病院で使われているCTスキャンは、人体の周囲を360度回転しながらさまざまな方向からX線撮影し、3Dデジタルデータ化する検査。
光本研究室では、このCTスキャンの3Dデータから、骨粗しょう症患者の早期発見に役立つ画像処理技術を研究しています。
体の中に何か異常が疑われる時、より正確な診断、質の高い治療を実現するために実施されるCT検査。レントゲン検査では、正確に細部までわからなかったような骨質や骨の高さ、骨の形状も、CT検査なら正確に撮影できます。CTスキャンの3Dデータを処理・解析したり表示させる技術は年々高度化しており、診断や治療を支援する重要な情報処理技術として注目を集めています。
光本准教授は、骨粗しょう症患者のCTスキャンで得られた3Dデータを画像処理する技術を研究しています。
開発中の技術は、まず内臓も、ろっ骨も含んだ元データから脊柱領域だけを抽出し、脊柱のスライス画像を作成。さらにそこから骨の内側にある海綿骨と呼ばれる領域だけを抽出して、その骨密度を割り出すところまでを自動化しようというものです。海綿骨の骨密度に着目するのは、骨粗しょう症の初期には骨の外側より海綿骨のほうがより骨量の減少が目立つため、早期発見に役立つからです。
画像診断に必要な処理を自動化できれば、医師の読影を支援することが可能になります。さらに、より精緻なデータ処理を実現することで、投薬による効果を確認する方法としても活用できます。光本研究室では、画像処理技術の開発を通して医療支援ツールの実用化をめざしています。
課題となるのは骨の形や構造に見られる個人差です。脊柱領域だけ抽出する作業の自動化にしても、何百人ものデータを安定的に処理できる技術の確立が必要です。
光本研究室では、円形度という数値を基準にする、これまでにないやり方でより正確に抽出する方法を開発し、一連の自動化処理を可能にしました。この方法で骨粗しょう症患者の骨密度を計測したところ、患者には健常者のようなリズムがなく、海綿骨の骨密度も複雑な変化をしていることがわかりました。
今後は、AIのディープラーニングを活用して、画像処理の解像度をより高めることが目標。骨の内部の微細な構造がわかる精密な画像処理で、症状の経過観察や薬の開発に役立てられることが期待されています。
Ⅹ線を使うCT撮影では、放射線量を上げればより精細な画像が得られます。しかし、人体への影響を考えると今以上に線量を上げることは不可能。そこで、画像処理でより精細な画像にする技術が注目されています。
細かいところまではっきりと、しかも色分けされるなど、わかりやすい形で表示されるような技術が確立されると、専門知識や技術、経験の差によることなく、誰でも正確に病気の診断ができるようになるかもしれません。
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