言語学では、人間が使っていることばの規則や制約を明らかにし、ことばがなぜそのようになっているのかを説明します。
松本准教授は英語のコーパスを使って、言語現象を構造、意味、機能、および歴史的変化の観点から総合的に考察しています。
松本准教授が関心をもっているのは、1つの文の中に2つの動詞を含む複数動詞連鎖という現象です。中学校の英語で習う「動詞+動名詞」や「動詞+to不定詞」もその1つです。複数動詞連鎖は次の4つの型に分類できます。下線部が複数動詞連鎖です。
文の構造の観点から、英語では、原則として1つの動詞を含む文は単文、2つの動詞を含む文は複文になります。そのため、前述の4つの文は2つの動詞を含んだ複文です。
一方、複数動詞連鎖の中には、2つの動詞を含んでいるにも関わらず単文になっているものがあり、以下のように4つの型のすべてに存在することがわかりました。
これらの複数動詞連鎖は、動詞が2つあってもそれぞれは分けられず1つの動詞句を形成しているため、単文と考えられます。
松本准教授は、単文と複文という視点を持ち込むことで、それぞれの動詞の性質から複数動詞連鎖の性質を解明するのではなく、複数動詞連鎖自体の性質を解明したいと考えています。
松本准教授は、come と go の使い方を、構造、意味、機能、および歴史的変化の観点から総合的に考察しています。どちらも移動を表す動詞で、非常に使用頻度の高いおなじみの単語です。中でも「go+形容詞」の使用頻度の変化は興味深いものです。「go+形容詞」は多くの場合「~の状態になる」という意味を表します。The Corpus of Historical American English (COHA) というコーパスを用いると、20世紀に入り、「go+形容詞」の使用頻度が徐々に高くなっていることがわかります。
松本准教授はその理由の一つとして、20世紀に入り、政治、経済、技術など社会の変化が多くなり、それに伴い、変化を表す表現が増えていったことを指摘しています。具体的には、COHAに次のような例があります。下線部が「go+形容詞」です。
また、COHAを用いると、「go+形容詞」の使用頻度の面白い変化に気づくことができます。mad、crazy、wildなど、コントロールが難しい激しい感情の状態を表す形容詞に着目してみると、20世紀に入ってからは、人々が強い感情を表すのに既存の表現に満足しなくなり、より強い新たな表現を求める傾向を示していることがわかります。
ことばは生き物です。ことばが時間と共に変化していくことは、ある意味、自然なことです。ことばがどのような構造をしているのか、どのような意味を持っているのか、どのように使われているのか、どのように変化しているのかを探求することばの研究は、多様な分野と結びついています。
ことばに関心をもつことは、何かに興味を抱くきっかけ、別の言い方をすれば、新しい扉を開くきっかけになります。たくさんの新しい扉を開いていくことは、興味の幅が広がる楽しさを教えてくれます。そして、興味の幅広さは、あなたの人生を豊かにしてくれるはずです。
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