YAMAMOTO Shohei
工学部 機械工学科 講師
大学院 工学研究科 制御機械工学コース 講師
博士(工学)
長崎大学
燃焼 / 微粒化 / 伝熱(高圧水素燃焼、すす生成、ディーゼル噴霧、ガスタービン翼冷却など)
researchmap◀ 詳しい研究内容はこちら

野球部員だった中学時代から筋トレを開始。現在も週に1〜2回は1時間のメニューをこなしています。バッティングセンターなら今でも130km/hの球を打ちます。昼食は何年もカロリーメイトと決めていて、理想体重をキープしています。

燃焼の方法と燃料の検討から
有効かつ安全なエネルギー利用を研究

飛行機・自動車・トラック・船舶など多くの輸送機関は、ジェット燃料・ガソリン・軽油などの燃料を使って動きます。限られた資源を最大限に有効に使いつつ、環境への負荷をできるだけ少なくすることが求められる現在。
山本研究室では、燃料を「どう燃やすか」と「どんな燃料がふさわしいか」の2つの方向から研究に取り組んでいます。

燃料を効率的に、安全に使いきる! 
燃料噴射で生じる「渦の制御」をシミュレーション

船舶や大型トラックなどの輸送機関には、燃費と加速力に優れたディーゼルエンジンが多く使われています。ディーゼルエンジンは、シリンダ内で圧縮され高温になった空気に燃料を噴射し、自然発火による燃焼(爆発)を起こしてピストンを動かす仕組みです。

噴射された燃料は、周囲の空気を取り込みながら燃焼するのですが、空気を取り込む量によって燃料の濃度が変わります。空気が少なすぎると不完全燃焼となり、ススが発生。逆に、燃料の方が少なすぎると窒素酸化物が燃え残ります。いずれにしても有害排気物質が出てしまいます。燃料を効率的に安全に使いきるには、シリンダ内の状態を「燃料がよく燃え、かつ、ススも出ない最適な濃度」に保つことが必要です。

このシリンダ内の燃料と空気の濃度の最適化を図るひとつの方法として、山本研究室が注目しているのが「ヘアピン渦」です。「ヘアピン渦」とは、燃料が噴射された際、その周囲に発生するヘアピン状に曲がった小さな渦のこと。この渦は無数に発生し、周囲の空気を取り込んだり放出したりしています。

山本講師はこの渦の大きさやスピン速度を制御できれば、燃料の濃度をコントロールできるのではないかと考えています。そこで噴射される液体の噴射速度を脈動化することで、噴霧した液滴がどのように分布するか、またどんな形に分裂するのかをシミュレーション。実験装置で計測したデータと比較しながら、より実測に近いモデルの構築を摸索中です。

左)動画は燃料の噴射によって生じる渦のシミュレーション結果。
右)上のグラフはシミュレーション時の燃料の噴射速度波形。
右)下の図は、燃料蒸気濃度分布。
左の動画からは脈動によって渦が変化しているかわかりにくいが、右下のグラフが示すように、燃料の噴射速度を脈動させることで燃料濃度の分布が変化(脈動波形は、噴霧軸近くは濃度が増加、遠くは濃度が低下)していることがわかる。
噴霧内部液滴分裂現象の解明
シミュレーションで実際の燃料噴霧を再現するためには、燃料がどのように分裂しているのかを再現する分裂モデルが必要になる。分裂モデルの多くは真ん中の図が示すように、燃料表面に生じる波の波長と調整定数の積によって分裂後のサイズが決まる。実際の燃料噴霧内部の液滴サイズの分布を再現するように(右上グラフ)、調整定数を決める(右下グラフ)ことで、実際の噴霧をシミュレーションでよりよく再現しようと試みている

評価試験の実施環境を
使用条件に近い状態で調査・検証

また燃料そのものの質を探るというアプローチで、ススのできやすさを評価する試験方法についても研究しています。

現在、ススのできやすさは「JIS K 2537:2015 石油製品─煙点の求め方」と呼ばれる規格に基づいた試験で評価されています。これは航空機のジェット燃料の評価にも使われる試験方法です。煙点試験器の中で燃料を燃焼させ、その炎の高さが一定以上であれば、ススのできにくい良質な燃料として認められます。

しかし、現状の試験法は、私たちの日常空間と同じ酸素濃度が21Vol%の大気中で行われており、実際に燃料を燃やす燃焼器内部の環境とは大きく異なります。燃焼器内部では(二酸化炭素と水を多く含む)燃焼ガスの一部が環流されるため、酸素濃度は21Vol%よりも低いというのが実状です。

そこで、山本講師は低酸素環境でススが生成される指標にどのような変化があるかを調査。更に、できたススの量と指標にどのような相関性があるのかについても調べています。

「燃料の燃焼のしかたを制御するための研究」と「燃料そのものの質を分析するための研究」。山本講師の研究テーマは、いずれも基礎研究といわれる分野。現在、収集しているシミュレーションや実測データとの検証プロセスから、近い将来、地球環境により優しい燃料の利用方法が誕生するかもしれません。

実燃焼場に適合したスス生成指標の確立
低酸素環境場での指標の変化とススの生成量と指標の関連を調査

カーボンニュートラルだけじゃない
ものづくり文化を継承する場が重要

現在、持続可能な社会をめざして、温室効果ガスを削減する「カーボンニュートラル」への意識が高まっています。燃料を燃やす際に温室効果ガスが出てしまうことは避けられませんが、有害物質を出さないことも重要なこと。
社会に欠かせない飛行機・船舶・大型トラックが今よりパワフルでクリーンになる日は、意外に近いかもしれません。

お問い合わせ

各種取材や研究に関することなど、
お気軽にお問い合わせください