コーヒー好きが高じて、生豆を買って自分で焙煎するまでに。銀杏を炒る鍋を使ってガスコンロで焙煎。30分ほどかかりますが、豆がポンポンはぜる音を聞きながら無心になれる至福のときです。
2つ以上の異なる材料を組み合わせ、新たな特性を持たせた材料を複合材料といいます。軽くて丈夫なFRP(繊維強化プラスチック)も代表的な複合材料の一つです。
榎本研究室ではナノテクノロジーを使って新しい機能や特性を引き出すナノ複合材料(ナノコンポジット)をテーマに研究しています。
FRPは、樹脂に髪の毛よりも細い繊維を組み合わせた強く軽い材料です。ガラス繊維、炭素繊維など素材の開発で機能が向上し、産業分野に広く普及しています。ガラス繊維がミクロンサイズ(mm の1000分の1)だとすると、ナノコンポジットはそのさらに1000分の1であるナノサイズの成分を組み合わせた複合材料です。
たとえばその1つ、クレイナノコンポジットは、クレイ(粘土鉱物)のナノ粒子を高分子材料に均一に分散させることで、強度、難燃性、耐熱性、ガスバリア性などさまざまな機能を持たせたナノ複合材料。こうした機能が付加されたことによって、自動車部品、電子機器、包装材料など幅広い用途に活用されています。
粘土鉱物の粒子サイズはガラス繊維の10憶分の1という小ささ。混ぜる割合が少なくても多くの粒子が散らばり1個あたりの表面積も大きくなるため、材料の性質を大きく変化させることができます。
同じクレイの中でもモンモリロナイト(MMT)という鉱物は、厚さ1nm幅100nmの薄い層が板状に積み重なった構造を持っています。
榎本研究室では、この層と層の間で導電性高分子を重合させることで、電気の流れる新しいナノコンポジットを開発。層と層の間は非常に狭い空間になるため、通常空間の100倍近い導電性を持つ物質の合成が可能になります。この特性を活かした、金属より軽いのに金属と遜色のない導電性を持つ新しいナノコンポジットを開発し、現在、実用化に向けた調整を続けています。
この新素材の用途として考えられるのは、工業用インク。導電性のあるインクです。たとえば、薄いフィルムの上にインクジェット方式で電子回路が印刷できれば、薄くて軽く、自由に形を変えられる基盤が完成します。この特性を活かし、スマートフォンなど身近なエレクトロニクス機器への応用も期待できます。
複合材料は宇宙開発に欠かせない技術ですが、最近では軌道エレベーターのケーブル素材として注目もされています。軌道エレベーターとは、人工衛星の軌道あたりまで伸びるエレベーターのこと。このケーブルに必要な軽さと強さを持つ素材として、炭素系の複合材料の導入が検討されているのです。
軌道エレベーターを使って人やものを宇宙まで運ぶという構想から、プロジェクトは現在進行形。複合材料は、SFのような未来を現実にする魔法の技術といえそうです。
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