YAMASHITA Yoichiro
医療健康科学部 健康スポーツ科学科 教授
博士(医学)
兵庫医科大学
健康科学 / 測定評価

プールでの長距離水泳や筋トレを習慣にしているのは、野外実習(海洋実習)とスキーを存分に楽しむため。学生以上に夏と冬の実習を満喫しているかもしれません。スキーのために車は全て四駆。志賀高原や白樺高原でよく滑ります。スキー終わりの蕎麦やマトンは格別。

スポーツのパフォーマンス向上をめざし 
効果的な動きやコンディショニング法を探る

競技スポーツでは、いかに試合に勝つかが最大のポイントです。勝つためには、パフォーマンス向上につながる身体の動きや、それを実現するトレーニングが必要となります。
山下教授は、勝つための合理的な身体の動かし方やコンディショニング方法を、科学的なアプローチで研究しています。

ステップ打法かノンステップ打法か? 
飛距離を伸ばすバッティングフォームは?

競技スポーツで勝つには、得点につながりやすい身体の動きを知り、その動きのできる身体を作る必要があります。けれども、勝つための身体の動きには「経験や勘で」「何となく」良し、とされているだけで、実際の効果については分かっていないものが少なくありません。

山下研究室では、競技スポーツで勝つための動きについて、「効果がある」のかどうかを客観的に検証するべく、実験を重ね、研究を続けています。この検証実験には、競技スポーツの選手でもある研究室の学生たちが参加。仮説に基づいたデータを取ることで、特定の動きやトレーニング法に「効果がある」のかどうかを検証しています。

たとえば、野球ならホームランが最も効率的な得点方法です。そこで、本学野球部の選手に参加してもらい、2つの打法について検証実験を行いまいました。比較したのは、メジャーリーガーとして活躍する大谷選手のように足を上げて踏み込むステップ打法と、足を上げないノンステップ打法。木製バットのグリップにスイング速度測定器(BLAST)を付け、ティーの上に置いたボールを、2つの打法で打ち比べました。計測するのは、バットスピード・手の最大スピード・アッパースイングの角度・バットの角度・スイング時間・ボールにかかるインパクトパワーです。

2つの打法の飛距離を比較し、スイング特性を調査した結果、ステップ打法ではパワーヒッターはインパクトパワーが高いという有意な結果が得られ、ノンステップ打法では有意な結果は得られませんでした。今後もさまざまな視点から検証を続けていく必要はありますが、ステップ打法と飛距離の関係を解明する一つのデータとなりました。

左上)BLAST本体   左下)バット装着時
右)ティーの上にボールを置き計測する(実験-計測 風景)
ステップありとノンステップのパワーのt検定を行った結果を示したもの.5%水準でステップありが有意に高い値を示した.

アスリートも俳優も取り入れるストレッチ 
ストレッチ効果で空手の「回し蹴り」の高さは増す!?

またアスリートのトレーニング法として、80年代から急速に広まったのが「ストレッチ」です。筋肉は冷たい状態では切れやすいため、傷害予防とパフォーマンス向上のためのウォーミングアップとしてストレッチを行います。さらに、ケガの確認や疲労回復を目的とする運動後のクールダウンにも、ケアストレッチを行います。最近は、アクションシーンでキレのある動きをしたり、歌舞伎の女形がしなのある動きを体現するために、俳優もストレッチや筋力トレーニングを取り入れています。

では、型や組手で瞬発的にパワーを発揮し、身体の重心を素早く移動させる空手には、どんなストレッチ効果があるのでしょうか。山下研究室の学生は、自身が指導者として通う小学生向けの空手道クラブに協力を得て、この検証実験を行いました。

実験ではストレッチ前と後での、股関節の開脚角度・回し蹴り時の開脚角度・回し蹴り時の最高到達点を測定。実験の結果、高学年のグループでは最高到達点に関しては有意な結果が得られましたが、それ以外は有意な結果は得られませんでした。低学年のグループでは、各項目について有意な結果は得られませんでした。原因としては、低学年ではストレッチへの取り組みが消極的だったことや、発育段階によっては身体各部の比率が違うため効果が出にくいと考えられます。

山下研究室では、さまざまな競技スポーツに関する実験データを取得中。データの蓄積と分析が実れば、勝つために必要な黄金メソッドが見つかるかもしれません。

小学生向け空手道クラブの協力で, 練習前にウォーミングアップとしてストレッチを行う.
ストレッチをする前と後の回し蹴りの最高到達点の平均を比較. 高学年はストレッチ後に0.1%水準 (p<0.001)で有意な増加を示したが, 低学年では有意差は示されなかった.

自然な動きからスムーズさを獲得すれば
日本人の体格でも世界のアスリートと渡り合える!

日本人の身体は、欧米系の人々の体格の大きさやアフリカ系の人々のしなやかさには及びません。山下教授は道具を使った筋トレには限界があると考えています。
限界突破に必要なのは「忍者式」。山で身体を鍛えるように、自然な動きの中でスムーズさを獲得すれば、競技スポーツの世界で存在感を示せるのでは、と予測しています。

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