YASUE Tsuneo
共通教育機構 数理科学教育研究センター 教授
大学院 工学研究科 先端理工学コース 教授
工学博士
名古屋大学
新規機能性表面・薄膜の創成とその評価・解析 / ナノテクノロジーへの応用
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犬はかわいい派で、愛犬のソナはトイプードルとワイヤーフォックステリアのミックス犬。ソナとの休日の散歩が、ほっとする時間です。また食べ物では、話題の昆虫食にも抵抗感はなく、ハチノコやイナゴ、蚕のさなぎなど、変わった物もおいしくいただけます。

原子1個分の凹凸を画像・映像でキャッチ! 
ナノ〜ミクロの極小世界で、物質の新たな可能性を探る

1マイクロメートルは、1000分の1ミリメートル。1ナノメートルは、さらに小さく100万分の1ミリメートル。
安江研究室では、こんな極小世界の物質の「表面」を観測・撮影する技術を開発。その知見を活かして「薄膜」の性質を探る研究に取り組んでいます。

表面顕微鏡の世界的権威・バウアー博士に師事 
モノの表面を観測する仕組みとは?

電子顕微鏡とは、光の代わりに電子線を試料に当て、像を拡大して観察する機器です。透過電子顕微鏡TEMは、高速=高エネルギーの電子が試料(観察したい物質)を通り抜けてできた像を観測します。

この電子線を低速(低エネルギー)にすると、電子が試料を通り抜けずに跳ね返るため、試料の表面を観測できます。この仕組みを活かしたものが低エネルギー電子顕微鏡LEEMです。現在広く普及しているLEEMは、表面顕微鏡の世界的権威であるエルンスト・バウアー博士が1985年に開発したものを基にしています。LEEMは原子1個分=0.1ナノメートルの段差も観測できる電子顕微鏡です。

安江教授と越川孝範名誉教授(本学) は、バウワー博士から指導を受けた経験を持ちます。二人がLEEMにさらなる機能を付加して2010年に開発したのが、高輝度・高スピン偏極低エネルギー電子顕微鏡(高輝度・高偏極SPLEEM)です。

ここで重要になってくるのが、試料に当てる電子の性質です。電子は、それぞれ右・左のどちらかに自転しており、これを「スピン」といいます。右回りを「上向きスピン」、左回り「下向きスピン」と呼び、その割合は同数です。「上向きスピン」と「下向きスピン」はお互いを打ち消すのですが、どちらかが多い場合、その物質は磁性を持ちます。例えば、人体は上向きスピンと下向きスピンが同数のため、磁石はくっつきません。鉄は上向きスピンの方が多いので、磁石がくっつく、つまり磁性を持つのです。

モノの大きさに合わた観察手段
LEEMとSPLEEMの概念図

世界に2台! スピンの偏極率と角度を制御し 
物質の磁区を高速撮影できる表面顕微鏡を開発

通常は同数の電子スピンの向きを人工的に偏らせることができれば、電子線に磁性を持たせることが可能です。この偏らせたスピンの割合を、偏極率といいます。当時、スピン偏極率を30%以上にすることは難しいとされていましたが、名古屋大学の研究チームが偏極率90%の実現に成功。この技術をLEEMにドッキングさせ、バウアー博士と共に安江教授と越川元教授が共同研究・開発したのが高輝度・高偏極SPLEEMです。

SPLEEMは、偏極電子を当てることで、原子サイズの厚みの磁区を観察できます。高輝度・高偏極SPLEEMの優れた点は、50fpsというフレームレートの高さです。ビデオ以上の高速撮影により、リアルタイムで磁区の形成プロセスを観察できるのです。また、磁区の向きを3次元的に捉えるためには、スピンの試料に対する角度を自在に変える必要があります。この作業には2つの機器が必要でしたが、3次元スピンマニピュレーターを導入することで、SPLEEMのコンパクト化も実現しました。

2015年の学会で高輝度・高偏極SPLEEMが発表されると大きな注目を浴び、中国からの要請に応えて、さらに1台を作製。世界で2台のこの表面顕微鏡は、ナノワールドの最先端を見つめ続けているのです。

ナノの世界での研究成果を、ミクロの世界で!
「薄膜」の新たな謎と可能性を解き明かす

「薄膜」とは1マイクロメートル以下の薄い膜で、ペットボトルから太陽電池まで、その機能も種類も多様です。しかし、その機能が発現するメカニズムは物質によりさまざまで、統一的には解明されていません。
安江研究室ではSPLEEM開発で得た「表面」研究の成果を薄膜の世界に応用し、物質や素材の常識を覆す新発見をめざしています。

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