NAKASE Yasunobu
工学部 電気電子工学科 教授
大学院 工学研究科 電子通信工学コース 教授
博士(工学)
大阪大学
低電力集積回路設計

もともと回路は苦手で、宇宙を数式で表現することにあこがれて、大学では物理を専攻しました。面白いことに、今は電子回路を研究しています。

農業や養鶏をもっとスマートに! 
電圧変換回路(コンバータ)のアナログ回路を設計

スマホなどの電子機器に与える電源電圧は、動作状況により適切に調整することで、電池を長持ちさせることができます。ある直流電圧を他の直流電圧に変換するものをDC-DCコンバータといいます。
中瀬研究室では、近年多数開発されている小電力用のDC-DCコンバータに注目し、コンピュータを使った集積回路のアナログ回路設計に取り組んでいます。

連続的なアナログと離散的なデジタル 
情報には2通りの表し方がある

光・音・温度・圧力など、自然界の現象は全て「連続的」なアナログです。かつてはアナログの情報はアナログのまま処理していました。たとえば、テレビの映像は連続した電圧値(アナログ値)に変換されビデオテープに録画されました。アナログ値には雑音(ノイズ)がもともと混入しているため、データをコピーをしたり、送信したりすると雑音成分が増幅され、画質や音質が劣化していきます。

一方、デジタルの情報は「離散的」で、一定の境界値を基準に1か0かに分類します。このとき、人間が捉えられない色調や音の周波数を省くことでノイズ成分を除去できるため、情報の劣化は起こりません。また、デジタル信号に変換することでネットワーク上でやりとりしやすいというメリットもあります。

デジタル信号に変換した後は、デジタル回路により、データ量の圧縮/伸長などさまざまな処理を行うことができます。デジタル処理は、多数のトランジスタで構成される集積回路(Integrated Circuit=IC)により実現されています。最近では技術の発達により1cm角の大きさに100億のトランジスタが入った集積回路を作ることが可能となったため、私たちはスマホで動画やゲームを楽しむことができるのです。このような大規模な集積回路の設計は1名では無理で、数10名で設計されます。

一方、アナログ回路はデジタル回路比べてはるかに少ないトランジスタ数で設計できます。中瀬研究室では、直流電圧を他の直流電圧に変換するDC-DCコンバータを題材に幅広い条件で安定動作するフィードバック制御回路の実現をめざしています。

アナログ回路とデジタル回路の違い

農場モニタリングや鳥インフルのチェックに! 
DC-DCコンバータが省エネと自動化をサポート

DC-DCコンバータは、モータ制御などの大電力変換に用いられてきましたが、近年では集積回路の電源供給用として数ボルトで動作する小電力コンバータが多数開発されています。

中瀬教授は、時代のニーズに応じた小電力DC-DCコンバータの応用シーンを設定し、研究室ではその実現に向けたアナログ回路設計に取り組んでいます。

たとえば、農場のいくつかのポイントに気温・湿度・降雨量などをモニタリングするデバイスがあれば農場運営をする上でとても便利です。しかし、その電源が電池であれば交換の手間がかかってしまいます。そこで太陽電池にすればメンテナンスフリーですが、曇天時や夕暮れ時の太陽電池の電圧は0.5Vまで低下します。その場合、集積回路が動作する3Vに変換する必要があり、DC-DCコンバータが必要になります。

また、近年注目されている鳥インフルエンザの早期発見ために、ニワトリの羽に体温計と発信機を付けて体温をチェックするデバイスが提案されています。このデバイスも電池不要で動作すれば便利です。そのためニワトリの羽ばたきで発電させ、その電圧をDC-DCコンバータで適度な電圧に変換する必要があります。

こうしたアナログ回路の設計には、半導体に関する知識や制御理論、情報処理に関するスキルが必要です。さらにアナログ回路もその制御部分にデジタル回路を用います。デジタル回路の設計には、機能のプログラムを書くと自動的にトランジスタレベルに変換する方式が主流になっており、その動作もコンピュータで評価します。アナログ回路とデジタル回路の両方が設計できる未来の回路設計エンジニアを、今、中瀬研究室でスキルアップ中です。

気象データを積極的に使うことで農業効率を改善
電池不要の小型体温計による鶏の健康管理への応用
鶏の運動で発電する発電機、温度センサ、制御用プロセッサ、無線通信機およびDC-DCコンバータで構成される

半導体×AIでICチップが脳に!?
ロボットが人に代わって大活躍

半導体とAIを組み合わせ、機械学習で神経と同じ動きをするICチップができれば、それはほぼ「脳」。状況に応じて適切な行動ができるようになります。
バイタルチェックのみならず、顔色や対話から健康状態を判断したり、歩行や移動を物理的にサポートしたりする介護ロボットの実用化は、この「脳」の開発によって近づいてきそうです。

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