YAMAMOTO Takehiro
工学部 機械工学科 教授
大学院 工学研究科 制御機械工学コース 教授
博士(工学)
大阪大学
複雑流体の流動解析
researchmap◀ 詳しい研究内容はこちら

カメラとスポーツ観戦が好きなので、スポーツ写真を撮るのが趣味です。以前はモータースポーツやサッカーなどのプロスポーツが被写体でしたが、今は息子のミニバスケットボール。クラブチームの専属カメラマンさながら、試合に帯同中です。

シリコン、鳥の群れ、富士山の共通点? 
固体でも液体でもない「複雑流体」とは

ドロドロ、ネバネバ、プルプル……。こんな形状や感触のものは、身のまわりにもたくさんありますが、その状態を正確に説明したり予測したりすることは、実はかなり難しく、かつ社会のさまざまな場面で求められています。
山本研究室では、実験やシミュレーションを行い、「複雑流体」のふるまいのメカニズム解明をめざしています。

プラスチック製品から化粧品、日用品まで、
身近な製品は「複雑流体」からできている!?

物質には固体・液体・気体の3つの状態があります。固体は一定の形を保ちますが、液体と気体には決まった形はなく、自由に形を変えられます。この状態を「流体」と呼びます。同じ流体でも、たとえば水は水分子で構成されています。ところが、流体内部に原子・分子スケールより大きな構造を持つものがあり、これを複雑流体といいます。

複雑流体の中に分散している内部構造とは、高分子の絡み合い構造、洗剤等の界面活性剤がつくるミセル、分子や粒子の配向構造他さまざま。これらを含んだ複雑流体がプラスチック製品、液晶、洗剤、塗料、食品、化粧品などの原料となるのです。

複雑流体は、水や空気といった一般的な流体とは流れ方が異なり、物質の特性が複雑に変化します。たとえば「シリーパティー」という粘土のようなおもちゃは、シリコン系の高分子が主成分の複雑流体です。丸めて床に落とすとボールのように跳ね返り、弾性を持つ固体のようにふるまいます。けれども、手で左右に引っ張ると伸びた部分が液体のように下に流れ、粘性を持つ流体のようにふるまいます。

このような複雑流体の物質の特性は、まだあまり明らかになっていません。しかし、複雑流体を原材料とする多くの工業製品は、機能性材料を含んだ複雑流体を型に流し込んで成形したり、物体の表面をコーティングしたりして作られています。効率的に生産を行い、求める機能を発揮するには、複雑流体が成形中にどのように流れるのかを把握することがとても重要です。

実験とシミュレーションの両方からアプローチ! 
複雑流体モデルの設計をめざす

山本研究室では、この複雑流体の特性を解明するべく、実験と数値シミュレーションの両方から研究に取り組んでいます。

実験では、複雑流体がどれくらいの速さでどんな応力で流れるのかを回転式レオメータで計測し、データを取得。また、複雑流体がどのように伸びるかを計測するための機器も独自制作し、実験を実施。いずれの実験データからも、水や空気とは異なる複雑流体特有の特性を表す結果が得られました。

複雑流体が特徴的な流れ方をするのは、原子・分子スケールより大きな内部構造を持っているため。そこで内部構造のスケールに合わせた粒子を仮想的に設定し、数値シミュレーションで流路内の流れを解析。この粒子はディスク型・ビーズ型・棒状など、複雑性流体の種類によって異なります。山本教授は、この解析結果に基づき、実験とシミュレーションをつなぐ複雑流体モデルの設計をめざしています。

自然界で言えば、一見動くことのない大きな山も、何千年という長い時間スケールで見れば、自然災害や地殻活動によってなだらかに形を変える複雑流体。世界を複雑流体という視点で見つめ直すと、さまざまな課題を解決するヒントが潜んでいるかもしれません。

左)ポリマー/クレイ系粒子分散系のブラウン動力学シミュレーション
右)星形高分子のMulti-Particle Collision Dynamics (MPCD)シミュレーション
高分子流体の流路内流れの解析

周囲の環境に合わせて自ら変化!?
新しい複雑流体の開発で世界が変わる

山本教授が今、注目しているのは藻類が生息する水や、鳥や魚の群れの動き。
たとえば、微細藻類には水の中を光に向かって動く性質(走光性)があります。この、外部からの刺激で運動する性質(走性)を内部構造に持つ、新しい複雑流体の開発。完成すれば、周囲の環境に併せて自ら変化する自己制御機能付きの複雑流体が誕生します。具体的にどんなものが考えられるのかは、現在アイデアを募集中!斬新な発想が浮かんだら、ぜひご連絡ください。

お問い合わせ

各種取材や研究に関することなど、
お気軽にお問い合わせください