商品を写真で見るのと実際に手に取って見るのとで、色味や質感がかなり違うことがよくあります。これは、光源の色や光の反射の仕方などによって色の見え方が変わることが原因。
土居研究室では、光をより細かい波長に分けて色の情報を取得し、より正確なものの見え方を再現しています。
より正確に、リアルな見え方を再現する。その一つが、より精細な色の情報を使った3D画像処理の研究です。一般のカメラは赤、青、緑の3つの波長の色情報を取得し重ね合わせて画像として再現しています。
土居研究室では、さらに細かく12の波長で色の情報を記録し、それらの色の情報と3D情報とを一つのファイルに統合するフォーマットを研究。さまざまな照明の環境に対応した物体の色をきめ細かく再現し、それにより質感もよりリアルに表現できる技術に挑戦中です。
この技術を美術作品や史料などのデジタルアーカイブに活用すれば、美術館や博物館で見るのに近い色や質感の画像として表示可能に。また、インターネット通販では、より実物に近い画像で商品の魅力を正確に伝える効果が期待できます。
土居研究室では、色の詳細な情報処理技術を使って肌の色素の分析も行っています。
皮膚のしみや赤味、あざなど色素斑の色の見え方を、さまざまな波長の情報を取得して分析。しみのもとになるメラニンなどの分布や、皮膚の色素の吸収度合、皮膚のきめなどテクスチャーも加味しながら計算し、皮膚に色素斑を人工的に合成したリアルな画像を作成しました。
さらに、AIのディープラーニングを使って色素斑の形状を学習させ、自動的に色素斑の画像を合成する研究も進めています。この色素斑画像生成技術を使って、ファンデーションのカバー力や周囲の肌とどうなじむかなどの効果をシミュレーションできるほか、CGでのリアルな皮膚の表現にも生かすことができます。
デジタルツインやメタバースなど、デジタル空間に仮想現実世界を構築する技術が進展しています。もし、普段身の回りにあるものをパシャッと気軽にキャプチャーし、リアルに近い形でデジタル空間に再現できれば、仮想現実での活動がさらに活発になりそう。
小さいころから大事にしていたぬいぐるみなど、その人にとって価値のあるものがデジタル上でも相棒になってくれたら、メタバースでの過ごし方も変わってくるかもしれません。
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