MURAKAMI Yasuyuki
情報通信工学部 通信工学科 教授
大学院 工学研究科 電子通信工学コース 教授
博士(工学)
京都工芸繊維大学
公開鍵暗号・認証技術・ネットワークセキュリティに関する研究
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研究より長く打ち込んでいるのは、小学生の頃から始めたビリヤード。京都代表として全日本3位の入賞経験あり。現在は京都ローテーションクラブ会長として運営をサポートするほか、ジャズダンスの楽しさにも目覚め、発表会めざして練習中です。

解読に数百兆年かかる暗号が解読される!? 
量子コンピュータに対抗できる暗号技術とは?

私たちが活用するデータは暗号で守られ、最も難解な暗号を解読するには宇宙の寿命より長い時間がかかるとされてきました。しかし量子コンピュータの実用化により暗号が解読される可能性が出てきました。
村上研究室では破られない暗号を研究中です。

「秘密鍵暗号」と「公開鍵暗号」 
私たちは大きく2方式の暗号で守られている

「りたたんたご」という文字列(=暗号文)のそばに「たぬき」の絵があれば「た」を抜いて(=鍵)、「りんご」(=平文)と解読できます。これが私たちのイメージする暗号で、暗号化と復号に共通の鍵を使うため鍵は秘密にされなくてはならず「秘密鍵暗号」と呼ばれます。

一方、暗号化には受信者が一般公開した公開鍵を使い、復号には受信者のみが持つ秘密鍵を使う方法は「公開鍵暗号」と呼ばれます。

前者は処理速度が速い代わりに鍵を当事者間でいかに安全に共有するかという問題があります。後者は暗号化に使用する鍵を公開することができる代わりに処理コストがかかります。

いずれの方式においても、暗号強度を上げるためにこれまでにさまざまな暗号アルゴリズムが開発されてきました。

暗号化と復号に共通の「秘密鍵暗号」を使うことで、安全に文章を送受信できる。
処理速度は速いが、いかに秘密鍵を安全に共有するかが課題
暗号化には公開鍵を使い、復号の時だけ秘密鍵を使う方法を「公開鍵暗号」という。
課題は処理コストが発生すること

量子コンピュータの解読を防ぐために
複雑性クラスの高い数学問題を暗号に取り入れる

「秘密鍵暗号」で標準的に使われているのが「AES」で、鍵長(暗号のデータサイズ)が大きく、AES-256bitならスーパーコンピュータで総当たり攻撃をしても数百兆年かかります。

また「公開鍵暗号」で代表的な「RSA暗号」は、解読に膨大な桁数の素因数分解が必要となり、これも天文学的な時間がかかります。いずれも解読にかかる時間が安全性を担保していました。

ところが、量子コンピュータが登場し、実用化されると解読にかかる時間が大幅に短縮される可能性が出てきました。これに備え、さらに計算量が多く効率よく解けない問題を設定する必要があります。これは、数学上最大の未解決問題であるP≠NP予想などにも深く関係しています。

研究室では、量子コンピュータでも解けない「耐量子暗号」を開発するための多様なアプローチを試みています。

量子コンピュータでも解けない「耐量子暗号」を開発するには、複雑性クラスの高いさまざまな問題を設定していく必要がある

量子コンピュータに負けない暗号が
世界の崩壊を食い止める!

暗号は古代から使われてきましたが、ビッグデータの行き交う現代社会は暗号でできているといっても過言ではありません。瞬時に暗号が解読されてしまえば、国家機密情報から個人情報まで、あらゆる情報が漏洩することになり世界は混乱に陥ることでしょう。
スマホでキャッシュレス決済が普通にでき、パソコンでデスクワークが普通にできる。そんな日常を続けることができるかどうかは、次世代暗号技術の開発にかかっているのです。

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