AONUMA Shuji
工学部 基礎理工学科 環境化学専攻 准教授
大学院 工学研究科 先端理工学コース 准教授
博士(工学)
京都大学
高性能二次電池用有機電極材料の分子設計と合成

休日には庭仕事を楽しんでいます。春先からじゃがいもの植え付け、初夏は小梅や南高梅の実を梅ジャムにしたり、玉ねぎやニンニクを収穫したりと忙しい季節。バラもたくさん育てています。

リチウムイオン二次電池に代わる
環境にやさしい新充電池開発に挑戦

スマートフォンやノートパソコン、電気自動車などに欠かせないリチウムイオン二次電池は、世界的に需要が急増しています。しかし、材料に希少金属を使うためコストがかかり、環境への負荷が大きいことが難点。
青沼研究室では、こうした課題に対応する高性能な電池の開発を進めています。

どこにでもある元素を使い 
もっと安く、高性能に

リチウムイオン二次電池は、その商用化に貢献した吉野彰博士がノーベル賞を受賞したことでも話題になりました。大容量の電力を蓄えられるのがメリットですが、材料としてコバルト、ニッケル、リチウムなど産地が限られる希少金属を使う点がネック。調達にエネルギーやコストがかかり、世界の政治経済の状況によって材料不足に陥るリスクもあります。

そこで青沼研究室では、地球上のどこにでもある炭素、水素、酸素などの元素で構成される有機化合物を使った二次電池を研究しています。リチウムイオン二次電池に比べてコストや環境負荷の低減が期待できる材料を使うだけでなく、より多くの電気を貯められる電池の開発を目指しています。

COCHILCOは、ロンドンのシンクタンクBMIのデータをもとに、国別リチウム生産量 (2022年見込み)を作成

容量が大きく充電スピードも速い
新電池を可能にする化合物を開発

ポイントは、有機化合物を電極に使うと電池の容量が増える可能性があることです。リチウムイオン二次電池の正極に使われる代表的な化合物としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)がありますが、LiCoO21個あたり電子1個しか出入りしません。有機化合物では、分子1個あたり多くの電子が出入りするものが多く、貯められる電気が多くなります。

また、充電や放電のスピードも上がることが期待されます。リチウムイオン二次電池では板状の結晶が層をなしている構造の物質を使うため、リチウムイオンが層の間に出入りするのに時間がかかりますが、有機分子は層状でないためイオンがスピーディに移動できます。

青沼研究室では、1分子あたり4電子の出入りが可能な化合物を合成。リチウムイオン二次電池に使うコバルト酸リチウムに比べ、2倍程度のエネルギーを貯められることを見出しました。

コバルト酸リチウムの充放電反応(一電子)と有機化合物の充放電反応(四電子の例)の比較(e- は電子を表す)
このグラフは、多電子酸化還元平衡が可能な有機二次電池の例 (右上へいくほど高容量)

青沼准教授は、レアメタルであるリチウムの代わりにナトリウムやマグネシウムなど資源豊富なメタルを用いた電池(ポストリチウムイオン二次電池)の開発にも取り組んでいます。また、コンピュータシミュレーションで動作電圧を正確に予測したり、充放電の特性を解析するほか、新しい有機分子の設計にも役立てています。

エコで環境にいい電池!?
ポリフェノールが電池になる

化学電池は、酸化還元反応によって電子がやり取りされる仕組みを使って、電気を貯めています。つまり、酸化還元反応が可能な物質であれば、電池の材料になりうる可能性があります。
そこで注目されているのが、抗酸化作用を持つポリフェノールです。ポリフェノールは、ほとんどの植物が持つ苦み、渋み、色素の成分。体内でつくり出される活性酸素を還元し、身体を酸化から守る働きを応用して電池がつくれたら。自然界に存在するポリフェノールを活用すれば、さらにエコな電池が誕生するかもしれません。

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