地震大国日本では、高い耐震性をもつ建築技術の研究が進んでいます。
辻研究室のテーマは、「ハイブリッド」をキーワードにした耐震性能向上技術です。いくつかの技術を組み合わせることで弱点をなくし性能を向上させるハイブリッド技術で、「安全・安心」を実現する耐震性能向上技術を追究しています。
地震などの揺れに強い建物の構造としてよく知られているのが、免震構造と制震構造です。免震は建物に揺れを伝えにくくし、制震は建物に伝わった揺れを吸収する仕組みです。免震構造は地面がいきなり動くようなパルス性の地震動に強いものの、ゆっくりした揺れが長く続く長周期長時間地震動には弱いという特徴があります。逆に、制震構造はパルス性地震動が苦手で長周期長時間地震動は得意という特徴があります。
辻研究室では、それぞれの不得意な部分を補うハイブリッド免制震構造の高性能化を研究しています。その一つとして、免震構造の一つで塔頂から吊り下げるタイプのやじろべえ型免震建物を、一般の耐震建物と制振装置(ダンパー)でつなぐというハイブリッド構造の研究も行っています。
辻研究室では、耐震補強についてもハイブリッド技術でより高い性能を求める研究を行っています。
たとえば、木造建物の耐震補強もその一つ。木材には地震などでその性能を失うような大きな損傷を受けても、見た目はほとんど変わらないという特徴があります。この損傷部分を補修によって元の耐震性能まで回復できれば、建築の長寿命化につながります。
さらに、この損傷した木造建築の効果的な補修方法についても研究しています。実験では意図的に損傷させた木材に各種の補修を施し、万能試験機でどこまでの力に耐えるのかを調べます。単に耐震性能だけでなく、美観や環境への負荷のほか、元の状態に復元(回復)することが必要な文化財に使えるかどうかなど、さまざまな課題を解決する補修法の開発を目指しています。
耐震構造は、場合によって非常に揺れを感じる建物になることがあります。地震や台風でも壊れなければ人々の「安全」は守れます。でもグラグラ揺れれば人は不安になり、「安心」にはつながらないこともあります。
ハイブリッド構造は「安全」も「安心」も両方追究する技術。研究が進んでさまざまなハイブリッド構造が世の中で広く使われるようになれば、コストも下がり、人々が自分の好みや感じ方によって耐震スタイルを選べる時代がやってくるでしょう。
各種取材や研究に関することなど、
お気軽にお問い合わせください