IOKA Seiji
工学部 機械工学科 教授
大学院 工学研究科 制御機械工学コース 教授
博士(工学)
大阪大学
機械・構造物の強度評価・健全性維持に関する研究

リフレッシュ法はプラモデル製作です。これまで数多くのガンダムシリーズや軍艦等に挑戦してきました。一番の大作は全長70㎝の戦艦大和で、製作期間は足かけ5年。ゲームも好きで、新作が出ると時間を忘れて没頭してしまいます。

機械や建造物の破壊を防ぐのに不可欠!
「破壊力学」で安全性を追究する

私たち人間は、さまざまな人工物を自ら作り、活用することで便利で快適な生活を送っています。だからこそ、人工物が破損する恐れがあるかどうかを知ることはとても重要です。
井岡教授の専門分野は、物に力がどう働くか、それが壊れることにどう繋がるかを追究する破壊力学です。研究室では半導体からプラントまで幅広い人工物を研究対象としています。

“壊れにくい”構造を作るために
異なる材料の組み合わせの最適化を研究

船・航空機・自動車などには、強度を向上させたり軽量化を図ったりするために、接合材料複合材料が多く取り入れられています。また、電子機器などには半導体素子を基盤に固定するためにはんだ接合が使われます。これらはいずれも、異なる材料同士が接合する面=接合界面が生じます。こうした構造を壊れにくくするためには、必要な強度を持つように部材を設計し、それに対応する強い材料を使用する必要があります。

ところが、問題点があります。ひとつは「界面端特異応力場」と呼ばれるもので、理論上は、どんなに接合材料にかかる力が小さくても、接合界面端の応力が無限大となり、接合界面は壊れる計算になってしまうことです。実際に応力が無限大になることはありませんが、応力で強度を評価することが難しくなります。

もうひとつは、熱応力の問題です。材料は温度が高くなると膨張します。接合材料では材料ごとに膨張のしかたが異なるので接合界面で変形にギャップが生じ、熱応力が発生します。電子デバイスに電流が流れて熱が発生すると、材料ごとに膨張のしかたが異なるため、デバイスが壊れてしまいます。

そこで井岡教授は、異種接合材の接合界面端での応力に着目し、界面端特異性を消失させ、応力以外に強度評価の指標を摸索したり、熱応力の違いを解決したりする研究に取り組んでいます。この研究がさらに進めば、セラミックの耐摩耗性と金属のしなやかさを合わせ持つ、これまでにない強い材料が誕生するかもしれません。

異なる材料を接合すると、材料の境目に接合界面が生じる。接合材料の強度上の問題の多くは接合界面で発生する
異種接合材の接合界面端やき裂の先端には理論上応力が無限大となる特異応力場が生じる。応力が大きくなるので破壊の起点となる

工場やビル、橋と老朽化が進む日本の建造物 
逆問題で“壊れやすさ”を知り、安全を確保する

日本は戦後の高度経済成長期に、さまざまなインフラが整備され、多くの建造物が建てられてきました。現在、それらの建造物が寿命とされる約50年を迎えています。しかし築年数が50年を超えたからといって、いきなり全ての建造物を建て替えることはできません。まずは建造物をモニタリングして、欠陥部分や修理-交換の必要な部分を特定し、その上で使い続けられる状態かどうかを評価-対策を取ることが現実的です。

井岡教授は、この機械・建造物のモニタリングに関連して「逆問題」を使って変位・ひずみ・温度分布などを推定する研究を行っています。原因から結果を求める問題を順問題と呼び、結果から原因を推定する、あるいは原因と結果がどのような関係にあるかを推定する問題を逆問題と呼びます。逆問題の考え方を用いると、たとえば機械の外側で計測される変形の情報から機械の内部でどのような力が作用しているのかを推定することが可能となります。たとえば、物体と物体が接触している面やプラント内で高温流体が流れているパイプの内側など、センサを付けることができない場合、この逆問題によるモニタリングが有効です。

また研究室では、この逆問題を活用し、歩行や義足などの動作分析に使われる「フォースプレート」を開発。プレートの4つのポイントにセンサを取り付け、得られたデータを解析することで、市販品よりはるかに安価に歩行評価を行えるプレートを開発しています。

卒業研究で作成したフォースプレート。板の上を歩いたときに4つの脚に作用する力を測定し、その結果から歩行者の重心がどの位置にあるのかを求めることができる

定期点検ではなく24時間チェック!
欠陥検出は自動モニタリングシステムで

現在、機械・建造物の欠陥検出は主に定期点検によって行われていますが、機械や建造物に装着して常に欠陥を自動でモニタリングするデバイスがあれば、建造物の変化をいち早く確認することができます。
修理や交換の必要性を判断するなら、まずはモニタリングから。普及すれば機械・建造物の安全性がさらに高くなりそうです。

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