ストレスを貯め込む前に手軽にセルフケアをすることは、病気の予防や健康維持につながります。
武田教授はストレスの低減や緊張の緩和、運動後の疲労回復に役立つケアを幅広いアプローチで研究。中でもハーブティーやアロマテラピーなど植物を使ったケアの効果を検証しています。
長時間作業時の疲労を軽減
ハーブは薬用植物として、料理の香りづけ、防虫・防臭、薬として使われてきました。武田教授はハーブを心身の健康維持に活用する場合の効果について検証しています。たとえば、カモミールティーが睡眠の質におよぼす影響。またラズベリーリーフティーが作業量や疲労感に及ぼす影響など、ハーブの効果を科学的な手法で検証しています。
効果の検証では、ストレスや疲労がハーブティーの飲用でどう変化するかを、生理面と心理面の両面からアプローチ。生理的な効果の測定では、ストレス時に増加するホルモンであるコルチゾール、唾液中に含まれる抗体・免疫グロブリンA(IgA)、酵素・アミラーゼのほか、心拍数や脳波、血圧などの変化を指標にしています。また心理的な効果の測定では、不安、疲労度など様々な心理状態を測定する心理テストなどを使って分析しています。
こうした科学的なアプローチにより、ラズベリーリーフティーの効果分析では、リーフティーの飲用、白湯の飲用、飲用なしで比較したところ、長時間作業の疲労低減に有意な効果が認められました。これには、ラズベリーリーフに含まれるポリフェノールが関与していると推測されます。
また、野菜栽培や園芸によってストレスが軽減するという園芸療法的作用の研究報告があります。武田教授は、このような「植物に触れるということが心身に与える効果」についても研究しています。
効果を検証するにあたり、より手軽に植物に触れられるリース作りを作業課題として、実験を行いました。ヒノキやヒバなど鎮静作用のある芳香成分を含む樹木を使ったリース作りの前後で、心理テストを実施。また生理的な変化をとらえるため、作業の前後で唾液中に含まれるコルチゾールの量に変化があるかどうかを測定し比較しました。その結果、リースを作る作業によって不安やストレスが有意に緩和することが認められました。
また、アロマトリートメントの効果についても検証。実験では、精油に含まれる芳香成分やタッチングによって疲労感や不安感がどの程度軽減されるかを測るため、最初に簡単な視覚探索課題(ATMT)を行い、軽いストレスと疲労を与えます。その後、精油を植物油に希釈したブレンドオイルを使った上肢への”トリートメント(マッサージ的手技)を実施することでストレスや疲労がどの程度軽減され、後半の作業効率に影響するかなどを測定しました。
効果を比較するため、精油を嗅ぐ(芳香浴)のみでトリートメントをしない条件と、芳香浴をしながら精油を含まないキャリアオイルのみでおこなうトリートメントをした条件、さらに精油を嗅ぎ(吸入)精油を含んだアロマオイルでトリートメントをしたグループとに分けて効果を計測しました。
その結果、香りを嗅ぐだけでなく、トリートメントを行う方が効果的であること。またトリートメントでは、キャリアオイルだけよりも精油を加えたアロマオイルで実施するほうが、課題遂行による不安や気分の悪化、疲労感が減少し、効果が持続することがわかりました。
誰でも手軽に健康対策!?
森林浴にはストレス解消効果があると言われますが、それは木々から発散されるフィトンチッドという香りの成分によるアロマテラピー効果だそうです。
ハーブやアロマテラピーなどの効能が科学的に明らかになれば、家の中での暮らしにも取り入れストレスや疲労感の解消が可能になるかも。アロマの効果をうまく取り入れた健康住宅の開発など、夢は広がります。
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