暑くなり始めの時期は、熱中症のリスクが高まります。これは「暑熱順化」と呼ばれる、体が暑さに慣れた状態になっていないことによるものです。
太田教授は身体に備わっている暑熱下の体の生理応答個人差について探るとともに、暑熱順化を効率よく進められる運動や入浴の効果についても研究しています。
体を動かすと熱がつくられ、体温が上昇します。この体温上昇をコントロールするため、人の体は汗をかいたり、皮膚の血管を広げることで体の表面から熱を逃がし、体温を調節しています。体が暑さに慣れると、汗をかく量や皮膚の血流量が増え、熱を逃がしやすくなります。また、汗に含まれる塩分が減り、ナトリウムを失いにくくなります。このような様々な変化を暑熱順化と言い、結果として熱中症を予防したり、夏バテを防ぐ働きがあります。
アスリートは、積み上げてきた練習の成果を、わずか1-2回の競技時間に最高のパフォーマンスで示さねばならないため、運動による熱や体温上昇をいかにコントロールするかが、非常に重要になります。
太田教授は、現在、暑熱環境下でのアスリートの体調管理やパフォーマンスの発揮をテーマに研究に取り組んでいます。そのアプローチとして、汗の質の変化を探り、その変化を指標化できないかと考えています。暑さへの耐性、暑熱順化のしやすさなど体質の評価ができれば、それに合った食事や飲料の摂取などよりきめ細かなコンディション調整につなげられるかもしれません。
短期間で暑熱順化を進めるには運動をするのが効果的ですが、もっと手軽な方法が入浴です。入浴は、暑熱順化だけでなく血管の働きを高めるとも言われています。入浴によって体が温まり、血流量が増えることで、血管の拡張をうながす物質が放出され、血管の柔軟性を高める効果があるというのです。
また温泉の中でも、特に炭酸泉が血行を促進することは知られていますが、太田教授は、水道水などの白湯ではなく、水素水を使うなど、効率よく効果のあがる方法についても探っています。また、入浴の中でも手軽な足湯(足浴)に着目。体の一部分だけでも湯で温めることで、深部体温の上昇や血流量の増加につながるのかどうかを検証しています。
一方で、高齢者にスポットを当てた暑熱順化の研究も進めています。定年後も働く高齢者が増える中、夏場も安全に快適に働くためには、それなりの配慮が必要になります。太田教授は、気温や湿度の高い環境への対応能力が、年齢によってどう変化するのかについても研究を始めています。実験では、若者と高齢者の脳波を比較して分析。その結果、高齢者の方が高温下では認知に関わる応答の変化が大きいことが分かりました。太田教授は、今後も、より詳しい分析を続けていく予定です。
健康寿命を延ばすには、誰もが手軽に健康増進を実践できる仕組みが重要と言えるかもしれません。
オンラインで健康体操や毎日簡単なリハビリテーションの指導を受ける。健康についての正しい知識を学べるなど、いつでも好きな時に必要なサービスが受けられれば、もっと多くの人が健康習慣を身につけられるかも。さらに今後、こうしたサービスが対面もリモートも含め、個々のライフスタイルに合った形で参加できるようになるといいですね。
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