SAKAGUCHI Takeshi
建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 建築専攻
教授

博士(工学)/一級建築士
京都大学大学院修士課程修了
大阪大学大学院博士後期課程修了
人間を中心においた、都市・建築・環境デザイン
学位論文「学校建築における外気を利用した建築環境デザインの環境工学的評価・設計論」

茶道歴、25年以上。月に2回、仕事も年齢もさまざまな人たちとお茶をたて、おいしいお菓子をいただくのが至福とか。無心にお点前に向き合い、リフレッシュする時間になっているという。

人が自然の一部であることを
実感できる環境デザインとは

坂口教授が設計したある幼稚園の園舎では、雨水を樋に流さず落ちるままにする場所を設けました。雨が降ると、雨粒を手に受けたり、ぽつぽつ落ちる雨だれを眺める園児でいっぱいに。
坂口教授は、自分も自然の一部であると実感できるような環境デザインをテーマに、設計・教育・研究を行っています。

外気を取り込む自然換気 
設計した建物でその機能を検証

坂口教授は、大手ゼネコンでさまざまな建築を設計してきました。その経験を活かし、建築計画や設計実習などの科目を通じてこれからの時代にふさわしい設計教育を行っています。中でも「人と環境との調和」をテーマに、自然環境を積極的に取り入れた建築設計や建築環境デザインを追究しています。

特に着目しているのが、外気利用です。自然の風や建築物内外の温度差や圧力差を活かし、外気を取り込む自然換気もその一つです。省エネ効果につながることはもちろん、心理的なリフレッシュ感に加え、新鮮な外気を取り入れて室内のCO2やウイルスなどを排出することで快適で健康的な環境をつくりだすという点でも注目されています。

ゼネコン時代に担当した大学校舎の設計に導入したのは、階段室型ウインドチムニーです。室内の空気が煙突効果によって階段室を上昇し、上部に設けた排気口から卓越風による誘引効果によって排出される自然換気システムです。大学が立地する香川県高松市は晴れの日が多く、風がよく吹く土地柄であることから、地域の特性を活かす自然換気システムを設計しました。校舎が完成して学生や教職員の皆さまが使用し始めてから、自然換気システムの性能を検証。風洞実験や温熱環境の調査など物理的なアプローチだけでなく、人の行動や快適さの感じ方がどう変化したかなど人間学的な側面からも評価を行い、今後の建築環境デザインに生かすことのできる多くの発見が得られました。

高松大学新校舎棟:日除け効果のある壁柱と水平庇によるファサード構成.コミュニティスペースとしてウッドテラスを挿入し,中廊下に明るい日差しと通風を届ける.(出典:空気調和・衛⽣⼯学会 中国・四国⽀部 技術振興賞受賞業績の紹介 2012年2⽉29⽇)
高松大学新校舎棟:建物の基本骨格の工夫による自然換気システム.窓を開けると新鮮な外気が流入する.校舎両端の突出が階段室型ウインドチムニー.(出典:日本建築学会 作品選集 2011)

暑い日でも中庭に出たくなるわけは?
屋外空間の有効利用を探求

一方、屋外に人が出ていくことに着目した外気利用の研究も行っています。兵庫県の中高一貫校の校舎建築では、生徒が自由に利用できる屋内ホールを中庭と隣接して計画し、相乗効果で利用を促進するプランを採用しました。この学校でも、温熱環境など物理量の測定に加え、生徒の利用状況や中庭の快適さの感じ方についてアンケート調査を実施。暑い中でも中庭に出ている生徒が意外に多く、しかも快適感が高いといった興味深い結果が得られました。先行研究で示された、人間は自分で環境を選ぶことで、その環境を快適と感じやすくなるという説を実証する結果でした。

本学寝屋川キャンパスのキャンパス広場の利用についても、学生たちと研究を開始しました。商品を手に取って店を出るだけで自動的に支払いが完了する「キャンパスドンキ」1号店や学食、学生ラウンジなどのある校舎に面したキャンパス広場は、バスケットボールコートなどもある癒しと集いの空間です。行動調査やアンケート調査などを通じて、キャンパス広場の果たす役割、隣接する施設との相関関係、キャンパス広場の利用頻度を高める方法など、さまざまな観点から研究を進めています。

中庭とホールを自由に行き来できる空間構成.(出典:都市・建築デザインのための⼈間環境学 朝倉書店 2022年)
ホール,中庭,思い思いの場所ですごす生徒.(出典:都市・建築デザインのための人間環境学 朝倉書店 2022年)
本学のキャンパス広場:ベンチやバスケットボールコートなど、さまざまな居場所が設けられている.

学びや未来に前向きになれる

ウェルネスキャンパスとは!?

近年、心身ともに健康で前向きな人生を追求する生き方「ウェルネス」が注目されています。建築にも、このウェルネスをサポートする役割が期待されています。健康で快適に働くためのウェルネスオフィスは、日本独自の認証制度ができるなど今後ますます普及が見込まれます。ウェルネスオフィスがあるなら、ウェルネスキャンパスもあるはず。
快適で学ぶ意欲が満ちてくるような学校建築の実現に向け、今後、議論が盛り上がりそうです。

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