FUKAGAWA Ayako
建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 空間デザイン専攻 教授
修士(環境学) / 一級建築士
東京大学
建築設計 / 建築都市デザイン / 建築プロジェクトデザイン

六甲山はたまに登りますが、有馬方面におりてハイキングの締めに温泉とビールを楽しむことも。ここは本当にいろいろな登山ルートがあって、毎回違う風景が楽しめて飽きがこないのが良いところです。

人の暮らしと環境に
新しい豊かさと希望を提示する建築

少子高齢化が進み縮小する社会の中で、建築や都市空間が提供できるものは何か。
深川教授は建築家として創造してきた数々の作品を通して、地域の人々の暮らしに新しい豊かさや希望を提示し続けています。また、木造のビルに着目し、サステナブルな建築のあり方を考えています。

人口減少社会に新しい価値を
住民参加の建築プロジェクト

人口減少で労働力人口が減ると、サービスが十分に行き渡らなくなったり、経済成長が鈍化するといった社会にとってマイナスの影響が表れます。こうした課題に対し、町のあり方やシステムを変えていくことで、人口減少の中でも豊かで快適な暮らしを実現しようという取り組みが進んでいます。
深川教授は、公共建築での実績も多い建築家です。近年は、人口減少などの環境変化に合わせて公共施設の規模や機能を見直し、新たな価値を提案するプロジェクトを手がけることが増えています。その一つ、岡山県真庭市にある住民交流センターのリノベーションでは、既存の町民ホールの規模を縮小する代わりに、カフェや図書館を設けて地域の人たちの居場所や交流の場としての機能を持たせることを提案。縮小していく社会の中でも、人の暮らしの豊かさや楽しさをどのように維持・創造していくかを考え、形にした施設です。
このプロジェクトは、企画段階から住民が参加したことも特徴の一つです。施設の使い手が当初から深く関わりどう使うかを意識したことで、完成後、活発な施設の利用につながっているとか。図書館とカフェのコラボ企画や、外部空間も使って施設の魅力を十分に活用するイベントなど、まさに自分たちのものとして使いこなしているそうです。
深川教授は、こうした建築家としての実践を研究に活かしていきたいと考えています。「人の居る環境をつくる」建築や、まちづくりを通して何が創造できるかを追究。さらに、市民との協働など、効果を最大限に高める建築や都市のプロジェクト自体のデザインのあり方も検討していきたいと考えています。

既存のホールをリノベーションしたふれあいセンター (撮影)鈴木研一
ゆっくり過ごしたくなる図書館や, 地域の活動にも使える交流スペースを設えた.
地域の人たちと課題を共有し, 一緒につくるワークショップ(撮影)ofa

サスティナブルな環境をもたらす
木造のビルが見せる都市の風景とは!?

今、日本を含め世界中で、中・大規模の木造建築物が増えてきています。その理由の一つは、木造建物の建設技術の進化です。例えば建材ではCLTと呼ばれる木の繊維方向が直交するように重ねて強度を高めた、厚みのある大きな板状の材料が開発され、構造材として利用されるようになりました。また、燃えにくくする加工を施すなど耐火性能の高い木質材の開発も進んでいます。こうした技術の進化に対応して建築基準法による規定も合理化され、中・高層建物や住宅以外の建物にも木質の構造材を使いやすい環境が整ってきたのです。
高度経済成長期には全国で大規模な植林が行われましたが、その後、安価な輸入材に押されて国産材の需要は減少しました。木には伐採に適した時期があり、それを過ぎた木はCO2を吸収する力が衰え、老木が増えた山は保水力が弱まって災害の危険性も高まります。木を伐って、使って、植えるという森のサイクルをきちんと回すためにも、国産材の需要増を担う木の建築が、大きな注目を集めています。
深川教授は、これまでにもオフィスや公園施設など住宅以外の木造建築の設計を手がけてきました。その建築家としての感性で、都市の中に今後ますます増えていくであろう木造ビルに面白さを感じているといいます。木造の建物をどう活かすのか、木造のビルは町の風景をどう変えるのか。サスティナブルな地球環境に貢献する木造建築のデザインは、今後も研究を続けていきたいテーマです。

六甲最高峰の国立公園エリアに建つ, ここならではの環境と建築の融合をめざしたレストスペース (撮影)小川重雄
木の大きな版であるCLTを活用した金融機関のオフィス(撮影)鈴木研一
設計コンセプト:ofa 

木造のビルの親しみと温もりが
人とまち、人と人との関係を変える!?

都市空間や建築物は、人のいる空間をデザインしたもの。居心地のよさや、人と人との関係性、安心や安全など、実現させたい暮らしをデザインする作り手。そこに使い手が参加することで、空間と人はもっと近づき、暮らしはもっと楽しくなるのかもしれません。
都市に木でできたビルが増え、鉄筋コンクリートのビルにはない親しみや温もりがあふれることで、人がまちに期待するものも変わってくるかも。これからの都市の変化が楽しみです。

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