MAEKAWA Yasuyuki
情報通信工学部 通信工学科 教授
大学院 工学研究科 電子通信工学コース 教授
工学博士
京都大学
衛星通信電波に対する降雨の影響
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ピアノ歴は50年以上。10年前にはグランドピアノを備えた念願のレッスン室を禁煙貯金によって自宅に作りました。休日はもちろん、発表会前には特に練習に熱が入ります。バッハ、ショパン、ドビュッシー等が好きでよく弾いています。

スマート化社会は気候変動に弱い?! 
降雨等が衛星電波に与える影響を徹底リサーチ

高速・大量のデジタル情報が行き交うスマート化社会。衛星通信では大量のデータを送受信するために12GHzや20GHzといった高周波帯が使われます。
前川研究室では、高周波帯の衛星電波が気象の影響をどう受けているのか30年以上に渡って研究しています。

寝屋川キャンパスに設置した測定システムと
気象庁のデータを30年以上突き合わせて検証

台風や雷雨の時にBS・CS放送の映像や音が乱れた経験はありませんか。電波が雨粒によって吸収・反射されて弱くなってしまうことを「降雨減衰」といいます。これは理論的・体験的には広く知られていることですが、具体的に詳細なデータが示されることはありませんでした。

前川研究室は、寝屋川キャンパスの衛星通信研究施設の屋上にCS・BS・JCSATと雨量計を設置し、レベルメーターで信号品質を測定。このデータとアメダスからの気象情報を32年間にわたり突き合わせて検証しました。その結果、CSとBSの降雨減衰の年間時間率は、世界電気通信連合(ITU-R)が推奨する予測値とほぼ一致することが示されたのです。

また発雷時における衛星電波の偏波面の急激な変動特性を詳しく調べ、2017年度に電子情報通信学会から衛星通信研究賞を受賞しました(文献〔1〕 電子情報通信学会技術研究報告、SAT2017-9、2017年7月)。

電波と降雨の関係を実測データで、詳細にとらえる降雨減衰の測定システム

台風の風向きによって降雨減衰量が変わる!? 
世界初で影響関係を明らかにし、二度目の衛星通信研究賞を受賞!

近では気候変動によって台風やゲリラ豪雨が増えています。

前川研究室は、台風が大学の東側を通過する時の方が、西側を通過する時よりも降雨減衰が大きくなることを発見しました。検証では32年間にわたる60以上の事例を精査し、台風の風向きが衛星電波の到来方向と逆向きの時に減衰量が大きくなることがわかりました。

電波の減衰が、雨量や雨雲の高さの他に地上風速の影響も受けると示したのは世界初のことで、この研究は災害時の衛星通信に役立つ研究として、2020年度に再び衛星通信研究賞を受賞しました。(文献〔2〕前川他、電子情報通信学会技術研究報告、SAT2020-24、2020年12月)。今後はエルニーニョラニーニャといった地球規模の気象現象との関連も明らかにしていく予定です。

また、現在10年以上にわたり大阪だけでなく京都や滋賀でも減衰量を観測しており、より多くのさまざまなデータを収集中です。さらに各地でデータを蓄積してくことで、環境変化に強い衛星通信環境の解明をめざしています。

降雨強度と降雨減衰の関係
世界初となった「電波の減衰と雨量や雨雲の高さ及び地上風速の影響」をとらえた研究。台風の東側と西側では、影響の出方が大きく異なる
風速の衛星電波到方向成分と雨域等価通路長の関係
風速や風向きによっても雨粒の通る路は変わるため、それらを補正することで、より正確に衛星電波に与える影響をリサーチしていく

宇宙衛星と直接通信する6Gが実現すれば
宇宙旅行しながらSNSができる!

衛星通信技術の進化形として期待されているのは、「非地上系ネットワーク」。宇宙空間に浮かんだアンテナと、スマホが直接通信できるため、これまで4Gや5Gでカバーできなかった砂漠の真ん中や山間部はもちろん、空や海、宇宙からでも通信ができるようになります。
また、通信速度も容量も大幅に上がるため、遅延が極限まで減ることで通信障害が発生しにくくなります。信頼性が高まることで電気で自動運転する飛行機や宇宙船も登場しそうです。

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