SAITO Akiko
工学部 基礎理工学科 環境化学専攻 教授
大学院 工学研究科 先端理工学コース 教授
博士(学術)
東京大学
食品の機能性解析 / 食品加工 / 食品衛生に関する研究
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一番のリフレッシュ法は長距離ドライブ。100kmくらいなら散歩の感覚です。故郷の青森往復も楽しいイベントで、静岡SAが息子のお気に入り。道の駅で珍しい地野菜を見ると、つい「実験用のサンプルになるかも」と購入してしまいます。

ラズベリー由来ポリフェノールの
抗がん効果を科学的に証明

かわいいスイーツに欠かせない果実、ラズベリー。
齊藤教授は、このラズベリーに含まれるポリフェノールに注目。食品化学や天然物化学だけでなく、分析化学や生化学など幅広い学域を極めた知見から、産・官・学・福が連携した幾つものプロジェクトを同時進行させています。

「体に良い」を科学的に追究するために 
多岐に渡るバイオ・化学系の学問を修めて本学へ

ポリフェノールが健康に良い」とはよく聞きますが、具体的にどう体に良いのかを説明できる人は意外に少ないもの。食品にはさまざまな成分が混ざっていて、どの成分が体の中でどんな風に機能するかを特定するには、分析化学だけでなく生化学分子栄養学など全く異なる学域分野の専門知識や技術が要求されます。

齊藤教授は、東北大学で天然物化学有機合成化学を学んだ後、東京大学大学院で分子生物学を学び博士号を取得。ポリフェノールの研究を自由にできる環境を求めて富山県バイオテクノロジーセンター(現・富山県立大学生物・医薬品工学研究センター)へ。その後、機能分析の技術を身につけるべく理化学研究所の博士研究員として勤務。2010年からは本学にてラズベリー由来のポリフェノールの研究に着手。これまでに得た知見を活かし、その効果を科学的に証明するべく取り組んでいます。

齊藤教授の研究テーマであるポリフェノール。その一種プロアントシアニジンは、カテキン分子がつながった構造を持ちます。この成分は、柿・桃・りんご・カカオ等にも含まれており、同じ果実であっても花や実-葉など分析するパーツによっても構造が異なります。

齊藤教授は、100種類以上のプロアントシアニジンを分析し、市販されていないタイプについては自分自身で有機合成して確保し、構造の確認や機能性評価に使用しています。更に、より最適な合成法の開発にも着手。分析した個々のプロアントシアニジンについては、機能性評価の化合物ライブラリーを構築中です。なかでも、専門的な研究が進んでいないのが、ラズベリーのプロアントシアニジン。この機能性については、特に注目しています。

ロボット、抽出法開発、ストレスマネジメントなど
ラズベリーを軸に拡がる可能性

この、齊藤教授ならではの広域学的なアプローチで研究が進められた結果、ラズベリーの生態が徐々に解明されてきています。

抗酸化作用等を有するプロアントシアニジンは、ラズベリーの実が熟れて赤くなる前の青い段階の方が豊富に含まれていること。青い光を当てて栽培した方がその量が増えること。最新の研究成果としては、ラズベリーに含まれるポリフェノールの中でも、特に花びらに含まれるものが、ヒトのがん細胞にアポトーシス引き起こす作用があることを確認しています。この結果は、新たな抗がん剤の創薬の糸口となる可能性を秘めています。

齊藤教授は現在、この研究を学科の垣根を越えた「ラズベリープロジェクト」として実践的・社会実験的研究として展開。電子機械工学科の入部教授によるラズベリーの自動収穫ロボットの開発や、電気電子工学科の民田教授によるパルス電界処理を使った有効成分の効率的な抽出。健康スポーツ科学科の武田教授には、ラズベリーリーフティのストレスマネジメント効果の評価を依頼。本学の教員4人による実践的共同研究として、農水省主催のアグリビジネス創出フェアに出展するなど、より多くの人にラズベリー効果を届けるべく活動を続けています。

入部教授(電子機械工学科)と共に進めている自動収穫ロボットの開発
民田教授(電気電子工学科)と進める、パルス電界処理の研究開発
武田教授(健康スポーツ科学科)と進める、ラズベリーリーフティのストレスマネジメント効果の研究
左)農水省主催のアグリビジネス創出フェアに出展した写真
右)産学連携商品 炭酸飲料「ソルティ・ラズベリー」

機能性食品のトレンドは
大量から微量成分へとシフトする!?

これまでの機能性食品は、ある食物中に大量に含まれている成分が中心でした。
齊藤教授は、今後はごくわずかしか含まれていない成分が機能性食品開発の鍵を握るのではないかと予測しています。それには近道はなく、地道な分析の積み重ねがあるのみ。新しい医食同源のライフスタイルは、ミクロな世界で続けられる日々の研究から生まれてくるのです。

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