MITSUISHI Akihiko
建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 空間デザイン専攻 准教授
大学院 工学研究科 制御機械工学コース 准教授
博士(工学)
東京大学
安心かつ快適な室内外の気流環境 / 流れの予測と制御 / 乱流輸送現象の解析
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クラリネット演奏が趣味でしたが、今は息子と遊ぶ時間が何よりのリフレッシュタイム。とはいえ、ミニグライダーを飛ばす時や海辺で波を見る時、キャンプでテントを張る時など、気がつけば流体力学の目線で物事を見つめる自分がいます。

安全で快適な空間を創り出すために
「空気の流れ」を追究する

常にそばにあるのに、目には見えない空気。何が含まれていて、どの向きに流れているのかがわからないだけに、コロナ禍では世界中の人々が恐怖を感じました。
光石研究室では、安全で快適な暮らしの実現に向け「空気の流れ」の把握と分析に取り組んでいます。

コロナ禍で広まったパーティション 
使用すればデメリットになることも!?

今後もパンデミックは到来すると言われています。怖がる人も多いかもしれません。しかし、安全・快適に暮らせる基準を見つけることができれば、恐怖のあまり不必要なまでに防御したり、逆に油断して感染したりすることなく暮らせます。

光石准教授は、「空気の流れ」から、安全・快適な暮らしをサポートする研究に取り組んでいます。

たとえば、パーティション。コロナ禍ではお店やオフィスの至る所にパーティションが設置されました。大きな飛沫は、パーティションにぶつかって下に落ちるので、感染対策としては有効です。反対に、ごく小さい飛沫は空気中に漂います。さらにパーティションによって空調からの空気の流れが遮られるため、長時間同じ場所に留まり続けます。これでは逆効果です。また。天井から吊り下げるタイプの大型のパーティションの中は湿度が高くなり、中で仕事をする人にとっては快適性が低下してしまいます。

そこで光石准教授は、空調や換気の能力・パーティションの配置や高さなど、さまざまに条件を変えた空間モデルを作り、空気の流れを再現。コンピュータによるシミュレーションと併行してデータを収集・分析。湿度や温度は快適さを保ちつつ、ウィルスやハウスダストなどの有害なものはカットできる最適なポイントを探っています。

心を癒してくれる室内の観葉植物に
空調・換気サポート効果の可能性!?

また現在空間内の空気の流れを生み出すツールとして、光石准教授が注目しているのが「植物」です。オフィスや商業施設などの室内に置かれた観葉植物は、心理的な癒し効果を持つインテリアの1つとして扱われています。しかし光石准教授は植物の持つ物理的な作用に期待し、新たな研究に取り組んでいます。

植物は光合成で酸素を、呼吸で二酸化炭素を放出し、葉の表面からは水分を蒸散することから、周辺の空気とは異なる空気組成に包まれています。こうしたごくわずかな差は、屋外では周囲の空気の流れに影響を与えることはありません。しかし、無風・微風の室内であれば、空気の流れに影響力を持つのではないかと、光石准教授は推論しています。

放出される酸素や二酸化炭素は空気より重いために下降流を、日光で温められた葉や、蒸散する水蒸気は上昇流をアシストし、空調と組み合わせることで空気の流れを加速できるかもしれないという仮説です。

縦長の温かい板を室内に設置した場合には、長ければ長いほど対流が早くなるという実験結果を得ているため、サンスベリアのような縦長の形状の植物が同じ機能を果たせないか、植物の周囲の風速を測定して検証していく予定です。

「これで大丈夫」という根拠があれば
人々の不安が取り除かれていく

細菌・ハウスダスト・花粉・PM2.5等の大気汚染物質など、空気中には有害な物質が含まれています。徹底的な遮断が現実的ではないことをふまえると「これで大丈夫」という根拠が明らかになれば、暮らす上での不安を軽減できます。
室内から、都市、地球規模の気象現象へと「空気の流れ」は全てつながっています。壮大なスケールの研究の第一歩は、今始まったばかりなのです。

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