エアコンが室内の温度を一定に保ったり、お掃除ロボットが何かにぶつかった途端に方向を変えたり、自動運転車が衝突を避けたり…。すべては制御の技術が働いているおかげです。
伊藤研究室では制御工学の理論や制御手法を応用し、学生が自分たちのやってみたい制御に挑戦しています。
研究室で取り組んでいるテーマの一つが、ドローンの自動制御です。
ドローンが自ら位置を把握し目標地点に着陸させる研究では、ドローンに搭載したカメラによる視覚情報を利用。画像処理によって目標地と現在地の誤差を認識させ、移動距離や速度を決めます。
また、同様の仕組みを利用して、移動する物体をドローンに自動で追跡させる研究もあります。対象物中にある赤色の領域を認識させ、追跡対象までの距離が遠いと前進、距離が近いと後退させて衝突を避けながら追跡させるという原理です。
ドローンの操縦を簡単にする制御に取り組む学生もいます。赤い手袋をはめた手の動きで、離陸、着陸、左右への移動など自在にドローンを動かそうというもので、画像処理によってノイズを除去し、手の動きを正確に検出できるようにしています。
また「あったら便利」の視点から、制御技術を統合し、組み上げてゆくものづくりにも挑戦しています。
2020年から続いたコロナ禍では、入退室管理システムを開発。このシステムには、室内が過密にならないよう、あらかじめ登録しておいた人の情報をカードリーダーで認証して開錠し、全員が退出した後に自動で消灯するといった機能があります。鍵の制御、電灯スイッチを動かすサーボモータの制御、機器間の通信制御などを統合しています。これは装置に行わせる動作とその順序を記憶させて、一連の動作を行わせるシーケンス制御という手法を学んで組み上げたシステムです。
さらに現実世界と仮想世界がより融合して見える新しいAR デバイスを製作する取り組みにも挑戦中。左目で現実世界を見つつ、右目の眼前に設置した小さなモニターで仮想世界を同時に見る仕掛け。顔の向きを変えても定位置に仮想世界が表示されるのではなく、本当に目の前に何かがいるように、顔の向きに応じた自然な表示をめざしているところもポイントです。
ものを思い通りに動かす制御技術は、制御理論に支えられています。ものの動きや外から与えられる力の影響などを数式でモデル化し、理想の動きをさせるための条件や手法などの法則を導いてきました。特に1980年代からは実用的な理論が生まれ、制御工学が急速に発展しました。
制御は今や、経済学や生命科学、環境などの分野でも注目されています。今後は、社会を便利にするだけでなく、幸福を感じるための制御が注目されるかもしれません。
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