宇宙のはじまりには、水素やヘリウムなど軽い元素が数種類あっただけだと考えられています。しかし、私たちが暮らす宇宙には、理論上1万種と言われるほど多様な原子核が存在します。これらはどのようにつくられたのか?
溝井教授はその解明に挑むべく、研究を続けています。
宇宙は、約138憶年前に起きたビッグバンによって誕生しました。素粒子が飛び回る熱いスープのような状態から、素粒子同士が激しくぶつかりながら原子核反応を起こし、水素やヘリウムなどの軽い元素が合成されたと考えられています。
こうした学説は、現在の宇宙に存在する元素の割合や分布などを観測した結果と矛盾しないことが重要です。近年、観測技術の発展によって、重い元素がより多くあったと推測される観測データが示されたことで、水素やヘリウムだけでなく炭素まで合成されたとする新たな学説が登場しました。
溝井教授は外部機関との共同で、この新学説のカギを握る反応を検証できる実験設備を開発。10-12cm、つまり1兆分の1cmという目に見えない原子核を探ることで、宇宙誕生のシナリオの解明に挑んでいます。
宇宙に存在するすべての元素は、原子核同士や原子核と中性子や陽子などの素粒子が衝突する原子核反応によって生まれました。現在、存在が確認されている原子核は3000種類ほどですが、そのうち身の回りにある物質から採れる原子核は200種程度。残りは加速器という装置を使って原子核を他の原子核にぶつけてつくられたもので、非常に短い時間で壊れてしまうものがほとんどです。
溝井教授はそうした不安定な原子核の性質を調べたり、新たな原子核をつくる研究を進めてきました。さらに最近では、不安定な原子核が壊れる際にβ線という放射線を放出する現象を利用し、物質の新しい測定手法について共同研究を進めています。成功すれば、これまでの方法ではできなかった酸素など重要な元素の測定が可能になるかもしれません。
原子核の中には小さい磁石のような性質を持ったものがあり、強力な磁場を与えて電波を当てると、原子核の種類によって特定の電波を吸収します。この現象は、物質を壊すことなく構造を推定する技術に利用されています。
同じ原理で人体にある水素原子核の状態をとらえ、疾患部位を画像化するのがMRI。溝井教授らの研究で酸素などの原子核の測定が実現すれば、従来のMRIにできなかった新たな画像診断が可能になるかもしれません。
各種取材や研究に関することなど、
お気軽にお問い合わせください