自動車を自動で運転するクルーズコントロールやエレベータや家電製品などの機械のさまざまな動きを一定のルールに基づいて自動的に動作するようコントロールするメカトロニクス(制御工学)。
入部研究室では、このメカトロニクスに「ものづくり」を組み合わせ、人に寄り添うロボットや壮大な宇宙探査の技術開発に挑んでいます。
肺の機能が衰えた患者さんに充実した日々を過ごしてもらうため、入部教授が開発しているのが呼吸器疾患の方向けの移動支援ロボットです。
肺(呼吸器)は人間の生命活動に直結する臓器。COPDや肺癌、間質性肺炎などによって呼吸機能が低下し、病状が悪化した患者さんは、やがて低酸素状態が続くようになり、最終的には自宅で暮らしながら酸素吸入を続ける「在宅酸素療法」に移行していきます。
在宅酸素療法を行っている患者さんにとって、日々の散歩や日常のちょっとした外出は、体力を維持するための運動なだけでなく、生きる楽しみの1つ。しかし、この時使用する「小型の携帯酸素用ボンベ」は重く、市販の酸素ボンベキャリー(以下、ボンベカート)については患者さんへのアンケートで「使い勝手が悪い」という回答が多くありました。
患者さんの会を通じて、ボンベカートの取り回しについて知った入部教授は、患者さんのストレスとなっているボンベカートの不便さを、ロボット技術で支援できればと開発に挑戦。動力学シミュレータを使い、段差を乗り越え、坂道を上るのに必要な車輪の大きさや質量、配置を検討。前押し・並行・後ろに引くタイプなど、東京工業大学と共同でさまざまな形態を試作し、誰もが使いやすいボンベカートを目指しました。
試作を繰り返し、工夫を重ねても思うような結果が得られずにいた時、入部研究室のサイトにこの研究を知った一人の患者さんから「私のために作ってほしい」という依頼が届きます。そこで、依頼者の愛用するキャリーバッグをベースにボンベカートの仕様を変更。依頼者の体格に合わせて細かく調整し、オーダーメイドのカートを完成させます。
この、たった一人のために制作したオーダーメイドのボンベカートは、その後ほかの多くの患者さん達から「とても使いやすい!」と高い評価を得ます。入部教授は、この時から「究極のグローバリゼーションとは、究極のローカライゼーションである」という考えを胸に、ものづくりに向き合っています。
海があり生命体がいる地球のような惑星は、宇宙にはたくさん存在すると考えられています。この、宇宙における生命の研究。太陽系外惑星の探査を目的のひとつとする「せいめい望遠鏡」(京都大学大学院 理学研究科付属 岡山天文台)。入部教授は、この望遠鏡に搭載するための「太陽系外惑星撮像装置」の開発に取り組んでいます。
そもそも地球のような惑星と恒星の一番の違いは、恒星は自ら光や熱を発生させる星だということです。広遠な宇宙空間を越えて届く恒星の輝きに比べ、太陽系外に存在する惑星の光はごくささやか。その光を正確に判別して測定するべく搭載されるのが「補償光学」の技術です。
入部教授は、京都大学と共同で「せいめい望遠鏡」がとらえた大気の歪みをリアルタイムで測定・補正する制御システムを開発。完成したシステムは、548個の波面センサで測定した大気の歪みをリアルタイムで補正し、492個の可変形鏡が表面形状を高速で動作することで、惑星の姿をシャープに検出させます。現在、恒星の光を除去するため、入部教授はより精度の高いプログラムを開発中です。
入部研究室では、歩行ロボットなどメカトロニクス研究の実際をFacebookページで公開中。
たとえば、ロボットにはない動きのひとつ「肩の動き」をモーションキャプチャーで取り込み、上半身の動きをリアルに再現するロボットを開発。また、環境の変化に応じて歩幅を調節できる「適応的なふるまい」を行うロボットも実作しています。
こうした実験の積み重ねから、人間に近い動きが実装化されます。動きだけでなく受け答えも含め“より人間に近いロボット”の誕生は、意外に近いのかも知れません。
各種取材や研究に関することなど、
お気軽にお問い合わせください