3次元CAD(Computer Aided Design)とは、コンピュータ上で立体を構築して設計やデザインを行うこと。最近では製造・設計・デザインなどで幅広く利用されています。
新関研究室では、人とコンピュータの関係という深い部分から3次元CADのあり方を研究。「夢を実現するツール」としてのCADの可能性を追究しています。
3次元CADは、紙の上に書かれた2次元図面をコンピュータ上に拡張したものです。たとえば、家の2次元図面を見ても、どんな家なのかをイメージするのは難しいですが、3次元ならすぐにわかります。また、家をさまざまな角度から見ることもできます。
このような3次元の造形を可能にしているのは、コンピュータです。コンピュータが誕生した当初は、モニタもマウスもありませんでした。計算するためだけの機械だったのです。しかし、計算だけではなく「形」を目に見えるようにすることで、モノづくりの技術を大きく発展させられる考えた計算機科学者がいました。アメリカのアイバン・サザランド博士です。
サザランド博士は、ライトペンと呼ばれるツールでモニタ上に図形を作成できる「Sketchpad」を開発。これは世界初のGUIの実現でした。人とコンピュータの関わり方が劇的に変化し、CGの技術もここから始まりました。サザランド博士から、ユタ大学で直接指導を受けたのが、新関教授の担当教官であった山口富士夫博士です。
こうした学問的な流れを組む新関教授の研究は、単にマシンやソフトウェアとしての3次元CADの機能向上を図るためのものではありません。人間の頭の中にあるイメージを具体化するためのファーストステップにCADがあるとするなら、いかにそのイメージを正確に、スムーズに生み出すことができるのかが、長年に渡る大きな研究テーマです。
新関研究室では「頭の中のイメージを具体化する」ことを追究するため、さまざまな視点でアプローチしています。
たとえば、CAD図面が正しいか誤っているかを判定して自動修正するシステムの開発。図形について考えている時の人の脳の血流量を測定する研究。さらに形状を連続変形させながら無駄のない設計を行う「トポロジー最適化」など。新関研究室は、CADの基礎研究を行うことのできる日本では数少ない研究室のひとつなのです。
長年のCAD研究の中から、新関教授が指摘するのは「現代は新しいCADが生まれる絶好のタイミング」だということ。背景には「コンピュータの高速化」があります。かつては、CADの複雑な計算に膨大な時間がかかりましたが、今では素早い計算が可能です。もうひとつ。大きな要因となっているのが「IoTおよびデジタルツインの普及」です。家電・自動車・スマートフォンを含むあらゆるデバイスがインターネットに繋がり、人がモノをどう使うのかがリアルタイムで蓄積されます。そして、実際のモノと対応するサイバー上のモノ=デジタルツインは3次元CADで作成されるものであり、今爆発的に増え続けています。
さらに、新しいコンピュータ言語であるPythonや3Dプリンタも浸透中。データ上の人の行動からニーズを汲み取り、どう具体化するか?など条件は整っています。
全く新しい未来型3次元CADは新関研究室から生まれるかもしれません。
家電や自動車も、個人のニーズに沿った究極のオーダーメイド品として設計できる3次元CAD。こだわりたい部分や重要な箇所だけを人間が設計し、あとはAIが全ておまかせで設計する「あとはよろしく3次元CAD」方式で、カスタマイズされた製品が完成する。「一人に一台ずつの3次元CAD時代」は、意外に近いかもしれません。
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