北尾准教授は、建築構造の専門家。鉄骨造や木造の骨組の解析や木造住宅の耐震補強、制震・免震建物の構造解析をテーマに研究してきました。建物の挙動について、コンピュータを使った数値解析やシミュレーションだけでなく、模型を使った実験によっても確かめています。
建物の挙動を理解することによって、地震に強い構造設計が可能になります。地震のエネルギーを建物の土台部分で吸収しわざと大きく変形させることで、振動の影響が上部構造へ及ぶのを抑える免震構造もその一つです。
北尾准教授は免震・制震構造に最適設計の概念を導入し、特定の条件や制約のもとで最も優れた性能を発揮する免震装置や制震装置の設置の仕方をシミュレーションする研究も行っています。病院や学校などは建物内にいる人の命を守るだけでなく、被災後も建物の機能を確保するワンランク上の耐震性能が要求されます。建築物の使用目的に合致し、コストやデザイン面などの要求にギリギリまで応える構造の最適設計は、今後ますます求められそうです。
北尾研究室では建物の振動現象を、実験的に再現する研究を行っています。コンピュータによる解析でもシミュレーションできますが、アナログな手法での実験には、体感的に学べるというメリットがあります。建物の動きを目の当たりにすることで振動現象が建物に与えるダメージを実感として学べるのです。
模型実験では、実際の建築物では肉眼で確認できない変形や変位などの現象を、目で見えるようにした専用の模型を使用。階数、平面の形状、筋交いの配置などを変えたさまざまな建物モデルを組み立て、短周期地震動の兵庫県南部地震(JMA 神戸)と長周期地震動の東北地方太平洋沖地震(築舘)の地震波を振動台で再現させる振動実験を実施しました。
今後は、免震装置を用いることによって倒壊が防げるか、接合方法を変えるとどうなるのかなどの実験もさらに継続していくそうです。
1000m超級のビル、海底都市や海の上に浮かぶ浮上都市の建設―。人類はいつも新しい挑戦に向けて、建築技術を進化させてきました。耐震技術もその一つ。
たとえば超高層化に対応してさまざまな新しい耐震システムが研究され、実用化が進められています。建物は簡単に取り壊すことができないだけに、メンテナンス・補修の技術も同時に進んでいかなければなりません。これからどんな構造の建物が登場してくるのか、大いに楽しみです。
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