香川准教授は、さまざまな関数や超関数がどのような特徴を有しているかを研究しています。一般的に「関数解析」と呼ばれる分野で、その研究結果は物理学や工学など多彩な分野に応用される可能性を秘めています。
シンバルが「バーン」と音を鳴らす様子や電気のスイッチングは、高校までで習う一般的な関数では表現できません。そういった事象を数学的に扱うために考えられたのが超関数です。
超関数のひとつであるディラックのデルタ関数は、シンバルの音のようにエネルギーが瞬間的に爆発する状況を表すことができます。また、ヘヴィサイド関数は信号のオン・オフといった信号処理によく用いられます。香川准教授は、そんな超関数や関数の集合がどのような特徴を持っているのかを研究しています。
超関数や関数を研究する際に用いられる一つの方法が「変換」です。変換を用いることで、関数を別の関数を用いて表すことが可能になります。たとえばデルタ関数は関数として扱うことができないのですが、フーリエ変換を行うことで「y=1」のようなシンプルな恒等式に置き変えることができます。
香川准教授は、こうした超関数や様々な関数を、変換等を用いることで、それらがもつ性質や特徴を見つけることを研究しています。
数学の世界には、簡単な関数空間に関する特徴づけの論文はあるものの、少し複雑になると研究結果があまり知られていない分野があります。
香川准教授は、そのような複雑な関数空間の特徴づけを研究しています。その際に活用する変換法の1つが、分数べきフーリエ変換です。これは、フーリエ変換をたとえば1/3や1/2だけ行って考える手法です。
ある関数にフーリエ変換を1回行うと別の関数になり、4回行うと形式的にはもとの関数に戻るという性質があります。香川准教授は、これまでフーリエ変換などで求められてきた結果や理論に対して、分数べきフーリエ変換を用いることで、今まで以上に詳細な解析をしようと考えています。
その研究の中で得られた成果のひとつが、「分数べきフーリエ変換によるジャイレータ変換の特徴づけ」です。香川准教授は、光学をはじめとした工学分野で用いられるジャイレータ変換について、「分数べきフーリエ変換や他の変換との関係」や「満たすべき微分方程式」などを明らかにしました。
フーリエ変換は信号処理とかかわりが深く、ジャイレータ変換は光学に関連しています。また、ウェーブレット変換は2次元データ処理に用いられたり、ラドン変換はCTの基礎となっていたりします。
「変換」はさまざまな分野と密接にかかわっており、それらを用いた研究は数学界の発展にとどまらず、社会に広く貢献できると言えます。分数べきフーリエ変換を用いた研究にも、他分野にリンクする未知なる可能性が秘められています。
各種取材や研究に関することなど、
お気軽にお問い合わせください