KAJIKIYA Ryuji
共通教育機構 数理科学教育研究センター 教授
大学院 工学研究科 先端理工学コース 教授
理学博士
広島大学
非線形楕円型偏微分方程式の解空間の研究 / 非線形偏微分方程式
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お酒が好きで、晩酌はほぼ毎日。焼酎も日本酒もビールも好きなので、その日の気分に合わせてチョイスします。焼酎では、麦焼酎を割らないで飲むことが好きです。

微分方程式の解の性質を調べる

微分方程式は、物理現象や自然現象などを記述する数学であり、物理学、電磁気学、工学、生物学などの様々な分野で使われています。
梶木屋教授は、数学の観点から微分方程式を研究。まだまだ謎の多いその性質を解き明かしています。

変数を動かすと

解の様子が変化する

数学の研究領域には、大別して「純粋数学」と「応用数学」があり、純粋数学には「解析」「代数」「幾何」の3つの分野があります。梶木屋教授の専門は「解析」。これは、「微分」「積分」を使って関数の性質を研究する分野です。その中でも、特に微分方程式をテーマに研究しています。微分方程式とは、関数の微分を含んだ方程式のことで、解が関数となる方程式のことです。

梶木屋教授は、この微分方程式によって導かれる解の法則性や、解の数、種類(性質)を研究しています。たとえば、ある方程式において導かれる解は1つしかないのか、あるいは複数個あるのか。もしくは、無限個の解を持つのか。これらを探求するのが、梶木屋教授の研究です。

また、解に何らかの法則(数学では対称性と言います)があるのかを調べるのも研究テーマの1つ。ある種の微分方程式において発生する「解の分岐」は、物理学と深くかかわる分野です。「解の分岐」とは、変数を連続的に動かすとき、解の様子もまた何らかの法則性に則って変化します。この法則性をもった対称な解から、法則性を失った非対称な解に変化する「分岐点」についても研究しています。微分方程式の解は、時間を無限に大きくしていくと一定の状態に落ち着きますが、それが対称な解の場合もあれば、非対称な解の場合もあるのです。

微分方程式の解の変化(対称性/非対称)を示す図
上の図では,2本の曲線がある.曲線の上の1つ1つの点は微分方程式の解を表している.それは関数になるが,1つの関数(微分方程式の解)がひとつの点で,曲線は無限に多くの解が連続的に変化していることを示す.
上の図の分岐は,Moore-Nehari微分方程式と呼ばれる方程式の解の分岐を表している.黒い曲線は,偶関数の解を表している.偶関数とは,すべてのxに対してf(x)=f(-x)を満たす関数f(x)のこと.パラメータλを固定するとき,どのようなλに対しても,偶関数の解はひとつだけ.黒い曲線(偶関数の解)から偶関数でない解(赤の曲線)が分岐(枝分かれ)して現れている.

対称な図形から

解の性質を調べる

またもう一つの研究テーマは、定常状態を表す偏微分方程式(変数が2個以上ある微分方程式)で、楕円型偏微分方程式と呼ばれています。定常状態とは、時間が過ぎても変わらない一定の状態のことです。

この研究では、対称な領域で定義された楕円型偏微分方程式の解が対称性を持つのかということについて調べています。たとえば立方体はすべての面が正方形で、すべての辺の長さも等しく、回転などの操作を行っても形が変わらない対称性をもっています。

立方体を領域とした偏微分方程式を調べてみると対称な解とともに非対称な解もあり、領域の対称性を解が受け継がないことが示されました。このことは立方体だけでなく、すべての正多面体に対しても成り立ちます。特に非対称な解について、どのような場合に存在するのか詳しく調べ、その性質を明らかにしています。

正多面体は2次元空間のときは,正多角形になる.3次元空間では,正4面体,立方体,正8面体,正12面体,正20面体の5種類のみとなる.4次元空間では,上の図に書いたものであり,5次元以上の空間ではN+1面体,2N面体,2N面体 の3種類のみとなる.

知られていない謎がある限り
挑戦し続ける

微分方程式は物理現象や自然現象を表すことができる数式として社会になくてはならない存在ですが、その数学的成果が直接、人々に認知されることは決して多くありません。
けれども、さまざまな現象を表す微分方程式は、純度の高い抽象化によっていまだ知られていない謎や未解決の問題の解明に役立ち続けています。解の対称性や非対称性、安定性などの研究が進めば、また新たな景色が見えてくるに違いありません。

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