TANAKA Hiroaki
工学部 電子機械工学科 教授
大学院 工学研究科 制御機械工学コース 教授
工学博士
大阪大学
超精密加工に関する研究
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モノづくりが好きなので、研究=趣味と言っても過言ではなく、例えば、炭素材料の研究から端を発し、グラファイト(黒鉛)の結晶構造である六角形で構成された球体などを多く造っています。

数値計算・3Dプリンタ・レゴなど
多彩な手法でメカニズムを可視化

私たちの身のまわりにあるさまざまなモノ。その形や動きは実にユニークですが、背景には必ず物理や数学の理論があります。
田中研究室は、面白い動きや不思議な造形をしたモノの機構=メカニズムを解き明かしながら、そのモノを設計し実際に作る「モノづくり」の研究室です。

6000連の振り子の動きをシミュレーション! 
3Dプリンタでパーツを作り、立体造形に

振り子とは、支点から吊るされ、重力の作用によって揺れを繰り返す物体のこと。ブランコや振り子時計などは、振り子になります。誰もが目にし、知っているように、左右に周期的に動きます。ところが、振り子を2つつなげた「二重振り子」は、一度揺らすととても複雑で非周期的な運動をします。この予測できない動きがカオス現象。二重振り子なら実際に現物を作って実験・検証することができますが、振り子を数百・数千もつなげて運動軌跡を検証することはほぼ不可能です。

そこで、田中教授はFORTRAN77というコンピュータ言語を使って、振り子が6000個連なる6000重振り子の運動シミュレーションを実施。その軌道は複雑で美しく、動画で見るとまるで風に舞うリボンのようにも見えます。このように、現実では実作不可能なものを、理論上で可視化することができます。

逆に、3DCAD3Dプリンタを使いこなすことで、綿密にシミュレーションして設計したものを、具体的なモノとして作り出すこともできます。3Dプリンタは大きいものを作ることは苦手なため、作りたいものを細かいパーツに分け、個別に3Dプリンタで出力し、組み立てて完成させます。

たとえば、この球体に近いものは切頂二十面体(Truncated Icosahedron)からできています。切頂二十面体とは、20の正三角形からなる正二十面体の各頂点12個を切り落とし、20の正六角形と12の正五角形にしたもの。さらに正六角形を6分割、正五角形を5分割し、全てを小さな240の三角形のパーツで出力し、組み立てています。

6000重振り子の運動シミュレーション
振り子が描く軌道は複雑で美しく、まるで風に舞うリボンのように見える
切頂二十面体(Truncated Icosahedron)
20の正三角形からなる正二十面体の各頂点12個を切り落とし、20の正六角形と12の正五角形に。さらに正六角形を6分割、正五角形を5分割し、全てを小さな240の三角形のパーツで出力し、組み立てている

レゴを使ってLEGメカニズムを実作! 
さらには機械式コンピュータ制作にも挑戦

またパーツから設計するのではなく、レゴブロックを使ったモノづくりにも挑戦中。たとえば「ストランドビースト」。オランダの彫刻家テオ・ヤンセンの造形で、風力によって生物のように歩く作品群です。その動きは「テオ・ヤンセン機構」と呼ばれ、組み合わせるとロボットを歩行させることもできます。

田中教授は、このストランドビーストをレゴで作り直し、LEGメカニズム(歩行メカニズム)を研究。その成果も活かしつつ、モーターや制御等を使わず、形と重量バランスだけで、重力によって斜面を歩く受動歩行(Passive Walker)のロボットを制作しています。

レゴを使ったさらなる挑戦は、機械式のコンピュータ制作です。そのモデルとなっているのが、ドイツ科学技術博物館に収蔵されている金属製の機械式コンピュータ「Zuse Z1」。ドイツの発明家、コンラート・ツーゼが制作したもので、世界初の「自由にプログラムできるコンピュータ」と言われています。

基本的に、コンピュータは二進数を用いて演算を行います。0か1かの信号を、半導体を流れる電流の有無で表し、その最小単位の回路を「論理ゲート」と呼びます。田中教授は、この論理ゲートをレゴで作り、いくつも連結させることで複雑な計算ができるコンピュータをめざしています。

現在、当時の資料を取り寄せて制作中ですが、まだ未解明の部分も多いそうです。完成すれば、世界初のレゴ製機械式コンピュータの誕生。どんな大きさ・形なのかも楽しみです。

レゴで制作されたPassive Walker
ストランドビースト(Theo.Jansen)のLEGメカニズム(歩行メカニズム)の研究成果を活かし、モーターや制御等を使わずに、形と重量バランスだけで、重力によって斜面を歩く受動歩行(Passive Walker)するロボットを制作
ドイツの発明家、コンラート・ツーゼが制作した機械式のコンピュータ「Zuse Z1」。レゴで再現するという挑戦が始動!

楽しい! からスタートした技術が
月面基地設置に役立つ!?

これを学びたい! 知りたい!と感じる研究の第一歩は、「役立つ/役に立たない」ではなく、楽しいからトライするという好奇心。
けれども、たとえば240のパーツに分けた切頂十二面体は、圧力に強い球体に近く、運搬もコンパクト。月面基地を設置する際には、こうした設計技術が大いに役立つはずです。

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