趣味はゴルフと文楽鑑賞。文楽は、まるで人形が人形遣いを動かしているかのような繊細な動きに毎回魅了されています。季節を感じるにはグレゴリオ暦よりも旧暦がしっくりくるので、研究室のカレンダーも旧暦表記のものを愛用しています。
「何を建てるか=WHAT」と「どう建てるか=HOW」が建築の2つの側面です。建築産業で多くの人が関わり、多くの時間を費やし、多領域を含むのが、HOWを担う生産技術と建築生産マネジメント。
髙畑研究室は、この分野を専門的に研究できる唯一の研究室です。
「もうすぐ完成かな?」と建築現場を通り過ぎる時にビルを見上げることがありますが、実はこの現場は、全てが緻密に計算された「生産技術」で成り立っています。限られた予算と時間で建築物を完成・維持するためには、Q=品質(Quality)、C=原価(Cost)、D=工期(Delivery)、S=安全(Safety)、E=環境(Environment)を管理し、最適化する必要があります。具体的には、現場事務所の設置場所・材料の搬出入・クレーンの有無・導入する技術などを検討し、可能な限り短期で・安全に・スムーズに工事が進むスケジュールを立案し、情報の共有を行います。
髙畑教授はこの生産技術のチーフとして、大手ゼネコンでさまざまな建設に携わってきました。たとえば新梅田シティの空中庭園を地上で組立てた後、地上170mにリフトアップし設置する工法で、作業環境の安全を確保。また新神戸国際会館の建設を構造特長別のエリアに分けて進めることで、工期を短縮。銀行の営業を止めることなく免震工事を行うなど、誰もが目にした事があるような建築物に数多くの実績があります。
生産は、かつては施工と呼ばれ設計と切り離されていました。しかしBIMの普及によって設計段階や竣工後の管理にも生産技術を組み込んでいくケースが増え、その領域は拡大しています。
しかし、どれだけ綿密に計画しても、現場では想定外の出来事が発生します。物理的事案・人間関係・社会的影響など、さまざまなリスクを事前に予測し対処法を準備しておく、それが、建築生産マネジメントです。
髙畑研究室では、生産(生産技術と建築生産マネジメント)を研究の柱としています。建築の効率化を実現することで、建築の案件は増えているのに人手不足という日本の建築業界のジレンマ解消にも貢献する領域です。もし、準備→工事→使用という時間軸と、部品→プロジェクト→エリアという空間軸でこの領域をとらえることができたなら、全生活空間を包括することができます。俯瞰的に建築を捉えられれば、理解が深まるだけでなく、建築における自分の得意分野が必ず見えてきます。
建築の効率化は、全てを自動化・機械化することではありません。現場への材料の運搬・撤収を効率化することで、職人は作業のみに集中する時間が増え、技量を発揮しやすい環境が整います。
古代ローマ時代の建築家ヴィトルヴィウスの『建築は、firmitas(強さ)、utilltas(用)、venustas(美)の理が保たれるように造られるべきである』という言葉は、彼の生きた時代から現在に至るまで建築における重要な条件となっています。効率化は、今やこの建築の3要素である「用」「強」だけでなく、「美」をも引き出す技術となっているのです。
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