SHIBAGAKI Yoshiaki
情報通信工学部 通信工学科 教授
大学院 工学研究科 電子通信工学コース 教授
電波応用技術に関する研究
博士(工学)
大阪電気通信大学

休日は金剛山、大峰山、鈴鹿山脈など関西近郊の山のぼりに出かけます。頂上から付近の峰を眺めると、「次はあれに登りたい」と自然に目標が決まるのだとか。山で出会う健脚たちとの交流も楽しみ。

電波の反射を使って気象現象を観測 
GPSの高精度化やゲリラ豪雨予測を可能に

発射した電波が雨や雪などの粒に反射して戻ってくる時間を調べれば、粒の大きさや距離がわかります。また、周波数の変化を調べれば、粒の動きがわかり風の動きを知ることができます。
柴垣研究室では、電波を使った気象観測の技術を、GPS技術向上や気象現象の解明に生かしています。

GPS電波が進むのを妨げる水蒸気の影響を探り 
より精度の高いGPS測位に役立てる

地図アプリやカーナビで、現在地がずれていた経験はありませんか。GPSは衛星から電波を送信した時間と受信した時間の差で距離を測定し、位置を割り出す技術。地上に近い対流圏に存在する多量の水蒸気が電波の進行を妨げることによって、GPS測位の誤差が発生するのです。自動運転やドローンなどの技術にとってGPSの高精度化は重要課題。

柴垣研究室では、誤差補正につながる基礎研究として、電波と水蒸気量の関係を解明しようとしています。国土地理院が地殻変動を測定するために全国1300か所に設置しているGPSアンテナを活用して電波が対流圏を通る際の誤差から水蒸気量を推定。また、BSアンテナなどにも幅を広げ水蒸気が電波に与える影響を探ろうとしています。

地球を取り囲む対流圏の水蒸気に電波が影響を受ける
本学GPS受信システムとBSアンテナ

甲子園球場並みの大型大気レーダーで
梅雨や台風など気象現象の機構を詳細に分析

電波を気象観測に応用する技術に気象レーダーがあります。

柴垣研究室では、甲子園球場ぐらいもある大型大気レーダーを使った大気の乱れの観測を行っています。雨や雪しか測定できない一般の気象レーダーと違い、大きなアンテナで波長の長い電波を出すことで大気の測定が可能。雲を発生させる積雲対流の動きや雨のでき方をはじめ、低気圧が発達していくプロセスや、その移動、持続に導く仕組みなどを詳細に分析しています。

温暖化の影響で激しい気象現象が増加している今だからこそ、こうしたデータの蓄積を通して現象の基本的な特性についての詳細な分析が必要とされており、より精度の高いシミュレーションにもつながる技術と言えます。

左: MUレーダーで観測した、鉛直方向の大気乱流と降水粒子からの反射エコー
右: MUレーダーで観測した積雲対流内およびその周辺の大気の鉛直循環の解析図
※鉛直方向とは、重りを糸で吊り下げたときの糸が示す方向で重力の方向を意味します。水平面に対しては、垂直の方向
研究に使っている大型レーダー「京都大学生存圏研究所MUレーダー」(滋賀県甲賀市)※京都大学生存圏研究所より提供

ゲリラ豪雨の莫大なエネルギーで発電?
激しい気象現象の解明でこんな可能性も

GPSアンテナによる水蒸気量測定によって、ゲリラ豪雨発生との関係も分析する柴垣研究室。ゲリラ豪雨を発生させるような強力な積雲対流発生の機構解明は、予測技術の高度化につながります。
予測したデータが防災に役立てられるのはもちろんですが、その先には、人や社会に被害を与えないような場所で起きる積雲対流を積極的に活用する技術の可能性も。積雲対流の莫大なエネルギーを使った発電、人工降雨による干ばつ対策など夢は広がります。

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