる教材です。難しい数式などを使わなくてもゲーム感覚で学習できたり、実際には見えない部分をAR/VR技術を使って見えるようにしたり、手で触れて動かせるようにしたり。学ぶ児童・生徒だけでなく、教える先生にとっても授業で活用しやすい教材が増えれば、授業のあり方が劇的に変わりそうです。

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