海や宇宙など雄大なものに心惹かれます。海の生物で特に好きなのがシャチ。カナダを訪れた時は、念願のシャチウォッチングを楽しみました。研究室の観葉植物とサラウンドスピーカーからの水や森のサウンドに包まれてひと息ついています。
ケガやそれに伴う手術をしたアスリートは、できるだけ早く復帰したいと願います。こうした望みをサポートするのが理学療法士です。復帰には、身体の状態に対する正しい評価と、医学的な管理に基づいたリハビリが不可欠だからです。
小柳教授は、こうしたリハビリをより安全かつ効率的に行うため、超音波診断装置(エコー)を駆使した評価法やリハビリのための器具の開発、さらにケガ予防のためのサポーター開発にも取り組んでいます。
ケガや手術からの復帰をめざすアスリートが必ず行うのがリハビリテーション。リハビリを行うには、身体の状態を正しく評価することが重要です。ところが、これまで身体内部にある損傷部位の状態は直接には確認できないという課題がありました。
小柳教授は、こうした身体内部の状態をリアルタイムで把握し、正確に評価できれば、安全かつ効率的なリハビリ計画が立てられるのではと考え、エコーを活用した新しい手法を研究しています。
注目したのは膝の前十字靱帯(ACL)損傷。バスケットボールやハンドボール等、着地方向転換の多いスポーツで特にケガをしやすい部位です。ACL損傷を手術等で再建した選手がリハビリを行うとき重要になるのは、下腿のどこを支えるのかということです。
小柳教授は病院等で蓄積されたデータを検証し、膝の近くに支点を置くと下腿が前方にずれる現象を抑えられることを突き止めました。また、下腿を支える専用デバイスを開発し、板バネ様に運動を行う画期的なリハビリ法(Leaf spring exercise)を考案(下図参照)。またエコーを使うことで、リハビリ中に下腿が前方にずれていないかをモニタリング。安全性を確認しながら筋力強化をはかることが可能となりました。
小柳教授は、スポーツによる損傷を予防するためのサポーターの開発にも取り組んでいます。
「内側型野球肘」と呼ばれる損傷は、投球動作によって生じるストレスにより、ボールを投げるときや投げた後に、肘の内側に痛みを感じます。肘の内側が広がって不安定になると、復帰には手術や専門的なリハビリが必要になります。
小柳教授は内側型野球肘の予防に向けて、「エラストマー」と呼ばれる柔らかく弾力のある新素材を使い、EEB(Elastomeric Elbow Brace)を開発。従来品のような金属製の支柱はなく、厚さ2mmの柔らかい素材を使って、4点で肘をしっかりと支持。しかも装着したままエコーで肘の状態をモニタリングできる、画期的なサポーターです(動画参照)。
EEBを装着している時とそうでない時を比べてみると、装着時には肘の広がりを示す指標(HUSO)が減少していることがわかりました。またEEBには、装着しても肘関節の動きを制限せず、球速にも影響を与えないというメリットもあります。
野球では特に投手が肘を痛めるケースが多く、野球肘は成長期の子どもに多いことで知られています。子どもたちが肘の故障や痛みに悩むことなく野球を楽しむためのアイテムとして期待が高まります。
スポーツを始める子どもの頃から、損傷を予防するサポーターを身につけることで手術などのリスクを減少できる可能性があります。
現在、小柳研究室はスポーツメーカーと情報交換しながら、サポーターと一体化したアンダーシャツの開発を構想中。ユニフォーム感覚で身体を守れるなら、スポーツの楽しさがさらに広がりそうです。
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