小さな分子がたくさんくっついて規則的な構造をしている分子を高分子と呼びます。身の回りの洋服やプラスチック製品、人間を含めた動植物も高分子でできています。
湯口研究室では、生物がつくる高分子「生体高分子」をターゲットに、分子の形や構造と機能の関係を探っています。
生体高分子の中でも湯口研究室が注目しているものの一つが多糖類です。
多糖類は、グルコース(ぶどう糖)などの単糖が長くつながった構造をもつ高分子。高分子特有の粘り気(粘性)などの性質を利用して、物質に一定の機能を持たせる添加物として利用されています。その働きには粘度を高める増粘、水分を保持したまま固まるゲル化、均一に混ざった状態を安定させる安定化などがあり、食品、化粧品、日用品、薬品、製紙、医療など幅広い分野で使われています。多糖類の原料となるのは、植物や微生物、海藻など。現在、さまざまな種類の多糖類が商品化されていますが、原料や種類によって性質は異なります。
湯口研究室では、多糖類の分子の構造や形を分析し性質との関係を解明しています。
数ある多糖類の中でも、特に海藻由来の多糖類については海外の大学とも積極的に共同研究を進めています。アルギン酸については、ノルウェー科学技術大学と共同でゲル化の分子構造を解析。フコイダンについてはベトナム科学技術アカデミーと共同で分子構造と生理活性との関連性について研究を進めています。
また、多糖類のゲル化も主な研究テーマの一つです。ゲルとは、ゼリーのように溶媒をたくさん含んでいるのに流れない状態のことで、まだ解明されていないことも多い現象です。
高分子がどのように集まってゲル化が起こるのか?固体や溶液中にある粒子が、ナノスケールでどのような構造の変化をもたらしているのか?湯口研究室では、その謎を解き明かすべく、外部研究機関にあるシンクロトロン放射光施設を活用し、分析を進めています。
増粘剤やゲル化剤の主要な用途の一つに、高齢者の誤嚥を防ぐ食品があります。液体は素早く喉に入って嚥下の力の衰えた方にはコントロールが難しいため、とろみをつけ、ゲルにして食品の塊をつくることでゆっくり飲み込めるようにします。
さらに、ゲルは生物に似たマテリアルとして、食品だけでなく医療材料などの分野からも注目されている素材。固体でも液体でもないゲルの解明が進めば、今後、想定外の分野でゲルの実用化が進むかもしれません。
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