AKATAKI Kumi
医療健康科学部 理学療法学科 教授
大学院 医療福祉工学研究科 医療福祉工学専攻 教授
博士(学術)
大阪大学
筋機能の計測と評価法の開発
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一仕事が終わると、よくお酒を飲みます。芋焼酎・泡盛が定番。近所に住んでいる料理好きの友人が作ってくれたおいしいアテで飲んでリラックス。次の仕事に向けて充電しています。

筋肉の動きや働きがどこまでわかる!? 
可能性が広がる筋音図測定

筋肉が発揮する力、つまり筋力は、一般的に、関節を動かす力を測ることで測定されます。しかし、人体には関節に関係なく働く筋肉もあります。
赤滝教授は、身体を傷つけずに体表面から筋肉の動きや機能を測るための方法として、筋音図に着目。筋音図の特性を探る基礎研究を進めています。

筋肉が活動すると起こる
体表面の小さな振動を測定

筋肉は筋線維という細長い細胞で構成されています。筋線維は運動神経からの刺激を受けて電気的に興奮します。この興奮は活動電位と呼ばれ、体表面上で筋電図(Electromyogram:EMG)としてとらえることができます。

筋線維は活動電位を引き金に収縮。筋線維は長軸方向への収縮と同時に、側方向に向かって拡大・変形(膨らみ)します。力こぶはこの筋線維の膨らみが原因です。筋線維の拡大変形は一種の圧力波として周囲の組織を振動させます。この微細振動を体表面上で記録したものが筋音図(Mechanomyogram:MMG)です。これは筋線維の収縮による信号なので筋の機械的活動をあらわします。

筋電図も筋音図も筋肉そのものを外科的に切り取ることなく筋肉の働きを評価できる信号です。電気的な活動(筋電図)と機械的活動(筋音図)を同時に分析することで、より明確に筋機能を分析することができます。

筋音図の発見は17世紀と古いですが、その研究が本格的に始まったのは20世紀後半で、まだまだ発展途上の未開発な信号です。

そこで赤滝教授の研究グループは、収縮活動を反映する筋音図に着目。その特性を明らかにする基礎研究を続けています。

筋音図と筋電図
筋は運動神経からの刺激を受けて活動電位を発生させ、それを引金に長軸方向に短縮しながら側方向に拡大変形する。筋電図は筋線維の活動電位を記録した信号で「筋の電気的な活動」を反映する。筋音図は収縮による筋線維の側方拡大変形による圧力波を起源とする信号で「筋の機械的な活動」を反映する信号である。どちらも体表面上より記録可能な信号である

筋収縮機能を把握できる筋音図

赤滝教授は、筋音図の特性を応用した研究にも取り組んでいます。その中には、筋肉が疲労するプロセスや加齢に伴う筋力低下のメカニズムの解明といったユニークなテーマもあります。また、臨床の研究者と共同し、筋疾患の患者さんの筋機能を評価する研究にも携わっています。

筋音図は、顔周りの筋や横隔膜など関節とつながっていない筋肉の機能測定に効果を発揮します。赤滝教授の研究グループは、いま筋肉内で起こっている振動の方向や速度の変化などを判定できる加速度計を活用して筋音図を測定し、筋電図と合わせて筋の機能を評価します。

たとえば、ALSや筋ジストロフィーなど筋の機能が衰える病気で最後まで機能が残るとされる眼の周りの筋肉である眼輪筋の持つ機能の研究もその一つです。また、瞬発力を出すのに向いている速筋(白筋)線維と、持久力を出すのに向いている遅筋(赤筋)線維とでは筋音図の振幅が違うことを応用し、筋疾患の症状を評価する研究なども行っています。

眼輪筋の機能評価実験
解上腕二頭筋の筋機能評価実験
最大随意筋収縮前(Pre)と後(Post)の筋音図波形比較
この実験では、10秒間、被験者に最大筋力を出させ、その前後で記録された誘発筋音図の波形を比較。健常者に比べ筋疾患のある患者の筋肉は最大筋力発生後の活動変化がないことがわかる

筋肉の組成や機能をつかみ
臨床やスポーツ科学に応用

筋音図は、体表面上から筋肉の組成や状態がつかめる技術として注目を浴びています。筋力が衰えていく病気の診断や、治療における薬やリハビリテーションの効果を評価するのに役立つことが考えられます。
また、遅筋線維と速筋線維のどちらが多いのかという筋線維の組成を調べ、向いているスポーツを判断したり、その人に合った効果的な筋力強化につなげることも可能です。筋音図研究のこれからに期待がかかります。

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